- はじめに
- 第1章 ペア学習・グループ学習って,なぜ大事?
- 1 いま,求められる学びのかたち
- 2 数学で対話って,なぜ必要?
- 3 数学で対話って,難しい?
- 4 数学で対話をどう生かす?
- 第1章の引用・参考文献
- 第2章 対話でどう学び合う? 〜協同学習で考える〜
- 1 協同学習ってどういうもの?
- 2 協同学習の基本要素とは?
- 3 協同学習の技法とは?
- 4 技法1:シンク・ペア・シェア
- 5 技法2:お隣に聞こう
- 6 技法3:ラウンド・ロビン
- 7 技法4:ジグソー法
- 8 技法5:DOUBLE-DOUBLE
- 9 技法を超えて工夫する
- 第2章の引用・参考文献
- 第3章 どんな授業をデザインする? 〜IDの視点から〜
- 1 IDってなに?
- 2 授業の出入口をはっきりさせよう
- 3 授業の流れを計画する
- 4 計画通りにいかないときは?
- 5 設計の視点@ 学習形態
- 6 設計の視点A 学習意欲
- 7 設計の視点B どこで考えさせる?
- 8 設計の視点C 評価とセットで考える
- 第3章の引用・参考文献
- 第4章 続けるにはどうすればいい? 〜STEP UPの考え方〜
- 1 小さな協同? 大きな協同?
- 2 小さな協同をどうつくる?
- 3 大きな協同をどうつくる?
- 4 すぐに解決できないこともある?
- 5 少しずつSTEP UPを
- 第4章の引用・参考文献
- 第5章 授業でどう生かす? ペア学習・グループ学習の実践例
- 第5章のガイド
- 1 中1 正負の数 4つの4で1〜10をつくろう!
- 2 中1 方程式 文章題から方程式をつくろう!
- 3 中1 平面図形 作図の手順を伝えよう!
- 4 中2 連立方程式 式の秘密を調べよう!
- 5 中2 平行と合同 証明の流れを伝えよう!
- 6 中3 二次方程式 神経衰弱ゲームで復習しよう!
- 7 中3 三平方の定理 正方形をつくろう!
- 8 高1 二次関数 係数とグラフの関係を考えよう!
- 9 高1 確率 大きな輪になる確率を求めよう!
- 10 高2 三角関数 1ラジアンって何?
- 11 高2 数列 きれいな立体をつくろう!
- 12 高3 微分 ℯについて考えよう!
- 13 高3 極限・積分 数列の和を求めよう!
- 第5章の引用・参考文献
- 第6章 実践に躊躇するとき? 〜Q&Aで考える視点のヒント〜
- Q1 時間がかかりませんか?
- Q2 授業が騒がしくなりませんか?
- Q3 (受験)学力がつきますか?
- Q4 みんなと学ぶのが苦手な生徒には?
- Q5 同僚と協力して進めるには?
- おわりに
はじめに
本書は,中学校・高等学校で数学を担当される先生方に向けて,ペア学習・グループ学習のあり方を一緒に考えていくために執筆したものです。
説明と演習を中心に授業をしているけれど,ペア学習・グループ学習を取り入れてみたい先生。試してみたもののうまくいかず,いったんやめてしまったが,再び挑戦したい先生。年に数回は行っているが,日常的には難しいと感じている先生など,教室での対話的な学びを模索している方々に手に取っていただきたいと考えています。
近年,「対話的な学び」や「協働的な学び」の必要性が繰り返し語られています。授業の中で生徒同士のやりとりをどう位置づけるかは,数学教育においても避けて通れない問いです。しかし,いざ教室で実践しようとすると,その方法や意味づけに迷いを感じる場面は少なくありません。
本書の特徴は,理論と実践をおよそ半分ずつ扱っている点にあります。第1章から第4章は「理論編」として,協同学習やインストラクショナルデザイン(ID)の視点から,ペア学習・グループ学習を授業にどう組み込むかを整理しました。第5章は「実践編」として,13の授業事例を紹介し,工夫や課題をできるだけ臨場感をもって書いています。理論と実践をつなぐ点で,これまでにあまりなかった本になったのではないかと思います。
なお,対話的な学びには,「協同学習」「協調学習」「学び合い」「学びの共同体」など,いくつかの呼び方があります。これらは,学問的背景や提唱者の違いによるものですが,文部科学省では総称して「協働的な学び」としています。本書では,私の研究分野である「協同学習」を中心に論じますが,いずれの立場にも「対話を通して学びを深める」という理念に共通するものがあると考えています。
ここで少し,私自身の協同学習への関心がどのように形成されてきたのかをお話ししたいと思います。
大学卒業後,すぐに数学の教員として働き始めました。教師になった当初は,おもしろい導入を考えたり,わかりやすい説明を行ったりすること,あるいはこまめなノート指導や小テストで生徒の理解を確認することが,授業を充実させる道だと考えていました。わかりやすい説明は大切ですが,それが授業の中心になると,生徒が自ら考えたり,意見を交わしたりする場面が限られてしまいます。さらに,教師がノート添削や小テストの採点に時間を費やしすぎると,肝心の授業準備にかける余力を失いかねませんし,生徒も「先生が見てくれるのが当然」と受け身になってしまうことがあります。
そのような折に,知人から協同学習という考え方を紹介され,大きな刺激を受けました。当初は「助け合う学習」という印象を持っていましたが,実際には,自分の言葉で説明し,正しく他者に頼ることで理解を深める,なれ合いではなく個を強くする学びである点に魅力を感じました。数学の授業で,こうした学びをどのように効果的に取り入れられるかを考えるようになりました。
現職のまま大学院に進学し,その過程でインストラクショナルデザイン(ID)に出合いました。学習目標を明確にし,効果・効率・魅力のバランスを意識する重要性を学び,協同学習をより俯瞰的に捉える視点を得ました。修士・博士課程では,協同学習の技法を継続的に取り入れながら,生徒の学びや意欲の変化に注目し,理論と実践を往還しつつ理解を深めてきました。
こうした経験を通して,協同学習に大きな可能性を感じる一方で,それだけを特別視するのではなく,授業を形づくる多様な方法の一つとして捉えることの大切さを実感するようになりました。協同学習「こそ」ではなく,協同学習「も」大切にするという立場です。このような視点から,本書は「ペア学習・グループ学習の処方箋」としてではなく,先生方が状況に応じて授業を設計する際の手がかりとしてまとめたものです。どの場面でどの方法を選べば必ずうまくいくといった答えを示すことはできませんし,そうすべきでもないと考えています。ペア学習・グループ学習の成否は,目の前の生徒や学校文化に大きく左右されるものであり,理論を踏まえつつも,その都度の状況に応じて授業を組み立てていくことが求められます。
本書が,先生方が授業に新しい一歩を踏み出す際の後押しであるとともに,いま取り組まれている実践を整理し,見つめ直すきっかけになれば幸いです。
本書の執筆にあたり,構成から細かな点に至るまで丁寧にご助言くださった明治大学の佐藤英二先生,大学院時代から今日まで一貫してご指導を賜った東京理科大学の渡辺雄貴先生,そして授業実践について的確なアドバイスをいただいた元同僚の柏木将光先生に,心より感謝申し上げます。また,本書の構成を「理論と実践を半分ずつ扱う形にしてはどうか」とご提案くださった明治図書の安藤龍郎様にも,深く感謝申し上げます。みなさまのお力添えがなければ,本書をここまで形にすることはできませんでした。
2025年12月 /島 智彦
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明治図書

















