- まえがき 国語学力向上運動を具体的に推進する―基礎的技能・基本的能力・統合発信力を獲得するスペシャルワーク―
- 学習者主体・言語行動主体の国語教育―スペシャルワークの理念―
- 中学校「生きて働く国語力」(基礎・基本・統合発信力)指導のポイント
- 一 学習の指導目標と内容
- 二 中学校「生きて働く国語力」(基礎・基本・統合発信力)系統表
- 三 本ワークの特徴と活用法
- 生きて働く国語力 中学校1年基礎的技能ワーク
- 1 私の生まれた日
- 2 『ことのは帳』を作ろう(言葉には表と裏がある)
- 3 私の辞書「マイジテン」
- 4 一枚の写真
- 5 単語は言葉の最小単位
- 6 話し言葉と書き言葉(一分間スピーチにチャレンジ)
- 7 私の好きな漢字
- 8 ハイシャって俳写?
- 生きて働く国語力 中学校1年基本的能力ワーク
- 1 私の好きな一枚の絵(絵画をよむ)
- 2 人生の先輩に学ぶ(「聞き書き」をしよう)
- 3 ◯◯体験報告会
- 4 メディア比べてみれば(ポスターセッションをしよう)
- 5 環境リポート二〇〇二
- 6 学校紹介ポスターを作ろう
- 7 本っておもしろいよ(本のおもしろさを伝えよう)
- 8 「お推す」と「たた敲く」?
- 9 リーフレット作りに挑戦
- 10 日本語は意味の似た語が多い
- 11 人物列伝―◯◯さんを紹介します
- 12 文章にも柱がある
- 13 私はキャスター
- 14 私の本を作ろう(アンソロジー)
- 生きて働く国語力 中学校1年統合発信力ワーク
- 1 我が町再発見(私達の町のガイドブックを作ろう)
- 2 「自分の住んでいる所」ものがたり
- ■中学校1年ワークの書き込み例
- 生きて働く国語力 中学校2・3年基礎的技能ワーク
- 1 話し合いの仕方を知ろう
- 2 情報収集の仕方とそのまとめ方を知ろう
- 3 課題作文の書き方を知ろう
- 4 文章の種類とその特徴を知ろう
- 5 表現の違いを読みとろう
- 6 人を引きつける話し方を考えよう
- 7 方言と共通語の果たす役割を理解しよう
- 8 言葉の働きを理解しよう
- 生きて働く国語力 中学校2・3年基本的能力ワーク
- 1 自己表現をしよう
- 2 コミュニケーションの仕方を知ろう
- 3 意見文の書き方を学ぼう
- 4 言葉の不思議の世界を訪ねてみよう
- 5 日本語の良さを知ろう
- 6 話し合いを深めよう
- 7 ディベートをしよう
- 8 論説文を書こう
- 9 コンピュータを活用してプレゼンテーションを作ろう
- 10 読み手を意識した作品を作ろう
- 生きて働く国語力 中学校2・3年統合発信力ワーク
- 1 メディアを生かした表現方法を学ぼう
- 2 相手意識をもった話し方を学ぼう
- 3 異学年で交流をしよう
- 4 発表会をしよう
- 5 IT時代に生きる学習を考えよう
- ■中学校2・3年ワークの書き込み例
まえがき
国語学力向上運動を具体的に推進する
―基礎的技能・基本的能力・統合発信力を獲得するスペシャルワーク―
中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
戦後半世紀を超えるながい歳月をかけて、わが国の国語教育は、学者や実践者によって継続的に研究を重ねてきました。母国語としての日本語力を確実に獲得して、世界の中の日本人として、国際社会に伍していく国民を育成する萬学の基礎としての国語教育を充実させるために、国語科の授業時数は、他教科に比べて最も多く配分されてきました。すべての教科の基礎教科として位置づけられ、多くの研究団体が国語教育の理念や理論を提言し論争して、あるべき姿を求め続けてきたのです。
しかし、今、問題になっているのは、「他教科や二〇〇二年から創設される総合的学習、あるいは日常生活に『生きて働く国語力』が身についていない」という児童・生徒の実態です。
東京のある小学校で、全教科を対象に学力定着を図るための研究に取り組みました。その研究の特色は「国語科で培った基礎的技能や基本的能力が、他教科にどのように生きて働いているか」ということを実証する研究でした。全教科の学習指導案には、本時の展開表の中央に「要点をおさえて話す・聞く、書く、読む力」を記載する欄を設けて授業研究をしたのです。つまり、他教科の学習で、国語の力が働かないと充実した学習が成立しないということの実証的研究です。その結果はほとんど波及・応用されていないという結論に達したのでした。
21世紀を拓く国語科教育の重要課題は、「生きて働く国語力とはなにか」の究明ではないでしょうか。真の国語力は「価値ある課題を自力で解決できる『統合的な言語行動力』である」と結論づけることができると思います。
単なる断片的なスキルでなく、目的や必要あるいは相手や場面に応じて、適切に対応できる「言語行動力」を獲得する国語科教育を構想する必要があります。具体的には、(1)「言語の基礎的技能」を確実に定着し、その技能を(2)「言語活動の基本的能力」に波及・応用し、そこで完全習得した能力を(3)「言語の統合発信力」に生きて働くように体系化しました。この基礎的技能・基本的能力・統合発信力の系統化に当たっては、学習指導要領の目標、低・中・高の段階的系統の趣旨を的確におさえたうえで、各学年の目標と活動等を設定しました。例えば一年生で習得した技能・能力が、二年生に波及・応用され、確実に生きて働く国語力として獲得されるように配慮しました。
また、新能力「統合発信力」については、各教科との密接な関連を配慮し、知の統合化を重視し総合的学習や日常の言語生活に駆使・運用されるようにシステム化しました。
これからの国語科教育においては、この統合発信力が重視されていくのではないかと考えています。基礎・基本・統合発信力の各指導過程は易から難へのステップを踏む学習法をシステム化し、「行動学習法」で一貫しなければ、「生きて働く国語力」は完全獲得されません。このような実践理論に基づいて、行動学習すること、つまりワークすることを通して国語の力を定着するスペシャルワークを作成し、「子供が創る学習法」を開発しました。
本書は、明治図書の教育図書企画編集室代表の江部満様に、「これからは国語学力向上運動を推進する時代である――」という提言を受けて企画しました。極めて重要な今日的課題をいただき心から感謝しています。編集推進に当たっては、プロジェクトを組織し調査研究を積み重ねました。その誠意・情熱に頭の下がる思いでした。
「『基礎的技能・基本的能力・統合発信力』を獲得するスペシャルワーク」の企画が、新世紀を拓く国語科教育進展の役割を果たすことを念願しております。
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- 明治図書