- 本書の構成と使い方
- 論理的思考力を育てるドリル Q&A /長谷川 祥子
- T 基礎型
- 小学校低学年
- 1 はやくおきたのは……(10分間)
- 2 せがたかいのは……(10分間)
- 3 はじめにとおったのは……(10分間)
- 4 ねだんの高いくだものは……(10分間)
- 5 ゆうしょうしたのは……(5分間)
- 小学校中学年
- 6 かけっこの一番は……(5分間)
- 7 おそく来たのは……(5分間)
- 8 同じ色をえらびましょう……(10分間)
- 9 座席の並び方……(5分間)
- 小学校高学年
- 10 どちらがたくさん……(10分間)
- 11 調理実習で……(5分間)
- 中学校
- 12 太陽系では……(10分間)
- 13 東中学校の地図……(10分間)
- 14 くわしく書けているのは……(5分間)
- 15 暗黙の常識……(5分間)
- 高校
- 16 カバンと布……(5分間)
- U 法則発見型
- 小学校低学年
- 17 三つのことば……(10分間)
- 18 なかまでないもの……(10分間)
- 19 くつばこにはいっていないもの……(5分間)
- 20 見られなかったどうぶつ……(10分間)
- 21 どうぶつえんのおりのまえで……(10分間)
- 22 あしたのきゅうしょくは……(10分間)
- 小学校中学年
- 23 五人のチーム……(5分間)
- 24 結論のまとめ方……(5分間)
- 25 作文のまとめの言葉……(5分間)
- 小学校高学年
- 26 仲間はずれの組み合わせ……(5分間)
- 27 暗号を解読しよう……(20分間)
- 中学校
- 28 三つの文から……(10分間)
- 29 三つの物語の共通点……(10分間)
- 30 適切な感想はだれ?……(5分間)
- 高校
- 31 紹介の言葉を……(10分間)
- 32 アンケート結果を読み取る(1)……(10分間)
- 33 アンケート結果を読み取る(2)……(10分間)
- 34 カラオケについて……(5分間)
- V 推論型
- 小学校低学年
- 35 だから、とんぼは……(10分間)
- 小学校中学年
- 36 うちの兄弟は……(5分間)
- 37 生まれたのは何月?……(5分間)
- 小学校高学年
- 38 ケンカの理由……(10分間)
- 中学校
- 39 ケガの対処法は……(10分間)
- 40 漢字の説明……(5分間)
- 41 おかしな結論の理由……(5分間)
- 42 自分の都合……(5分間)
- 高校
- 43 同じ内容を示した文……(5分間)
- 44 論証には隠された前提がある……(10分間)
- 45 当番表を作る……(10分間)
- 46 推論のまちがいを説明する……(5分間)
- 47 領収書の確認法……(10分間)
- W 情報活用型
- 小学校低学年
- 48 わたしはだれでしょう……(5分間)
- 49 ふるいものをあつめて……(10分間)
- 小学校中学年
- 50 どちらがだいじ……(10分間)
- 51 お店を選ぶ(1)……(10分間)
- 小学校高学年
- 52 おいしいサンドイッチ……(10分間)
- 53 お店を選ぶ(2)……(10分間)
- 54 みんなの発言……(10分間)
- 55 カラスの情報……(5分間)
- 56 時刻表を読む……(10分間)
- 57 事実と意見(1)……(5分間)
- 中学校
- 58 事実と意見(2)……(5分間)
- 59 事実と意見(3)……(5分間)
- 60 事実と意見(4)……(5分間)
- 61 事実と意見(5)……(5分間)
- 62 事実と意見(6)……(5分間)
- 63 事実と意見(7)……(5分間)
- 64 事実の表現……(10分間)
- 65 事実と意見(8)……(10分間)
- 66 意見と命題(1)……(10分間)
- 67 意見と命題(2)……(10分間)
- 68 意見と命題(3)……(10分間)
- 69 クラブの部長を決めるとき……(5分間)
- 70 文脈に沿った言葉か……(5分間)
- 71 疑わしい意見……(10分間)
- 高校
