- はじめに
- Chapter1 特別支援教育の専門家が教師と相談するときに考えること
- 1 通常学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童と支援の現状
- @ 特別な教育的支援を必要とする児童とは
- A 通常学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童に対する支援の現状
- 2 専門家に相談する意義とその手続き
- @ 専門家に相談する意義とは
- A 専門家に相談するための手続き
- 3 特別支援教育の相談事例に専門家が向き合っていくために
- @ 筆者が学校現場に臨むプロセス
- A 学校現場をみるときの専門家の4つの視点
- B 相談事例の提示方法
- Chapter2 Before&Afterで学ぶ 支援が充実するための伝わるアセスメントシートの書き方
- A 衝動性に課題のある児童
- 1 注意されると気持ちが高ぶりトラブルになる小学1年生のミナト
- 2 細かく指示をしすぎるとイライラしてしまう小学1年生のヒロト
- 3 衝動的に動き,奇声をあげてしまう小学1年生のルイ
- 4 指や物をなめたり,上履きを脱いだりしてしまう小学1年生のハヤテ
- 5 落ち着きがなく,声を出し続ける小学2年生のユウマ
- 6 友だちの行動につられてしまう小学2年生のイツキ
- 7 自分の世界に入って学習に集中できない小学2年生のハル
- 8 嫌なことはやらないという態度を頑なに崩さない小学2年生のソウタ
- 9 負けてしまうと怒り出してしまう小学2年生のガク
- 10 変化に敏感で,周りの児童にちょっかいを出す小学2年生のタイセイ
- 11 物が机の周りに散乱する小学3年生のミナト
- 12 クラスの子どもを叩いたり,蹴ったりしてしまう小学3年生のタイガ
- 13 パニックになったときに自傷行為をする小学3年生のカナト
- 14 家でゲームばかりしている小学3年生のシュウ
- 15 集中して話を聞くことができない小学4年生のハルト
- 16 イライラすると周りの物を破いてしまう小学4年生のアオイ
- 17 最後までやり通さないと気が済まない小学4年生のダン
- 18 的外れな発言をすることで周りの目を引く小学4年生のユウト
- 19 しゃべりだしたら止まらない小学6年生のアオ
- B 気持ちの表出に課題のある児童
- 20 自分の気持ちを言葉にすることが苦手な小学1年生のアサヒ
- 21 朝の会や帰りの会のルーティーンができない小学1年生のヒナタ
- 22 マイペースで取り組みが遅い小学1年生のイオリ
- 23 運動面が苦手で,独特な身体の動かし方をする小学1年生のミク
- 24 気が乗らないと全く取り組むことができない小学2年生のアオイ
- 25 自己肯定感の低い発言が多くみられる小学2年生のハルト
- 26 同学年の友だちとのコミュニケーションがとれない小学2年生のユイ
- 27 分からないことがあると固まってしまう小学3年生のリツ
- 28 場面緘黙で表情の変化が乏しい小学3年生のレイ
- 29 自分の考えを伝えることができない小学4年生のソウマ
- 30 学校に行くことを渋りがちな小学4年生のナギ
- 31 当てられた途端に何をどう言うのか混乱してしまう小学4年生のリク
- C 学習面に課題のある児童
- 32 学習がなかなか定着しない小学1年生のソラ
- 33 漢字はできるのに,作文は一切できない小学1年生のアラタ
- 34 学習意欲が低い小学2年生のユイト
- 35 興味のない学習になるとトイレに行こうとする小学3年生のユウ
- D 教師のかかわり・連携に関する困難
- 36 どこまで個別の指導をすればよいのか悩む小学1年生のレン
- 37 保護者との連携が取りづらい小学2年生のカエデ
- 38 主治医との連携が取りづらい小学2年生のリツキ
- 39 担任に甘えてくる小学3年生のサク
- 40 自分のことは自分でできるようになってほしい小学3年生のフウマ
- 41 行動が幼く感じる小学4年生のヤマト
- 42 個別指導をしてほしくないと保護者が希望する小学5年生のアオト
- Chapter3 教師と専門家との協働による特別支援教育の充実
- 1 児童の立て直しを支える
- @ 42の相談事例の特徴
- A 自己肯定感/自己否定感と発達特性との関連性
- 2 児童の立て直しを支える3つの観点と6つのアプローチ
- @ 深い児童理解に基づく支援
- A 担任だからこそできる多様な支援
- B 学校内外の環境を活かした支援
- C まとめ
- 3 特別支援教育の専門家と相談していくときに求められる記録
- @ なぜ記録の充実が必要なのか
- A 専門家と相談していくときに求められる記録
- 引用・参考文献
- あとがき
はじめに
本書は,小学校の通常学級に在籍している教育的支援を必要とする児童を担当する担任はじめ教師が,特別支援教育の専門家と相談していくときに,どのような記録を専門家に伝えていくと,児童にとってより生活のしやすい学校になっていくのか,支援がより充実していくのかを考える1冊になっています。
筆者は専門家チームの1人として各地域の様々な学校現場を訪れ,幼稚園・小学校・中学校で延べ300人近い支援を必要とする児童の相談を行ってきました。その中から小学校の事例42ケースを提示し,支援を考えていくためのテーゼを示しています。さらに,このテーゼをカテゴリー化し,専門家との相談で活用できる3つの観点と6つのアプローチを提唱しました。
学校現場で実際にあったリアリティーのある相談事例を基にしましたので,特別支援教育に携わる先生方にとって,これからの支援のヒントになるものをたくさん見つけていただけるのではないかと期待しています。
また,特別な教育的支援を必要とする児童への支援の中心的な役割を担っている担任のみなさんが,1人でその負担を背負いすぎることなく,専門家と一緒に支援を考え,相談していくためにはどうしたらよいのかも解説しました。専門家が学校に巡回し,対象となる児童の支援について検討する機会をつくってこそ,真に求められる児童に対する支援になっていくとともに,学校というチームとしての対応ができることにつながっていきます。
第2章の事例については,最初からでも興味あるところからでも読み進めていただければと思います。また,カテゴリーに基づき,みなさんが出会った児童に近い事例から読み進めていただいても構いません。みなさんがこれまで出会ってきた,特別な教育的視点が必要な児童と重なるケースも多くあると思います。実際の相談事例に基づいて導き出されたテーゼやアプローチであり,みなさんがこれから出会う児童への支援に役立つ視座となるはずです。
2024年3月 /勝浦 眞仁
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- 明治図書