- 序文 国語学力向上の解決策は、「到達度チェック」に徹した授業開発が原点 /瀬川 榮志
- まえがき /藤井 英子
- T 小学校第五・六学年「書くこと」の国語学力到達規準の系統表
- 1 学習指導要領第五学年及び第六学年「書くこと」の目標と内容
- 2 基本的能力を習得させるための作文活動
- 3 国語学力を確かに身につけるために、評価の観点・基準・方法を体系化する
- 4 作文における評価基準(到達度)
- 5 到達度チェックカードの作成と活用
- U 小学校第五・六学年「到達度」チェックカード
- 〈五年〉
- 1 自己表現の作文
- 〈障害のある人の生き方〉 「郡司ななえさんと出会って」
- 2 思考・認識の作文
- 〈読後の感想を書く〉 「大造じいさんとガン」
- 3 情報伝達の作文
- 〈言葉の不思議さを調べ発表会をしよう〉 「言葉の研究レポート」
- 〈用件や気持ちが相手に伝わるように書こう〉 「依頼の手紙、お礼の手紙」
- 〈伝え方を工夫して発信しよう〉 「学校新聞でニュースを伝える」
- 〈六年〉
- 1 自己表現の作文
- 〈絵本を作ろう〉 「わたしの小学校生活」
- 2 思考・認識の作文
- 〈主張大会に向けて〉 「意見文を書こう」
- 〈実験記録文を書こう〉 「たばこの害の実験」
- 3 情報伝達の作文
- 〈世界の国を知ろう〉 「世界の国旗を調べて」
- 〈ガイドブックを作ろう〉 「学校紹介のガイドブックを作ろう」
- V 到達規準に達しない子への支援策
- 1 学習過程に自己評価の結果、学習のやり直しの過程を位置づける
- 2 学習のやり直しのヒントを工夫する
- 3 シミュレーションによる基礎作文の指導
- あとがき /藤井 英子
まえがき
国語の学力の向上というと、漢字の読み書きが中心にあげられます。漢字の読み書きも国語の学力の一つではありますが、学習指導要領の「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「言語事項」の内容が確実に習得できて、国語の学力が身についたといえます。
しかし、最近の国語の授業をみると、学習内容が明確でない、つまり何を指導しているのかわからない授業が多いように思います。また、指導と評価の一体化がいわれてから、評価が先行し、評価のための評価が多いようです。評価規準がひとり歩きしているきらいがあります。
では、国語の授業をどのようにしたら、子どもたち一人一人に国語の学力をつけることができるのでしょうか。
私は、まず、学習過程を工夫する必要があると考えます。学習過程の中に評価・学習のやり直しを位置づけることです。次のような学習過程を工夫します。
1 課題をつくる。
2 課題を解決するための方法を工夫する。
3 課題、方法に沿って自己学習をする。
4 自己学習の結果が適切かどうか話し合い、学習を深める。
5 評価基準が明らかになったら、チェックカードに沿って自己評価をする。
6 自己評価の結果、基準に到達しない子どもは、学習のやり直しをする。到達した子どもは深化学習をする。
7 学習目標に到達する。
このように学習過程に自己評価を位置づけ、どの子どもも目標に到達させることが大事です。子どもというのは一生懸命学習すればするほど、自己学習の結果が気になります。だから、自己評価が意味をなします。自己評価の結果を自覚できれば、学習に成功しようという意欲が喚起されます。子どもの学習心理に合っていれば学習の効率も高まります。このように、毎時間毎時間学習目標に到達させることが国語の学力の向上につながります。
自己評価ができるようにするためには、評価基準を子どもに理解させる必要があります。国語科では、評価基準は本時の学習の到達度です。評価基準を明らかにするためには、「何をどこまで学習させるのか」をはっきりさせることです。すなわち、本時の目標に「何をどこまで学習するのか」を設定することです。この目標設定によって、チェックカードも容易に作成することができます。
このチェックカードによって、自己評価ができればそれでいいのでしょうか。前に記した学習過程を踏みながら自己評価の結果、目標に到達できなかった場合は、学習のやり直しをすることが大切です。ヒントを与えて、学習のやり直しをさせることが大事なのです。学習のやりっぱなし、評価のやりっぱなしでは、確実な国語の学力は身につきません。
一方、「自己評価をしなさい」「学習のやり直しをしなさい」といっても子どもはやり方がわかりません。自己評価の仕方、学習のやり直しの仕方を指導することが大事です。
国語の学力をつけるためには、学習目標に明確な評価基準の設定、それに基づき学習内容の明確な授業、そして、学習過程に評価と学習のやり直しを位置づけることであると考えます。この考えに基づき、実践をまとめました。
/藤井 英子
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