数量処理とワーキングメモリから読み解く… 教室の中の算数障害
認知の視点でつくる教材と学習支援

数量処理とワーキングメモリから読み解く… 教室の中の算数障害認知の視点でつくる教材と学習支援

近日刊行予定

様々な方略を知り、子どもにあった方法で学習を支えよう

算数ができないことをどう理解し、つまずきに寄り添いどう支援すればよいのか…その略地図を示した1冊。計算障害、数処理の弱さ、ワーキングメモリの問題を知り、認知の視点から考える算数学習支援の基本方針と具体的な学習支援例を紹介した。


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ISBN:
978-4-18-364725-2
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
対象:
幼・小・中・他
仕様:
四六判 192頁
状態:
近日刊行
出荷:
2025年6月2日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
算数が著しく苦手な子どもたちへの理解
1 計算、算数の問題解決の困難実態を知る
2 計算障害の背景に数量処理の弱さがある
3 数量処理―人は3〜4までしか正確に把握できない
4 数量処理―人はたくさんの数を概数なら把握できる
5 数量処理―数量処理は発達する
6 数量処理―数量処理には方向がある
7 数量処理―数量処理には順序がある
8 数量処理―数量処理の弱さは計算困難につながる
9 数量処理―数量処理は問題解決の学習に影響する
10 ワーキングメモリが算数の困難には関わる
11 ワーキングメモリの言語領域は算数の学習に影響する
12 ワーキングメモリの視空間領域は算数の学習に影響する
13 ワーキングメモリの処理+保持は算数の学習に影響する
14 脳の働き「抑制」が算数の学習に影響する
15 言語・文化と算数の学習は関連する
16 「推論」が算数の学習に影響する
17 算数障害では算数不安・日常生活の困難にも配慮する
18 環境が算数の学習に影響する
19 算数障害の困難さを整理する
認知から考える算数学習支援の基本方針
20 数比較の苦手さを支える
21 シンボリックな教え方を生かす
22 表象しやすい数量で学習する
23 指計算を生かす
24 子どもの方略を聞き、子どもの方略を生かす
25 クイックレスポンスで学習する
26 ワーキングメモリの言語領域の弱さに配慮する
27 ワーキングメモリの視空間領域の弱さに配慮する
28 ワーキングメモリの処理+保持の弱さに配慮する
29 抑制やシフティングの弱さに配慮する
30 概念的知識と手続き的知識を区別する
31 序数的・帰納的に、スモールステップで学習する
教材から認知を考える具体的な学習支援例
32 図形・立体の大きさを数量と結びつけていく
33 特異数5をもとに合成・分解するなど漸進的に計算する
34 言語的方略としての九九を覚える
35 子どもの足し算や引き算の方略を支援に役立てる
36 位取り学習の困難にクイックレスポンスによる学習を行う
37 具体から抽象への理解に進むには二次元の表現を挟む
38 プロセスに応じて文章題を支援する
39 分度器の目盛り学習をシングルタスクから始める
40 証明問題はスモールステップで学習する
41 単位量、割合、速度…内包量の学習は帰納的に理解する
42 なじみのない問題に取り組む
43 複雑な要素をもつ問題に取り組む
44 様々な方略を知り、子どもに適した方略で学習を支える
参考・引用文献

はじめに

 読み書き算数と言いますが、読み書きに比べると算数の学習支援は二の次になりがちです。手紙を数字で書くことはなく、理科でも社会でも読み書きはいつも必要になるが、数は必ずしも登場するわけではない。こうしたことから「まずは読み書き」という無意識の前提があるように思います。

 国語や英語のテストはとても良い得点をとる中学生が算数や数学にとても苦戦していました。「他の人と同じにならなくて良いけど、なんとかしたい」と言うので話を聞くと、言葉の知識は豊富なのに足して10以上になる一桁の足し算の答えを覚えておらず、計算のたびに小学校1年生のときにならったやり方で数を分解して、方程式や関数の問題に解答していたのです。そして、自分以外の人も皆そうしていると思っていました。計算の速さは小学校低学年程度でした。普段は明るく、自分を客観的に観察するような人ですが、時々、算数や数学のできなさに耐えかねてパニックになり泣きます。そんな人に、言葉だけで「できていることに注目しよう」とは言えません。なぜできないのかを理解でき、たとえ少しずつでもできるようになるやり方を考えたいのです。ツルツル滑って一向に前に進めない凍った雪道を一緒に歩き、どうすれば一歩一歩実感をもって踏みしめて前に進めるか、一緒に考えていく必要があるのです。

 読み書きが人の思いや概念を知り発信することに役立つのならば、算数はまったく別のやり方で物事を理解し、本質に迫り、体系化することに役立ちます。読み書きが地上を歩いて景色を見ることならば、算数は空を飛んで宙から景色を見ることだと思います。どちらも、同じ現象を異なる次元から理解することができる大切なやり方で、等しい価値をもつものです。どんな子どもにも両方の価値をそれぞれのペースで学んでもらいたいのです。

 算数ができないことをどう理解し、それに基づいてどう支援すれば良いか、本書は略地図を示しました。しかしその略地図も、算数という壮大な世界の地図というわけではなく、宝の場所に×が書かれているわけでもありません。算数の困難は複数の要因が関わり得るため、複数の立場の人(理論、実践、教育、心理、医療、福祉、情報、当事者など)が互いの知恵を持ち寄る必要があります。どうぞ本書を読み関心が増した方は算数の困難の支援のために力を貸してください。


   著者 /河村 暁

著者紹介

河村 暁(かわむら さとる)著書を検索»

福岡教育大学准教授

福岡教育大学大学院修了,筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科修了。博士(心身障害学)。民間支援機関「発達ルームそら」にてワーキングメモリの観点に基づき学習支援を行ってきた。広島文化学園大学を経て,2023年4月より現職。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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