- はじめに――すべての子どもたちに「自力読み」の力を
- 第1章 今こそ、物語の「自力読み」の力を獲得させよう
- 桃山学院大学 /二瓶 弘行
- 1 物語の授業って、何のためにしているの?
- 2 物語の「自力読み」の力を、すべての子どもたちに
- 第2章 用語で見る「自力読み」の力を獲得させる物語の授業
- 場面(時・場・人物)
- 基本四場面
- 場面構成の4つの型
- あらすじ
- 人物
- 中心人物・重要人物
- 人物像
- 情景・行動・心情描写
- 物語の語り手・視点
- 物語の大きな3つの問い
- 作品の心
- 作品の星座
- 語り
- 第3章 「自力読み」の力を獲得させる定番教材の授業
- おおきなかぶ
- お手紙
- スイミー
- モチモチの木
- ごんぎつね
- 大造じいさんとガン
- 海のいのち
- 第4章 「自力読み」の力を獲得させる新教材の授業
- スワンレイクのほとりで
- さなぎたちの教室
- ぼくのブック・ウーマン
はじめに――すべての子どもたちに「自力読み」の力を
筑波大学附属小学校で、国語教師として24年間にわたり国語授業研究に没頭してきました。そして今の仕事は、大学の教育学部教授として、小学校教師を志す若者たちに、国語授業づくりのおもしろさと難しさを教えることです。
もう1つの大切な仕事は、全国の小学校現場の先生方と国語授業について、ご一緒に学ぶことです。大学に移ってから今日までに、北は北海道、南は九州まで、1000回を超える研究会、研修会に講師として参加してきました。
全国のどんな町でも、若い先生たちが驚くほど増えています。教職に関わるマイナス情報がマスコミ等であふれる中でも先生になった彼らの姿に、頼もしささえ感じます。
そんな若い先生の中の1人が、物語の授業づくりについて学んでいること。
「主体的・対話的で深い学びのためには、場面ごとに詳しく読解する物語の授業は、もう古い。これからは、子どもの問いを基に、物語の授業を展開していくことが大切」
ただ、おそらくその若い先生は、物語が「場面」から構成されていることを知らない。1年生で「場面」という用語を教え、「場面」の捉え方を学ぶ必要性を、まだ知らない。
「山場(クライマックス場面)」の重要性を、まだ知らない。4年生で「山場」を教える系統的意味を知らない。「山場」の検討なくして、確かな感想をもてないことを知らない。
物語の「問い」のもつ重さを、まだ知らない。初発の感想からの「問い」づくりの危うさを知らない。価値ある「問い」の検討こそが物語を読む本質であることを知らない。
だから、そんな若い先生に、物語の「自力読み」をぜひとも学んでほしいと願います。
物語の授業は、物語の確かな読み手を育てることにあります。
主体的に物語を読み進め、自らの感想をもつための読みの力、すなわち、「自力読み」の力とは、具体的には何なのか。どう指導すればよいのか。
どのような学習用語を、どのような読み方を、どのような物語教材で、どのような学習活動で、どのような学年系統性で、子どもたちに獲得させればよいのか。
本書『物語の「自力読み」大全』が、若い先生のみならず、少しでもまともな物語の授業づくりを目指そうとする、すべての小学校の先生方の参考になればと願っています。
2025年7月 桃山学院大学人間教育学部 教育監・教授 /二瓶 弘行
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