- ■まえがき
- ■この本の使い方マニュアル
- ■五色百人一首とは?
- 指導案編 A
- @ 足曳の 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 独りかも寝む /柿本人麿(小倉百人一首 三)
- A 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし /壬生忠岑(三〇)
- B 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり /能因法師(六九)
- C 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき /猿丸大夫(五)
- D 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 /坂上是則(三一)
- E 寂しさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋の夕暮れ /良暹法師(七〇)
- F 鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける /中納言家持(六)
- G 君がため 惜しからざりし 命さへ 永くもがなと 思ひけるかな /藤原義孝(五〇)
- H 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを /源俊頼朝臣(七四)
- I 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ /僧正遍昭(一二)
- J 巡り逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな /紫式部(五七)
- K 和田の原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲ゐにまがふ 沖つ白波 /法性寺入道前関白太政大臣(七六)
- L 陸奥の 信夫もぢずり 誰故に 乱れそめにし 我ならなくに /河原左大臣(一四)
- M いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に 匂ひぬるかな /伊勢大輔(六一)
- N きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき 独りかも寝む /後京極摂政前太政大臣(九一)
- O この度は ぬさも取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに /菅家(二四)
- P 夜をこめて 鳥の空音は はかるとも 世に逢坂の 関は許さじ /清少納言(六二)
- Q 百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり /順徳院(一〇〇)
- R 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり /藤原基俊(七五)
- S 思ひ佗び さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり /道因法師(八二)
- 指導案編 B
- @ 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな /西行法師(八六)
- A 来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ /権中納言定家(九七)
- B もろともに あはれと思へ 山桜 花より外に 知る人もなし /前大僧正行尊(六六)
- C 音に聞く 高師の浜の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ /祐子内親王家紀伊(七二)
- D 高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ /前中納言匡房(七三)
- E 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ /待賢門院堀川(八〇)
- F かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを /藤原実方朝臣(五一)
- G 有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする /大弐三位(五八)
- H 恨み佗び 干さぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ /相模(六五)
- I 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに /藤原興風(三四)
- J しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで /平兼盛(四〇)
- K 風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな /源重之(四八)
- L 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む /中納言行平(一六)
- M 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ /文屋康秀(二二)
- N 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば /源宗于朝臣(二八)
- O 秋の田の かりほの庵の とまをあらみ わが衣手は 露にぬれつつ /天智天皇(一)
- P 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ /山部赤人(四)
- Q 筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる /陽成院(一三)
- R 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる /皇太后宮太夫俊成(八三)
- S 永らへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき /藤原清輔朝臣(八四)
- 指導案編 C
- @ 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山 /持統天皇(二)
- A 天の原 振りさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも /安倍仲麿(七)
- B これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 /蝉丸(一〇)
- C 住の江の 岸に寄る波 寄るさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ /藤原敏行朝臣(一八)
- D 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり /春道列樹(三二)
- E 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ /紀友則(三三)
- F 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける /文屋朝康(三七)
- G 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき /参議等(三九)
- H 由良の門を わたる舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな /曽禰好忠(四六)
- I 八重むぐら しげれる宿の 寂しきに 人こそ見えね 秋は来にけり /恵慶法師(四七)
- J 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ /大納言公任(五五)
- K 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 /小式部内侍(六〇)
- L 淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝ざめぬ 須磨の関守 /源兼昌(七八)
- M 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ /左京大夫顕輔(七九)
- N ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる /後徳大寺左大臣(八一)
- O 村雨の 露もまだ干ぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ /寂蓮法師(八七)
- P み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり /参議雅経(九四)
- Q 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり /入道前太政大臣(九六)
- R 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで ねやの隙さへ つれなかりけり /俊恵法師(八五)
- S 玉の緒よ 絶えなば絶えね 永らへば しのぶる事の 弱りもぞする /式子内親王(八九)
