文学の授業力をつける
7つの授業と自己学習を進める学習資料40

文学の授業力をつける7つの授業と自己学習を進める学習資料40

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新しい学力観の展開に伴った授業力を高め、授業改革に向かうための克服すべき課題を、7つの授業実践事例を通して考察・評価。コピーで使える学習資料40を付す。


復刊時予価: 2,387円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-363519-5
ジャンル:
国語
刊行:
3刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 136頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

前書き
序 文学の授業力をつける
1 本書の初出と特徴
2 文学の授業研究の歴史
3 授業構想の視点
4 評価の考え方と手順
5 文学の授業力から国語の授業力へ
1 シリーズを読み続けよう
単元 「シリーズを読み続け、紹介し合おう」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 シリーズ作品の読書行為
2 共通教材によるモデル学習
3 グループ担当作品の紹介文作成
4 担当作品集全体の紹介文の発表
2 ストーリーテラーになろう
単元 「ストーリーテラーになろう――太郎物語を語る――」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 民話の伝承と再話
2 ストーリーテリングの決意
3 太郎物語というジャンル
4 シナリオのモデル学習
5 シナリオの執筆
6 聞き手との交流
7 ストーリーテリングと評価
四 民話教材の授業の今後
【参考】 民話教材の特質と指導の意義
3 動物が活躍する本を読もう
単元 「『ねずみ』が活躍する本を読もう」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 登場人物の活躍への注目
2 ファンタジー構造の発見と楽しみ
3 ブックトークから読書紹介カレンダーへ
4 語りの構造について考えよう
単元 「語りの構造について考えよう」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 「語りの構造」という課題
2 「語りの構造」分析
3 五歳の自分を語る
5 感想を深めよう
単元 「物語を読みあい、感想を深めよう」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 学習課題の設定
2 グループで作品紹介の準備をする学習
3 発表と感想の書き換えを行う学習
6 朗読劇をしよう
単元 「朗読劇をしよう」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 朗読劇との出会い
2 シナリオ作成と実技練習
3 演じられた朗読劇
7 読書討論会をしよう
単元 「読書討論会をしよう――人の出会いと交流――」
◆対象・時期・指導時間  ◆教材  ◆単元のねらい
一 単元の指導目標
二 単元の授業過程
三 授業の実際と解説
1 出会いと交流の論点の選択
2 評論を書く
3 読書討論会の開催

前書き

 文学軽視の風潮と、文学を再び重視し受容することを求める風潮とが屹立している。だが、これらは、〈読者としての子ども〉が自由に読むことを遠ざける言辞にならないだろうか。文学は、読むかどうか選択の自由を持っている。また、読者として自由に読むことも可能だ。読みたいから読むのであり、楽しいから読むのだ。読むことが自己の内面を築くことを身体で知っているから読むのだ。最近、読書運動が活発になり、自由読書が再認識されている。このような成果は、読む自由と自由に読みたいことの再確認を促しているはずだ。

 一九九三年、読者論に立脚して〈読者としての子ども〉主体の確立と解放を提起した。(『読者としての子どもと読みの形成』)読者主体の形成に向かうことが出来れば、文学作品は今も多くのことを学ぶことが出来る教材の一つである。文学の価値が低下したから軽視されるのではない。作品の読解ばかり押しつけたり、作者や作品に拝跪するような読みが横行するから遠ざけられるのである。だからといって、言語活動を作品の特質を考慮せずに形式的に当てはめるのではいつか飽きが来る。これらは皆、作品主義・教科書主義・教材主義である。またも、作品の前から子ども読者が不在になる。

     ◆

 子どもが作品の前にやってくるように、読む自由と自由に読むことが出来る授業を構想したい。授業によって一層楽しく豊かな読書行為力を形成し、読書生活の構築を図りたい。〈文学の授業力〉の必要な所以である。よい作品を提供するだけでも、読解技能を一覧にするだけでも不十分だ。現在、評価論が話題となっているが、ブームになるほど話題が広がっても、授業そのものを改革せずに過ぎれば、それらは、大きな潮流となることは出来ないのである。新しい学力観の展開に伴った授業力を高め、授業改革に向かうべきだろう。文学の授業における克服すべき課題は、次のようなことになる。

 第一は、主体的な自己学習を前提に、子どもの現実生活や言語生活を作品に統合し、豊かな読書行為を実現させることと読書生活の構築に向かうことが最も重要なのである。自分の生活と結合しない文学は、遙か遠い存在だからである。単元化された授業と、子どもの生活をいかに必然化するか。

 第二は、個々の読者の自己課題とそれに基づくパラダイムと、集団のそれらをいかに統合するかである。一人一人の読みを保障することがクラス集団によって一層高められるようになっていないと自由になりにくいからである。

 第三は、一定時間に限られる教育課程の中で、いかに指導すべき内容と子どもの学習活動の広がりを集約するかである。授業時間の制約は、最も困難な課題である。文学作品は、長編もあれば、教科書以外の作品を複数の子どもが同時に持つことも必要であり、時間を要求するからである。

 本書に収録した七つの授業は、このような課題への挑戦である。現況に照らして必要な授業を構想・実践し、実践記録を考察・評価したものの集成が本書となった。文学の授業力を高め、新たな授業創造によって、子どもたちが一層文学世界にアクセスしていくことを期待したい。

     ◆

 本書収録の授業は、私が主宰する「国語教育カンファランス」研究会員によって実践されたものである。多忙な日常を越えて研究会に足を運び、実践研究を重ねる彼らの尊さは、いくら言葉を費やしても語りきれない。本書の実践を行ってくれた七人の会員に深く感謝したい。

 全国の「国語教育カンファランス」研究会報には、いつも左記の言葉を掲載してもらうようにしている。これは、私が考えたものだが、子どもを見る視点でもある。読者の励ましにもなればと思い、本書で公開したい。本書の授業提案を読み、いくらかなりとも実践の契機を得られた人には、この言葉をかみしめ新たな授業創出に向かっていただきたいと思うのである。

     ◆

 明治図書の間瀬季夫氏と松本幸子氏には、本書刊行において多大なご協力を頂いた。最後になったが、ここに記し感謝の意を表したい。何度もレイアウトや装丁などに改善を加えることを要請したのにもかかわらず、誠実にお応えいただいた。お二人には、既に単著と編著で一八冊もお世話になっている。本書は、一九冊目になる。刊行から装丁まで、今までお願いしたことで実現しなかったことはなかった。研究者として、編集者に恵まれたことを人生の大きな喜びにせずにはいられない。


  いかなる時も敬愛し、信頼し、連帯し、そして優しく


  二〇〇二年五月   /井上 一郎

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      明治図書

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