- 72 事実と意見(9)……(5分間)
- 73 意見と命題(4)……(5分間)
- 74 不要な情報……(10分間)
- 75 系統の説明……(5分間)
- 76 ルールの表現を分かりやすく……(10分間)
- X プレゼンテーション型
- 小学校低学年
- 77 みちじゅんのせつめい……(20分間)
- 78 おまつりのプログラム……(10分間)
- 小学校中学年
- 79 運動会の日に……(10分間)
- 80 七時のニュース……(20分間)
- 81 学校案内……(20分間)
- 82 お楽しみ会……(5分間)
- 83 図書室の本……(5分間)
- 84 かべ新聞の記事……(10分間)
- 小学校高学年
- 85 正しい説明はどれ?……(10分間)
- 86 説明の工夫……(10分間)
- 87 応援する文章……(5分間)
- 中学校
- 88 生産台数と価格……(10分間)
- 89 シンナーの犯罪……(10分間)
- 90 薬物乱用の恐ろしさ……(10分間)
- 91 適切なアドバイスは……(10分間)
- 高校
- 92 生徒の反論……(20分間)
- 93 物価は高いか……(20分間)
- 94 修学旅行の行き先……(10分間)
- 95 わかりやすい案内文……(10分間)
- 96 セールストーク……(10分間)
- 97 コピー文の改善……(20分間)
- 第2集のあとがき /市毛 勝雄
本書の構成と使い方
1 論理的思考力の育成とは
日常生活のなかで、私たちは話し言葉や文字言葉によって、たくさんの仕事を行い意思を交流している。こうした全ての場面で、私たちは無意識に言葉をあやつっているように見える。しかし、使っている言葉は多くの場合、相手に理解され、仕事は達成され、意思は交流することができる。ときには相手に感動を与えることさえある。
これは言葉が社会共通のワク組みになっているためである。初めて出会った人同士でも相手の意思や行動の原理を理解できる。この社会共通のワク組みを法則性とも、また論理性とも言う。世に言う芸術的感動も、じつは論理的思考力によって表現の意図が理解できて、初めて感動に至る。つまり、われわれの行動や社会活動や感動は、すべて論理的思考の結果と考えてよいのである。
学校教育の役割は、全教科を通して社会生活に必要な言葉の教育を行うことである。この教育は、そのまま論理的思考のための教育と言ってもいい。国語科はそういう論理的思考の基礎となる言葉についての学習を、系統的に行う教科である。しかしながら、論理的思考力の学習指導というものは、日本の教室で行われた実績はほとんど存在しなかった。ここに本書の存在理由がある。
本書は論理的思考力を鍛えるための課題を、生徒が親しみやすい材料を利用して分かりやすく焦点化してある。各課題とも、短い時間でまとまっており、生徒を疲れさせることはない。一見、断片的で雑多な知識を寄せ集めたクイズ集のように見えるが、学年を追って演習していくと、課題を解決する背景に科学的で論理的な推論が必要であることが自然にわかってくるようになっている。
2 本書の構成
「論理的思考力を育てる」といっても、この現実世界で論理が働く現象は無際限で、どこから手をつけてよいかわからない。そこで本書では論理的思考の現れ方を次の五種類の型に分けて、指導の手だてを工夫することにした。
(1) 基礎型
(2) 法則発見型
(3) 推論型
(4) 情報活用型
(5) プレゼンテーション型
以下、各型の指導目標、学習事項、指導上の留意点を述べる。
(1) 基礎型
論理的な思考のうちでも、最も初歩的な課題を集めてある。
幼児は初歩的な思考によって大きさ、長さ、色、前後、順序等を確認するようになる。さらに、重さ、体積、時間、速度等の概念を認識できるようになる。この概念を認識できるのは、論理的思考力によるのである。そのため、小学校の低学年で、これらの概念をくり返し確認する学習が大切である。本書では、そういう課題として次に挙げるようなドリルを用意した。
1 大きさ、高さ、速さの順序を考える。
2 日常よく出会うできごとの順序を考える。
3 大小、軽重の概念を判断する。
