- はじめに
- 第1章 1年生担任になったら… 特別支援教育の基本姿勢
- 1年生の発達とそのままの受け止め方
- 1年生の子どもたちへの接し方
- 「苦手さがある」と引き継ぎを受けた子どもへの配慮点
- 学年・学校で見守り,育てるチーム支援
- 第2章 どの子も安心できる 入学式・学級開き
- 【入学式までの準備】
- 信頼関係を形づくる 「名前」確認という最初の支援
- 明日から来るのが楽しみになる 学級開きに向けた教室環境づくり
- 学年団の思いを伝える 学年だより第1号
- 一人一人を大事にする 特別支援学級や通級指導教室との連携
- 保護者の安心が子どもの安定につながる 前日リハーサル
- 事前打ち合わせで迷わずに対応できる みんなで迎える新入生
- 学校生活に希望がもてる 入学後1週間のスタートカリキュラム
- 【入学式当日】
- 安心して入学式に参加できる 入学式前の活動プログラム
- 担任と学校イメージを決定づける 楽しくわかりやすい担任の話
- 第3章 4月,学校に慣れる 安心プログラム
- 【最初の1週間】
- 楽しく挨拶・返事が身につく 挨拶競争・お返し返事
- やって見せて手順を示す 朝の支度から提出物のルールまで
- みんなにわかりやすい 靴箱・傘立ての使い方
- 使いやすく片付けやすい 荷物のしまい方
- 不安を軽減する 小学校のトイレの使い方
- きれいで,混雑を回避できる 流しの使い方,並び方
- 確実に家庭へ届ける 「1枚とって,はい。どうぞ!」
- 見通しをもっていっぱい遊べる 休み時間コーディネート
- 物を大切にする心が育つ 忘れ物ゼロ作戦
- 学校の一員として約束を守れるようになる 忍者作戦!で気づかれずに移動
- 公的なマナーやケガへの対応を学ぶ 職員室や保健室に行く時の心得
- 自力通学の力をつける コース別集団下校
- 【4月中】
- みんなの力で楽しい学級をつくる 日直・係・当番活動
- 学級への所属感を高める 朝の会メニュー
- 体操服の入れ替わりを防ぐ 座って着替え!
- 一人一人の役割を明確にする 給食準備・配膳
- おいしく食べてごちそうさまができる 給食―マナー・片付け
- 自分の役割がわかる 清掃活動
- 自信をもって取り組める 清掃の進め方・道具の使い方
- やさしい言葉で心地よい体験をする 「ことばはこころ」ふわふわ言葉
- 困った時に助け合えるようになる SOS言葉
- 今日に満足,明日が楽しみになる 帰りの会の振り返り
- 第4章 どの子も包み込む 授業づくり
- どの子も包み込み一人一人を確かに支える ユニバーサルデザインと合理的配慮
- 目で見て確認できる 授業の準備・片付け
- 授業づくりのはじめの一歩を固める 聞くこと名人
- 鉛筆・消しゴムの使い方がわかる ピーちゃんとハンドサイン
- 黒板を写せるようになる ノートに合わせた板書計画
- セルフチェックできる 立ち方・座り方の合言葉
- みんなが安心して参加できる 発表の仕方・聞き方・言葉遣い
- 先生やお兄さんお姉さんとつながる 学校探検のリアル・アイデア
- 第5章 全員楽しく参加できる 行事指導
- 事前準備で安心感を高める 学校デビュー「1年生を迎える会」
- 見える化とスモールステップで参加しやすい 運動会当日と練習時の配慮点
- 不安が強い子どもが安心できる 校外学習の事前学習
- 不安が強い子どもが安心できる 避難訓練の事前学習
- 楽しかった,よかったと思える お楽しみ会
- 第6章 不安を信頼に変える 1年生保護者との連携アイデア
- 信頼関係を築く 連携ポイント&注意点
- 保護者からの信頼を得る 花丸連絡帳&メッセージ電話
- 事前準備が功をなす 家庭訪問と個別面談
- 勉強への意欲と自主学習の姿勢を高める 日頃&夏休みの宿題
- 子どもを思う気持ちは同じと確認できる 初めての保護者会・授業参観アイデア
- 引き分けで円満解決できる 粘り強さと寄り添う姿勢のクレーム対応
- 第7章 こんな時どうする? トラブル解決術
- 初めての健康診断 怖がる子どもがいる時
- 夏休み前 困っている子どもが見えてきた時
- 子ども同士のトラブル 興奮して保護者が来校してきた時
- 子どものSOS 登校しぶりが見られた時
- 1人1台端末 タブレットで支援の幅を広げたい時
はじめに
○ランドセルを背負うこと!
就学時健診の頃,年長さんの担任の先生が子どもたちに「小学校に行ったらやりたいことは?」と聞くことがあります。絶対的で不動の第1位は「ランドセルを背負うこと」,第2位は「勉強」…が多いとのことです。そして,いよいよ「学校ごっこ」のような遊びが展開され,小学校入学へのイメージを高めていくのです。
1年生が背負うランドセルには小学校生活へのちょっぴりの「不安」とたくさんの「夢・希望・期待」が詰まっています。
○1年生の担任になりたい!
小学校教諭を希望する学生に「何年生の担任になりたいですか?」とアンケートをとると,「1年生!」という回答が第1位になります。学生の心の奥底にも,小学1年生の頃の「ワクワク」「ドキドキ」とした思いが刻み込まれているのだと思うのです。
子どもたちの少し「先」を「生」きる,人「生」の「先」輩としての「先生」という職業の魅力の源・原風景がそこにあるのかもしれません。
○12%という衝撃
「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(文部科学省,2022)において,知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すとされた小中学校における児童生徒数の割合は推定値8.8%と報告されました。しかし,この調査を小学1年生だけに限ると「12%」になるのです。
子どもたちの夢や希望の実現のために,学校として,小学1年生の担任としてなすべきことを,この機会に改めて見直す必要がありそうです。
本書は上述の状況も踏まえ,次の特徴を備えた構成になっています。
○担任になった次の日から「時系列」で
入学式まで何を? 入学式から1週間は? 4月中に…!? 「いつ,何を,どうするのか…」という具体的な準備の内容と手順をできるだけリアルに,時系列で再現しました。
○学校生活の場面別に「辞典的」に
1年生の子どもにとっては「朝の支度」も「トイレ」も「給食」も「清掃」も…「初めて」のことばかりです。戸惑いと不安がいっぱい! 本書では1年生の目線で学校生活の様々なシーンをイメージし,担任としての支援の工夫について具体的に提案しています。
○特別な支援を必要とする子どもも「包括的」に
本書では,特別な教育的支援を必要とする子どもも包み込み包括するユニバーサルな発想で各項目の内容を検討しています。あわせて,個別の合理的配慮が必要な子もいますので,必要に応じて,そのアイデアも添えるようにしました。
本書をいつでもサッと手にとれる職員室の机に置いてください。年度当初だけでなく,「こんな時は?」と思った時にも役に立てるはずです。
1年生の担任の仕事量は多く,特に,入学式前後と1学期は大変です。しかし,ピカピカの1年生とキラキラと輝くような楽しい毎日を過ごすことができるのは,1年生の担任ならではの特権です。その意味で,とてもやりがいのある学年です。本書がその手助けになることを心から願っています。
編著者 /佐藤 愼二
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- 明治図書