- 監修の言葉
- 1章 国語科の授業改善と「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実
- T 教育改革の方向と授業改善
- 1 教育改革の方向
- (1)多くの人が高等教育を受ける社会
- (2)科学技術の進歩の速い社会(コンピュータが万能に近い働きをする社会)
- (3)長寿社会
- (4)価値観の多様化した社会
- U 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を通じた授業改善
- 1 「個別最適な学び」と中学校国語科の授業
- (1)「指導の個別化」と中学校国語科の授業
- (2)「学習の個性化」と中学校国語科の授業
- (3)「個別最適な学び」と「個に応じた指導」
- 2 「協働的な学び」と中学校国語科の授業
- 3 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善
- 2章 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を通じた授業改善を図るプラン
- A 話すこと・聞くこと
- 01 立場を尊重して話し合おう〜討論する〜
- 「立場を尊重して話し合おう 討論で多角的に検討する」(光村)
- 02 資料や機器を活用して地域の魅力を効果的に伝えよう
- 「プレゼンテーション 資料や機器を活用して効果的に発表する」(三省)
- B 書くこと
- 03 根拠の適切さを考えて意見文を書く
- 「根拠の適切さを考えて書こう 意見文を書く」(光村)
- 04 構成や展開を工夫する〜「ある日の自分」の物語を書く〜
- 「構成や展開を工夫して書こう 「ある日の自分」の物語を書く」(光村)
- 05 職業体験でお世話になった方にお礼状を書こう
- 「依頼状やお礼状を書こう」(東書)
- 06 清少納言になったつもりで「令和」を紹介しよう
- 「枕草子」(光村)
- C 読むこと
- 07 登場人物の言動の意味を考えよう〜「走れメロス」を読む〜
- 「走れメロス」(光村・東書・教出・三省)
- 08 表現の効果について考える
- 「字のない葉書」(光村・東書)
- 09 「夏の葬列」を読む〜観点を明確にして表現の効果について考える〜
- 「夏の葬列」(教出)
- 10 文章と図表を結び付けて読み,図表の効果を考えよう
- 「クマゼミ増加の原因を探る」(光村)
- 11 文章の構成や論理の展開について考える
- 「モアイは語る―地球の未来」(光村)
- 12 二つの文章を読み比べ,自分の考えをもとう
- 「黄金の扇風機/サハラ砂漠の茶会」(東書)
- 13 朗読劇の監督になり「平家物語」を語る
- 「扇の的―「平家物語」から」(光村)
- 執筆者一覧
監修の言葉
現行学習指導要領(平成29年告示)が全面実施されて2年が経過した。全国の中学校で学習指導要領の趣旨を受け,工夫された授業が展開されつつある。もとより日本の教育は生徒のために努力を惜しまない勤勉な先生方に支えられている。したがって,学力の三要素である「基礎的な知識及び技能」「課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力」「主体的に学習に取り組む態度」をバランスよく育てる授業は確実に増えているのである。
しかしながら社会の変化は激しく,人々の価値観は多様化している。学習指導要領が告示されてから6年の時間が流れている。学習指導要領に示されている教育理念は変わらなくても,生徒や保護者の方々に満足してもらう教育の在り方は,常に具体的に見定めていく必要がある。社会の変化や人々の価値観の多様化に応じて,教育の重点化すべきことを十分に検討し,適切に対応していくことが大切なのである。
現在,私たちが最も注視すべきは,中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)」(令和3年1月26日)に示された教育観である。ここで述べられている「個別最適な学び」や「協働的な学び」は新しい概念ではない。力量のある教師なら以前から自分の授業に取り入れてきたことである。しかし,21世紀の社会の有り様の中で,改めて教師が意識すべきこととして位置付けられ,これらを通して「主体的・対話的で深い学び」を実現させることが強調されているのである。そのことに十分留意しなければならない。
本書の編集の基本的理念はそこにある。日常の授業の中で,「個別最適化」と「協働的学び」を一体的に充実させ,全ての子供たちの可能性を引き出すことを強く意識し,授業改善を図ることを目指し,そのための具体例を示したのが本書である。
編著者は,文部科学省教科調査官である鈴木太郎氏である。鈴木太郎氏は東京都の中学校教師として,優秀な実践家であった経歴をもち,令和4年度から文部科学省において日本の国語教育をリードする立場になられた新進気鋭の教育者である。これから日本の国語教育を背負う鈴木太郎氏が,冷静な眼で授業を分析し,編著した書なのである。
執筆に当たったのは21世紀国語教育研究会に所属する先生たちである。この会には東京都を中心とする中学校の,管理職を含む国語科教師が研究のために集っている。発足から19年,会員数約130名の組織であり,月に一度の定例会や年に一度の全国大会,執筆活動などで研究を深めている。鈴木太郎氏も本会の会員である。常に生徒の意欲を引き出し,言語を駆使して思考力や判断力を高める授業を工夫している。その研究成果の一端を示す書でもある。本書が,国語科教育に携わる全国の先生方のお役に立てば幸いである。
監修者 東京女子体育大学名誉教授 /21世紀国語教育研究会会長 /田中 洋一
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