苦手さのある子と一緒に考える支援 本人参加型ケース会議の始め方

苦手さのある子と一緒に考える支援 本人参加型ケース会議の始め方

近日刊行予定

子どもが主体。セルフアドボカシーを育む取組

「子どもの思いを聞き、子どもとともに支援を考える。子どもが自分から支援を減らし、次のステップへと移行する。」それを実現するための最初のステップとして「本人参加型ケース会議」があります。本書では本会議の始め方や実施してのQA、実践事例を紹介しています。


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ISBN:
978-4-18-362878-7
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 160頁
状態:
近日刊行
出荷:
2024年9月30日

もくじ

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 発達障害のある子どもへの効果的な支援
1 本人参加型ケース会議とは?
2 本人参加型ケース会議の意義
3 本人にとっての意義@力をつける
4 本人にとっての意義A再発見する
5 教員にとっての意義
6 保護者にとっての意義
7 学校組織にとっての意義
第2章 「本人参加型ケース会議」の始め方
基本の流れ
STEP 1 始める前に目的とディレクターを決める
STEP 2 子どもの今をつかむ
STEP 3 相談の場を設定する
STEP 4 事実を整理する
STEP 5 自分ものさしを一緒につくる
STEP 6 本人参加型ケース会議に向けてアプローチする
STEP 7 自己決定を支える作戦会議をつくる
STEP 8 保護者や学校へアプローチする
STEP 9 ケース会議の実際@現在の自分を確認する
STEP 10 ケース会議の実際A実現に向けたプランを考える
STEP 11 自分のためのまなびプランを作成する
STEP 12 行動変容に伴い卒業する
こんなときどうする?
Q 1 担任の先生には来てほしくないと子どもが言ったら?
Q 2 本人参加型ケース会議は誰が子どもにもちかけるとよい?
Q 3 高学年と低学年で本人参加型ケース会議に違いはある?
Q 4 通級を使っていない子どもにも活用できる?
Q 5 言語化が難しい子どもにはどう参加してもらう?
Q 6 学校内だけではなく,連携する他機関にも入ってもらう?
Q 7 児童支援専任がいなくても開催はできる?
Q 8 本人参加型ケース会議を行うのに適した時間や場所は?
Q 9 本人参加を本人が望んでいるか,気持ちはどう確認する?
Q 10 「問題解決型ケース会議」と「本人参加型ケース会議」の違いは?
Q 11 本人参加を始めるにあたり,管理職の理解をどう得る?
Q 12 本人参加型ケース会議のために事前打ち合わせしておくべき内容は?
Q 13 本人参加型ケース会議は継続した方がよい?終了した方がよい?
Q 14 不登校の子どもにも活用できる?
第3章 「本人参加型ケース会議」実践例
子どもが変わる
1 感情の起伏が激しいAさん
2 集団行動が難しいBさん
3 教室で静かに困っているCさん
保護者が変わる
4 幼少期から支援を受けてきたDさん
周囲が変わる
5 強い不安を言語化することが難しいEさん
支援者が変わる
6 エスケープ,他害行為に走るFさん
COLUMN
「適応困難な子どもの個性を伸ばす教育事業(コラボ教室)」は楽しかった!
おわりに

はじめに

 子どもたちには,一人一人の成長の仕方があり,理解の仕方もそれぞれ違います。一人一人の成長の仕方は違っても,集団の中で成長します。集団の中で生活をすることで,似たような考え方や違う考え方に気づきながら,物事の善し悪しを身につけたり,人とのつきあい方を学んだりしていきます。その過程の中にはたくさんの葛藤があり,自分自身と向き合う必要が出てきます。特に小学校時代は,大人の力を借りながら葛藤を乗り越えていきます。

 例えば,ギャングエイジといわれる中学年頃の子どもたちは,休み時間にドッジボールを楽しみ,そして,勝敗やルールについて全力をかけて揉めることがよくあります。揉めごとが大きくなれば,教員が間に入り,両者の言い分を確認し,次からはどうするのかなどという話をする時間を設けることも珍しくないことです。

 ドッジボールをはじめ子ども同士の様々な揉めごとの対応として,怒っていること,困っていること,嫌だったことなど気持ちや言い分を聞き,その解決策や支援策を一緒に考えていきます。しかし,障害のある子どもにとっての気持ちや言い分,その解決策や支援策については,一緒に考えてきたでしょうか。「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という合言葉を掲げ,「障害者権利条約」が2006年に国連で採択されてから20年近くがたちます。文部科学省による令和4年の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」によれば,小中学校における特別な教育的支援を必要とする児童生徒は8.8%でした。平成14年の調査では,6.3%という結果でした。

 障害や診断の有無にかかわらず,支援を必要とする子どもは増加しており,その子どもたちには支援を受ける権利があります。それは,大人が考え一方的に与えられる支援ではなく,本人が必要としている支援でなければなりません。

 子どもに関わる大人たちは,子どもの安心・安全・よりよい成長を願って,よかれと思うことを実践しています。子どもに近い存在ほど,子どものことをよく知っている,よくわかっていると考え,子どもの代弁者となっていくのです。

 人は,同じ言葉を聞いても同じように解釈しているとは限りません。よかれと思うことも人それぞれです。それは,子どもも同じです。大人がよいと考えた支援は,子どもにとってよいこと・うれしいことなのでしょうか。

 本書を手に取っていただいたみなさんは,きっと子どもの支援を考えようとしている方だと思います。これまでにも,いろいろな支援を考えてきた方が多いと思います。みなさんは,自分の考えた支援策が適切であったかどうかをどうやって振り返っているのでしょうか。子どもの変容を見つつ,支援の PDCA サイクルをつくっているのではないでしょうか。ぜひ,その PDCA サイクルの中に,子ども本人を登場させてほしいと思います。「子どもの思いを聞き,子どもとともに支援を考える。子どもが自分から支援を減らし,次のステップへと移行する。」それを実現するための最初のステップとして「本人参加型ケース会議」があると思います。実践事例の子どもたちの変容から「本人参加型ケース会議」の効果を実感していただき,一緒に実践していただければ幸いです。


   編著者 /冢田 三枝子

著者紹介

冢田 三枝子(つかだ みえこ)著書を検索»

横浜高等教育専門学校副校長

横浜市立小学校,特別支援学校,教育委員会に勤務。元横浜市特別支援教育研究会会長。校長時代は,特別支援教育を中心とした学校経営を実践。日本 LD 学会会員。特別支援教育士スーパーバイザー。公認心理師。

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※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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