- はじめに
- 小学3・4年物語教材を読み解く 教材研究の目
- 小学3年 物語の教材研究&授業づくり
- ちいちゃんのかげおくり
- 教材研究の目
- 1 設定・人物
- 2 作品の構造と展開
- 3 語り
- 4 象徴表現
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 語り手の立場を知り読みの幅を広げよう
- 2 物語を読んで情景を思い浮かべよう
- わすれられないおくりもの
- 教材研究の目
- 1 空所
- 2 語り
- 3 設定・人物像
- 4 象徴表現
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 動物たちが助け合っている様子を想像しよう
- 2 題名クイズをして、題名から内容を当ててみよう
- おにたのぼうし
- 教材研究の目
- 1 空所の多さ
- 2 語り
- 3 人物設定
- 4 象徴表現
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 おにたの悲しみを読もう
- 2 「おに」のお話を紹介しよう
- サーカスのライオン
- 教材研究の目
- 1 変化、対比の多さ
- 2 比喩とオノマトペ
- 3 空所
- 4 語り手と視点
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 じんざが人々に与えた影響を読もう
- 2 「ライオン」のお話を紹介しよう
- モチモチの木
- 教材研究の目
- 1 絵本テクストの教材
- 2 物語の構造
- 3 語り手
- 4 主人公
- 5 視点
- 6 象徴
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 語り手について考えよう
- 2 絵本と教科書を読み比べてみよう
- 小学4年 物語の教材研究&授業づくり
- 白いぼうし
- 教材研究の目
- 1 ファンタジー
- 2 空所
- 3 登場人物の人物像と語り手
- 4 象徴
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 読み方の違いを知って自分の考えを広げよう
- 2 〈問い〉をつくり、交流しよう
- 一つの花
- 教材研究の目
- 1 作品の構造
- 2 語りの構造
- 3 人物設定
- 4 象徴的な表現
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 「比較」から空所へ「一つの花」の象徴性に迫る読み
- 2 登場人物の日記を書こう
- 世界一美しいぼくの村
- 教材研究の目
- 1 「でも」の声
- 2 語り
- 3 読みのスタンス
- 4 比べ読み・重ね読み
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 作中人物の心情について深めよう
- 2 物語の「声」から考えられることを共有しよう
- 初雪のふる日
- 教材研究の目
- 1 物語の構造
- 2 色彩表現
- 3 人物設定
- 4 語り
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 変化に注目して読もう
- 2 比べ読みで作品の特徴、魅力に迫ろう
- ごんぎつね
- 教材研究の目
- 1 語り
- 2 語り手
- 3 視点
- 4 色彩表現・オノマトペ
- 5 物語の設定
- 6 物語の空所
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 「ごんの物語と兵十の物語」そのつながりを読もう
- 2 物語の世界をポスターに表そう
- 参考文献
- 執筆者一覧
はじめに
文学の学習をデザインし、授業をつくっていくという営みにおいて、学習の過程を構造的に構想し、その枠組みの中で学習内容を配置するような試みが増えています。それは、ひとつには、学習の内容をいわゆるコンテンツベースからコンピテンシーベースに転換する学習観が、学習指導要領においても明確化されてきたことからきています。また、もうひとつには、その転換を受けて、評価のあり方が「何ができるようになったか」に焦点化され、評価の対象となる力を構造的に捉えたところから、学習を組み立てようとする傾向が強まったところからきています。淵源には、学習科学の進展があると思われます。
しかし、一方では、学習は教科や教材の特性と不可分なものですし、とりわけ国語科においては、いわゆる教材研究・教材化研究の重要性が長く大切にされてきました。そのことの意味はもう一度見直されなければなりません。
私たちはこれまで、いくつかの本を通して、文学教材を読むときの「問い」をめぐる読みの交流の大切さ、交流による読みの深まりを促す「問い」のあり方、有効な「問い」を創り出すことの大切さを主張し、具体的な教材に即してその「問い」の事例や交流のすがたを提示してきました。私たちの願いは、一人一人の先生方が、愉しく深い文学の読みを教室で実現するために、交流を促す「問い」づくりの力を身に付け、教師の個性と学習者の個性に合った読みの学習を実現していくというところにありました。
この本は、一人一人の先生方に、学習をデザインし、授業をつくっていくうえで、「問い」づくりの基盤にあるべきたしかな「教材分析」「教材研究」の目を身に付けていくための教材研究の観点を提示し、そこからの学習デザインの事例を示すようなものでありたいと構想されました。
学会レベルでも、教材研究をめぐる状況は一種の危機にあります。学習のデザインや学習過程研究を欠いた教材論は意味がないという認識が進んできたことはある意味当然ですが、行き過ぎると「教材論の不在」という状況を生み出しかねません。文学の教材研究は、その危機の中にあります。ここでは、もう一度、文学の教材論、教材研究の再構築を目指したいと思います。
その際に注意しておきたいことがあります。文学や周辺の研究領域、優れた実践研究の蓄積を踏まえて、先行研究の渉猟と読みにかかわる可能性のある細部の精細な読みという手続きは踏まなければなりません。その一方、子どもの素朴な読みの営みの中にも教材研究のための大きなヒントがあることを大切にしたいのです。研究の枠組みよって読みを制御するのではなく、自由な読みの中から新たな教材研究(論)が生まれてくることに賭けたいのです。
「教材研究の目」を一覧にするような試みは多くなされてきました。ただ、私たちはそうしたリスト化よりも、一つ一つの教材に即した、具体的な検討を大事にしました。教材研究の目として、語り・空所・象徴・人物像・プロットなどが採りあげられていますが、そうした「目」が概念として先行してしまわないように留意したつもりです。読者のみなさんもそのことに意を留めながら、自分ならこの「目」を大事にしたい、この「目」ならこういう教材分析ができるのではないか、という新たな可能性に向かっていただきたいと願っています。愉しい、充実した文学の学習の実現に、ともに向かっていきたいと思っています。
2023年7月 /松本 修
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- 今年度生かさせていただきます。2024/6/2320代・小学校教員
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