4 時間的な順序を並べ替える。
(2) 法則発見型
いくつかの具体的な現象・事象から、共通する法則性を見つける課題を集めてある。
いくつかの事象から共通する法則性を見つける思考の型を「帰納論理」という。この思考の型は実験や観察などによって仮説や法則性を導く科学的推論に発展するもので、この推論の経験を積み重ねることによって、的確な推論や判断が可能になっていく。
実際の観察・実験を数多く体験的に行う前に、教室で文章課題によって「帰納論理」の概略を知っておく学習は効果がある。たとえば作文や感想文を書くときに、具体的事例を二つ書いてからその共通性を記述するという文章構成を設定したり、授業のしめくくりとして学習の経験を「感想」として述べる体験を重ねておくと、この思考法に慣れることができる。本書ではそういう課題として、次に挙げるようなドリルを用意した。
1 具体的事例三つから法則性(共通する性質)を発見する。
2 人物のいろいろな行動から、その人の性格を推論する。
3 いろいろな事実についての類似点を発見する。
(3) 推論型
小学生の十一、二歳から中学生にかけて、演繹的思考が急激に発達する。その発達の様子は、将棋、パズル、トランプゲーム、テレビゲームに熱中する姿によって理解することができる。これは一定のルールによって結果を推論し、その予想と結果とを比較して楽しむという、知的な楽しみ方を覚えた姿である。
国語科では、論理的な作文の文章の学習で生徒のこの能力を発展させることができる。作文の具体的事例の性質(まとめ)が、一部の例に限らず多くの例について認めることができる、という「一般化・普遍化」の主張(むすび)を述べるとき、この演繹論理が利用される。この「普遍化の主張」という性質が鮮やかに認められる例が「ルールづくり」である。本書では代表的な課題として、次に挙げるようなドリルを用意した。
1 与えられた条件に正しく対応する事例を選び出す。
2 社会生活に潜在する問題点を探し出す。
3 ルールづくりの場面を設定する。
4 架空の設定で勝ち負けを推論する。
(4) 情報活用型
現在ではパソコンを使ったインターネットや電子メールや携帯電話の情報端末によって、個人が膨大な量の情報を直接入手できるシステムができあがった。これはわずかこの数年で起こった「情報革命」である。
ところが、この個人が入手できる膨大な量の情報は、全面的に信頼できる内容のものばかりではない。有害無益な情報も数多い。故意に変造された言い方、下心のある情報、単なるうわさ話、虚飾で飾られた表現などの情報も多い。最近この種の情報を「うのみ」にして、悲惨な事件に巻き込まれた人達が続出した。言語情報を的確に判断して、自分の身を守る能力を身につけさせることも、国語科の学習目標の一つになったと言えるだろう。
この「情報活用型」の学習事項としては、条件に適合する事実を見つける、事実と情報が正確に適合しているか検討する、虚偽と事実とを区別する、事実に正確に「名づけ」する等の練習が中心となる。
本書では代表的な課題として、次に挙げるようなドリルを用意した。
1 複数の情報から条件に適合する事実を見つける。
2 情報と情報とを関連づけて事実を推論する。
3 会話から事実と虚偽とを区別する。
4 一つの段落から話題の中心となる語句を選ぶ。
(5) プレゼンテーション型
テレビ・ラジオのコマーシャル、乗り物や街頭に氾濫する色鮮やかなポスター、あらゆる雑誌の誌面を飾る宣伝広告等はあらゆる表現技術を駆使して、購買意欲をかき立て、購買行動に結びつけようとしている。このような表現技術や伝達効果を学ぶことは、高度な言語操作を学ぶことになり、論理的な思考法や表現法の効果を知ることになる。同時に、賢く判断する方法も研究することになる。
この「プレゼンテーション型」の学習事項としては、情報をより効果的に発信する、複雑な情報を簡明に発信する、図と言葉を結びつけて情報を知る等の練習が中心となる。
本書では代表的な課題として、次に挙げるようなドリルを用意した。
1 地図を利用して、課題を解決する。
2 効果のある情報伝達技術を工夫する。
3 ニュースを聞いて、自分たちの行動の参考にする。
