- はじめに
- 「認知行動療法」の基礎基本
- 1 認知行動療法は、エビデンスに基づく心理療法である
- 2 認知行動療法は子どもの成長を支える
- 3 理論と実践、二つの軸で認知行動療法を学ぶ
- 4 子どもの「強み」と周囲の「強み」を生かす
- 5 「一つ一つ着実に」が力になる
- 6 コミュニケーションツールを考える
- 7 あたたかく成功をともに喜ぶ
- 子どもの「認知行動療法」を始めるポイント
- 8 スタート位置とペース配分を考える
- 9 子ども一人一人に合わせて柔軟に支援を行う
- 10 子どもが身につけられるスキルを教える
- 11 気持ちを表現してみる
- 12 気持ちには大きさがある
- 13 気持ちと身体はつながっている
- 14 吐く呼吸でリラックス状態を味わう
- 15 筋肉の弛緩でリラックス状態を味わう
- 16 イメージを使ってリラックス状態を味わう
- 不安のある子への「認知行動療法」のポイント
- 17 不安の正体を調べる
- 18 考え方のクセを知る
- 19 やわらかい考え方を探る
- 20 バランスのよい考え方に気づく
- 21 さまざまな考え方を試す
- 22 行動から不安を読み解く
- 23 回避行動は悪循環をもたらす
- 24 回避行動には罠がある
- 25 不安に挑む前には準備が必要になる
- 26 不安の階段を描く
- 27 ゆっくりと確実に階段を上る
- 28 さらにいろいろな挑戦をしていく
- 29 困難にぶつかったときにはチャレンジを支える
- 学級集団で行う「認知行動療法」のポイント
- 30 認知行動療法を学級集団の支援に活用する
- 31 階層的な支援の考え方を取り入れる
- 32 学校でユニバーサル予防を行う
- 33 学級に認知行動療法を導入する
- 34 授業の中で認知行動療法を扱う
- 35 ちょっぴりウキウキを見つける
- 36 行動活性化の授業を行う
- 37 社会的スキルを学ぶ
- 38 社会的スキルの授業を行う
- 39 問題解決のステップを学ぶ
- 40 問題解決訓練の授業を行う
- 41 授業で学び、学校生活で身につける
- 42 認知行動療法に基づく授業を実装する
- おわりに
- 参考文献
はじめに
本書では、学校での個別支援と集団実践での活用を視野に入れながら、子どもの認知行動療法についてまとめています。本書の内容は、学校の先生方に教室で使っていただく際のポイントを中心に据えながらも、養護教諭の先生方が気になる子どもの支援に使ったり、通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校での実践に応用したり、スクールカウンセラーの方々が学校臨床の中で活用したりすることができるようなエッセンスも取り込んでいます。
さて、昨今、認知行動療法を巡る状況は目まぐるしく変化しています。私が認知行動療法という言葉に初めて出会った1990年代の終わりには、子どもの認知行動療法に関する日本語の書籍は、数に限りがありました。それからいくらかの時間が過ぎ、学校での認知行動療法の実践は数多く発表されるようになり、参考にできる書籍も何冊も手に取れるようになってきました。幸運にも、私たちの研究チームは、認知行動療法に基づく授業実践の取り組みを届けるプロジェクトの研究助成を受け、全国の学校での実践を続けています(JST-RISTEX 「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」)。
それでも、認知行動療法が学校の現場に行き届いているかといわれれば、首を縦に振るのは難しいかもしれません。
本書執筆時点で、不登校児童生徒数は毎年最多を更新していますが、その数年前から不登校の主たる要因として不安が最も多く報告されています。その一方で、私が学び始めた頃から、子どもの不安に対する支援では、認知行動療法が効果的であることがわかっていたのです。さらに、新たな生徒指導提要では、特定の児童生徒に向けた困難課題対応だけでなく、課題を未然に防止する教育の必要性が示されています。そして、公認心理師においては、「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと」とされています。
本書は、本当に必要としている子どもたちに届けたいという思いを込めて、執筆させていただきました。手に取っていただきました皆様にとっても、ご自身の思いが少しでも達成できれば望外の喜びです。
著者 /石川 信一
認知行動療法を教室に取り入れてみたい、と考えている者にとっては必読の一冊に間違いないだろう。