- はじめに
- 本書について
- 低学年
- ステップ1 りずむに あわせて あいうえお
- ステップ2 あいうえおはいく
- ステップ3 五・七・五日記
- ステップ4 かるたつくり
- ■コラム1 言語感覚をみがく俳句指導
- 中学年
- ステップ5 名まえはいく詩
- ステップ6 季節を表すことば
- ステップ7 季語のある俳句
- ステップ8 五・七・五で季語のある俳句
- ステップ9 ま ね 俳 句
- ステップ10 俳句暗しょうあそび@
- *資料1 俳句暗しょうカード
- *資料2 一六の名句鑑賞
- ステップ11 具体的にする
- ステップ12 読み取りはいく――『白いぼうし』より――
- ■コラム2 これまでの俳句指導
- 高学年
- ステップ13 季語のイメージから――『ごんぎつね』より――
- ステップ14 カメラでパチッと
- ステップ15 楽しくいきいきと
- ■コラム3 綴り方教育と子ども俳句
- ステップ16 いつもの生活から
- ■コラム4 創作から鑑賞へ
- ステップ17 俳句暗唱あそびA
- *資料1 俳句暗唱カード
- *資料2 一六の名句鑑賞
- ステップ18 俳句かるたあそび
- ステップ19 読み手に想像させる
- ■コラム5 自己表現としての俳句
- ステップ20 句会をしよう
- *資料1 句会の流れ@
- *資料2 句会の流れA
- ■引用した俳句の出典
- ■子どもの季語集
- おわりに
はじめに
俳諧(俳句)は三尺の童にさせよ
松尾芭蕉のことばです。奇抜なことばの選択や巧みなことば遣いで俳句をつくるのではなく、子どもの純真な目で、素直につくるようにと教えています。
近ごろ俳句に取り組む学校が増えてきたので、芭蕉さんもさぞ喜んでいらっしゃることでしょう。子どもの俳句大会も盛んに行われるようになりました。入選した俳句を拝見すると、新鮮で潤いのある感性や驚き、純粋にものを見つめる姿に深い感動を覚えます。私も、子どもに俳句をつくらせることは、たいへん教育的意義のあることだと思うようになりました。
そこで、私は多くの先生に子どもに俳句をつくらせるようにすすめてみました。ところが、うまくいくとはかぎりませんでした。多くの子どもは俳句をどうつくっていいのかわからないようなのです。よくよく考えてみますと、俳句をつくらせる学校は多くなってきましたが、俳句のつくり方を教える学校はそれほど多くありません。これまでの国語科の教科書にも、名句を音読したり、鑑賞したりする内容がありましたが、俳句をつくろうという内容はあまりみあたらないのです。
私は、子どもに俳句のつくり方を教えなければならないと思いました。そこで、小学校低学年で、しかもはじめて俳句をつくる子どもでも、楽しく俳句づくりの学習ができるように、ステップを刻んだ本書のような指導を考えました。実際にこのような指導を繰り返すと、子どもは喜んで自分自身の発見やもののとらえ方を俳句のことば(五・七・五)で表現するようになりました。さらには、どこにでもある紋切型のことばで表現するのではなく、感性あふれる自分自身のことばで表現しようとするようになりました。
もっと具体的に述べると、次のようなことばの力を育てることができるのです。
・一音一音を大切にして表現することで、音節について正しく理解することができる。
・五・七・五という日本語のリズムを育てることができる。
・切るところ、つながるところなど、文の組み立ての基本を身につけることができる。
・「て・に・を・は」など、助詞の大切さを身に付けることができる。
・情景や気持ちにふさわしいことばを考える力を育てることができる。
・ことばを入れ替えることによって、適切な語を選ぶ力を育てることができる。
・身近なことばに関心をもち、季語などの語彙を増やすことができる。
・必要なことばだけを選び、ことばを省略する力を育てることができる……等
平成一六年二月の文部科学省文化審議会の答申で、「感性・情緒等の基盤を成す」ものとして、国語の重要性が述べられました。
さらに、新学習指導要領の施行に向けて、中央教育審議会は平成二〇年一月一七日に答申を発表しました。その答申の主な改善事項によると、国語科においては大きく次の三つが指摘されました。
@ 言語活動の充実
A 指導のプロセスの明確化
B 古典の指導の重視
これを受けて、平成二〇年三月二八日には新学習指導要領が告示されました。これによると、「国語」では、これまでの三領域一事項が系統的に整理され、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」のほかに、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」が新たに設けられました。特に、伝統的な文化の理解と伝承、新しい文化の創造・発展という立場から、小学校からも易しい古典(和歌・物語・俳句・漢詩)に触れることを勧め、五〇年ぶりに「俳句をつくる」という言語活動が掲げられました。
これからの時代に求められる国語の力を子どもに身に付けさせるための一つの方策として、今こそ俳句のつくり方を教え、俳句に親しませることが大切ではないでしょうか。この時、教師の誰もが、教室のどの子にも、手軽に俳句のつくり方を教えられるような手引き書が必要になってきます。そのために考案したのが本書です。多くの先生方に活用していただき、さらに工夫を加えていただければ幸いです。
/西田 拓郎
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