4 説明の仕方を効果的にするための条件を考える。
(6) 五種類の型の関係
論理的思考の現れ方として五種類の型は、指導の方法を工夫するための手がかりである。これをもって論理学の領域を論じる意図はない。
さて、この論理的思考を指導する五種類の型の相互関係を図示すると、前ページの図のような関係を構成すると考えられる。このねらいは、論理的思考の複雑さの段階を想定するところにある。これは、ドリルを作成しながら、実際に授業で使って得た評価に基づいている。本ドリルを使用するときの参考になれば幸いである。
3 本書の使い方
1 本書の紙面構成は原則として、次のようになっている。
右ページ ドリル課題
左ページ 「解答と解説」
2 児童・生徒には右ページのドリル課題を与え、ドリル終了後に先生が「解答と解説」を見ながら答え合わせを指導する、という使い方を想定している。
3 ドリル課題は、右ページをそのまま拡大コピーをして児童・生徒に与えてもよく、先生がドリルペーパーにきれいに打ち直して与えてもよい。このため、学年、論理の型、時間等はすべて左ページだけに記載してある。
4 小学四年生くらいまでは、教師が範読し、クラス全員が一斉音読するというように、ドリルの文章をクラス全員が音読できることを確認する。これは第一学期くらいまでは、おこなった方がよい。ペーパーを黙って配って、いきなり「書きなさい」とだけ言うのは、児童・生徒に恐怖感を与えることが多い。
5 新しい課題が多いので、初めの二、三回は考え方や推論のしかたを、クラス全員で話し合わせるのがよい方法である。慣れてくると、生徒はさっさと始めるから、生徒の様子をよく観察して適切なやり方を選ぶことが大切である。
6 小学四年生くらいまでは、答え方をていねいに指導する。○で囲む、記号で答える、語句を記入する等、いろいろな方法があるから、必要に応じて板書して示すのがよい。
7 本ドリルには、5分間 10分間 20分間 の三種類がある。この区別はおおよその目安で、作成者が実際に児童・生徒に使用して、その様子で決めたものである。
8 本ドリルの答え合わせは、ドリルを終えたその場で先生が確認して、児童・生徒が自己採点をする、あるいは生徒同士で交換して採点するという方法が簡単である。配点は原則として設けていない。先生がそのつど決めて差し支えない。
9 本ドリル集は、推論の技術と、考える楽しさとを、同時に児童・生徒に味わわせることを目的として作ってある。
そのため、評価・評定の体系は一応除外した。このドリルが多くの先生方に迎えられ、これに続いて数冊のドリル集が並んだときには、評価・評定の体系の問題が現れるかもしれない。しかし、本ドリル集を利用された先生方が、独自に評価の資料として使用するのはいっこうに差し支えない。
4 「解答と解説」の使い方
1 左ページには、次の各項が記載されている。
1 領 域 (型、およびドリルの説明)
2 時 間
3 学 年
4 解 答 (解答と解説)
ねらい
ドリルを選びだすときの参考になるように、見やすく箇条書きとした。
2 解答は、太字で目立つように印字した。
3 解答の後にある「解説」は、児童・生徒がドリル解答中に目を通しておくと、答え合わせのときに役に立つ。とくに正解に到達する筋道を説明するときは、よく理解しておく必要がある。このドリルは「論理的思考力」を育成することを目的としているから、やさしい言葉を選んで、簡潔に説明する。
なお、解説の番号はそのページだけの通し番号になっている。ご注意ください。
4 「ねらい」には、そのページのドリルの意義が記されている。本ドリル集がただの「クイズ問題集」ではないことを理解していただけることを願っている。
/長谷川 祥子
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- 明治図書
- 以前の学校で購入して使っていました。今の勤務校でも是非みんなで使いたいと思います。小学校低・中学年の問題がもっと増えるといいです。そして、教科書の教材に合わせた形で、順序・比較・分類などができるといいと思います。2009/6/14チャッピー