- 指導案編 D
- @ わが庵は 都のたつみ 鹿ぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり /喜撰法師(八)
- A 花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世に経る ながめせし間に /小野小町(九)
- B 和田の原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣舟 /参議篁(一一)
- C 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ /光孝天皇(一五)
- D 千早振る 神代も聞かず 龍田川 から紅に 水くくるとは /在原業平朝臣(一七)
- E 佗びぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ /元良親王(二〇)
- F 月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど /大江千里(二三)
- G 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今一度の みゆき待たなむ /貞信公(二六)
- H 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花 /凡河内躬恒(二九)
- I 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける /紀貫之(三五)
- J 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ /清原深養父(三六)
- K 忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の 惜しくもあるかな /右近(三八)
- L 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか /壬生忠見(四一)
- M 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは /清原元輔(四二)
- N 忘れじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな /儀同三司母(五四)
- O 安らはで 寝なましものを さ夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな /赤染衛門(五九)
- P 心にも あらで憂き世に 永らへば 恋しかるべき 夜半の月かな /三条院(六八)
- Q 夕されば 門田のいなば おとづれて 蘆のまろやに 秋風ぞふく /大納言経信(七一)
- R わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし /二条院讃岐(九二)
- S 世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手悲しも /鎌倉右大臣(九三)
- 指導案編 E
- @ 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな /藤原道信朝臣(五二)
- A 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに あらはれ渡る 瀬々のあじろぎ /権中納言定頼(六四)
- B 哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな /謙徳公(四五)
- C 逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり /権中納言敦忠(四三)
- D 逢ふ事の 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし /中納言朝忠(四四)
- E あらざらむ この世の外の 思ひ出に 今一度の 逢ふ事もがな /和泉式部(五六)
- F 今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな /素性法師(二一)
- G 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな /左京大夫道雅(六三)
- H 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ /崇徳院(七七)
- I なげきつつ 独り寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る /右大将道綱母(五三)
- J 名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな /三条右大臣(二五)
- K 難波江の 蘆のかり寝の ひと夜ゆゑ 身を尽くしてや 恋ひわたるべき /皇嘉門院別当(八八)
- L 難波がた 短き蘆の ふしの間も 逢はでこの世を すぐしてよとや /伊勢(一九)
- M 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ /周防内侍(六七)
- N 人も惜し 人も恨めし 味気なく 世を思ふ故に 物思ふ身は /後鳥羽院(九九)
- O 御垣守 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ /大中臣能宣朝臣(四九)
- P みかの原 わきて流るる 泉川 いつみきとてか 恋しかるらむ /中納言兼輔(二七)
- Q 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色は変はらず /殷富門院大輔(九〇)
- R おほけなく 浮世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖 /前大僧正慈円(九五)
- S 風そよぐ 奈良の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける /従二位家隆(九八)
- 資料編
- ■かるたの歴史
- ■和歌の修辞法
- ■高級な技法
- ■貴族のくらし
- ■貴族の役職と位
- ■六歌仙と代表的な歌集
- ■決まり字について
- ■かるたの遊び方
- ■五色百人一首をもっと楽しむために〜簡単なルールを覚えましょう〜
- ■参考文献・参考ホームページ
- ■あとがき
- ■索引
まえがき
平成二十年三月、文部科学省は新しい学習指導要領を告示し、これから先、二十一世紀の日本の教育を、何を重点にどのような方向に進めていくのか、について示しました。
詳しく見ていきますと、学校教育では各教科を通じて「言語力を育成すること」「語彙を大切にすること」を重点的に指導していくようになるのだということがわかります。
例えば国語科では、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」という内容が加わります。古文や漢文などをたくさん音読したり、古典についての本を読んだりして、昔の人のものの見方や感じ方を知ることのできるような子どもを育てる教育です。
つまり、この指導要領では、現代の文化は古くから伝承されてきたさまざまな文化の集大成だから、それをしっかりと受け止めて、次の世代につないでいける子どもを育てよ、という、時代の使命が謳われているのです。
今回、前著『授業で使える「五色百人一首」小話集』とともに、小学校の教室で「楽しい古典の授業」をするためのお手伝いをさせていただきたいとの思いから続編の執筆をしました。
前著では、それぞれの札のエピソードや、言葉にこだわったさまざまな知識、歌を作った歌人の経歴など、「ネタ話満載」をテーマに執筆しましたが、第二集の今編では「授業で使える」という部分にスポットを当て、「百首すべてを指導案形式でまとめる」というスタイルで構成しました。
国語や社会科だけではなく、理科、総合的な学習、道徳など、教科・領域を広く扱い、どの教科で、どの学年で行うと効果的かということを、指導案の最初に明記してあります。また、標準的とした学年以外で授業をする場合にも使える発問や、発展的に調べ学習をさせるときに課題として与えられる問題もたくさん載せてあります。
もちろん、前著同様に、一首で一ページという使いやすさは継続し、すべての歌の解釈と作者の紹介、さらには「五色百人一首」の試合をするときに役立つように、「札の読み方」も添えました。
歌の紹介のあとには、古典を理解する上で役に立つ常識や和歌の知識、かるた遊びのしかたなどを「資料編」として加えました。各ページはビジュアル面にも配慮してありますので、先生方が授業のネタ本としてお持ちになる以外に、教室の学級文庫に置いて、子どもたちに読ませても、楽しめることと思います。
最後になりますが、今回の続編の刊行にあたりましては、「五色百人一首」という素晴らしい教材を担当させてくださいましたTOSS代表の向山洋一先生、前編に続き再び執筆の機会を与えてくださいました明治図書の樋口雅子編集長、今まで十八年もの長きにわたり、本著の原点ともいうべき「五色百人一首小話」の連載をさせてくださいました『教育トークライン』誌編集部の皆様、そして、全力を挙げて共に執筆に取り組んだTOSS武蔵野の全メンバーに、心からの感謝を申し上げます。
TOSS五色百人一首協会事務局長 TOSS武蔵野代表 /小宮 孝之
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