- まえがき
- 第1章 子どもの主体性と自己調整で体現する道徳科授業
- 1 道徳科が求める未来に生きる子どもの姿
- 自己調整学習とは主体的な自分事の学びである
- 子ども自身の生き方学びとしての道徳学習
- 道徳科を支える自己調整学習の具体的イメージ
- 自己調整学習への期待と解決すべき課題
- 2 道徳科で育む生きて働く人間力
- 道徳科で目指す自己調整学習は「探究」?「探求」?
- 道徳科の自己調整学習で学ぶのは「自分を生きる力」
- 道徳科が求める自己調整学習での個別な価値観形成
- 3 主体的な学びの実現で道徳的知性を磨く
- 道徳科で育まれる道徳的知性とは何か
- 道徳的知性を支える学習主体性の育み
- 道徳学習で考える自由進度学習と自己調整学習
- 学校における道徳的知性発露としてのDEIの視点
- 4 自己調整学習方略で道徳学習スキルを磨く
- 道徳科での自己調整学習イメージを構築する
- 可視化された道徳学習プロセスを共有して学ぶ
- 道徳科を通じて学習成功体験を蓄積する
- 第2章 道徳科授業における自己調整学習の理論とアイデア
- 1 動機づけ(Plan)×道徳科学習の理論
- 動機づけが自己調整学習のイメージをつくる
- 個別な「問い」から学びの方向性をつかみ取る
- 自らの学び方略を全開するエンゲージメントの発揮
- 道徳科自己調整学習を支える教師の役割
- 2 動機づけ(Plan)×道徳科学習のアイデア
- 理論×アイデア
- 考えたくなる,考える必要を感じる問いかけ
- みんなで考えたい問いを話し合う
- アイデア@「個の問い」を問う
- アイデアA考えたくなる,考える必要を感じる問いかけ
- アイデアB「みんなの問い」を決める
- 3 メタ認知(Do)×道徳科学習の理論
- 道徳科での大切にしたいメタ認知
- 道徳学習に役立つメタ認知としてのセルフ・モニタリング
- 道徳学習促進のためのメタ認知能力
- 道徳学習充実のためのメタ認知能力促進法
- 4 メタ認知(Do)×道徳科学習のアイデア
- 理論×アイデア
- 自分の考えをアウトプットする
- メタ認知について理解
- アイデア@自分の考えの立ち位置を問う
- アイデアA多様なアウトプットの場を用意する
- アイデアB段階的にメタ認知能力を高める
- 5 評価(See)×道徳科学習の理論
- 道徳科での自己調整学習とその評価の考え方
- 道徳科学習プロセスと評価プロセスの一体化
- 道徳科での自己調整学習評価
- 道徳科における自己調整学習評価の方法
- 6 評価(See)×道徳科学習のアイデア
- 理論×アイデア
- 自分の考えの変化に気づく
- 学び方を自己評価する
- アイデア@評価の視点を明確にする
- アイデアA学習を通しての変化をみる
- アイデアB自分の学びを価値づける
- 第3章 自己調整学習で子どもとつくる道徳科授業
- 事例1:まどさんからの手紙――こどもたちへ
- (高学年,内容項目D-(22)よりよく生きる喜び)
- 事例2:銀のしょく台
- (高学年,内容項目B-(11)相互理解,寛容)
- 事例3:ここを走れば
- (高学年,内容項目C-(12)規則の尊重)
- 事例4:新幹線開発物語
- (高学年,内容項目A-(5)希望と勇気,努力と強い意志)
- 事例5:情報社会との付き合い方(岡山県警察コラボ教材)
- (中〜高学年,内容項目B-(7)親切,思いやり)
- 事例6:日曜日のバーベキュー
- (中学年,内容項目C-(12)規則の尊重)
- 事例7:うばわれた自由
- (高学年,内容項目A-(1)善悪の判断,自律,自由と責任)
- 事例8:ジコチュウ(光村図書)
- (中学校,内容項目B-(9)相互理解,寛容)
- 事例9:「T 自分に気候変動を語る資格はない」「U オーロラの向こうに」「V 極北のひかり」
- (中学校,内容項目D-(20)自然愛護 D-(21)感動,畏敬の念 D-(22)よりよく生きる喜び)
- 事例10:性別の色?自分の色〜無意識のバイアスを越えて〜
- (中学校,内容項目B-(9)相互理解,寛容 A-(3)向上心,個性の伸長
- 第4章 自己調整学習×道徳科授業のQ&A
- Q1 全員で考える道徳で自己調整学習はできるのですか?
- Q2 授業の構想は今までとどう変わりますか?
- Q3 何をどう子どもに任せていけばよいのでしょうか?
- Q4 自己調整学習がやりやすい教材などはありますか?
- Q5 個別の問いを学習課題に練り上げるポイントはどこですか?
- Q6 個別の学びと協働的な学びを融合させるにはどうすればいいのですか?
- Q7 納得解への導き方はどうすればいいのでしょうか?
まえがき
令和6(2024)年12月25日,文部科学大臣名で中央教育審議会に対して「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」と題する諮問がなされました。この「クリスマス諮問」と称される文部科学大臣から中央教育審議会への諮問は,2040年代を見据えたVUCA(変動性,不確実性,複雑性,曖昧性)な未来社会を生き抜く子どもたちにどのような資質・能力を学校教育で育めばよいのかを,その基準となる学習指導要領の在り方として審議・検討を求める大きな意味をもちます。その答申如何でわが国の学校教育の方向性は大きく左右されますので,極めて重要な諮問であったと説明づけられます。
そんなわが国の教育政策の転換期に位置する今回の諮問とそれに伴う学習指導要領改訂は,本書で語る『道徳科×自己調整学習』にも密接に関係してきますし,その後のわが国における道徳教育の在り方にも大きな影響力を及ぼしてきます。なぜなら,先の改訂で教科外教育としての「道徳の時間」から「特別の教科 道徳」という教科教育へと大転換を果たした小・中学校道徳科授業についてより一層の改革努力とその充実を求めることになるからです。
特にこれからの学校教育,とりわけ道徳科授業でも求められる「自己調整学習」とはいったい何を意味し,何を子どもたちにもたらすのでしょうか。本書『道徳科×自己調整学習』の企画意図は,ここにあります。
近年よく耳にする自己調整学習という用語ですが,これは学習者である子どもが自ら学ぶ必然性も含めて自己決定し,学習目標や学習計画,学習方法,その評価と改善に至るまで自己選択しながら学習スキルを発揮しつつコントロールしていくような概念イメージを意味します。自己調整学習は,自らのより善い在り方や生き方を志向する道徳科では必要不可欠な要件です。
/田沼 茂紀
-
- 明治図書