- さぁ,学級づくりのスタートダッシュを決めよう!
- 第1章 こうすれば絶対うまくいく! 学級開き成功のポイント
- 1 優先順位を誤らないこと
- 2 学級の成長段階から見る初日に大切なこと
- 3 求められる自治的集団づくり
- 4 出会いの日の教師のリーダーシップ
- 5 「楽しく」よりも「温かく」
- 第2章 春休み〜新年度1週間の動きがすべてわかる! 学級担任の新年度の仕事一覧
- 1 3年生担任の仕事
- 2 4年生担任の仕事
- 第3章 小さな工夫が大きな差を生む! 学級開きを成功に導くアイデア
- 1 「学級目標」のアイデア@
- 2 「学級目標」のアイデアA
- 3 「自己紹介カード」のアイデア@
- 4 「自己紹介カード」のアイデアA
- 5 「おたより・予定表」のアイデア
- 6 「給食当番」のアイデア
- 7 「掃除当番」のアイデア
- 8 「係活動」のアイデア
- 9 「学習ルール」のアイデア
- 第4章 子どもの心をガッチリつかむ! 出会いの日の教室トーク
- 1 先生は,3つのこと以外では叱りません(3年)
- 2 90点の子をほめず,70点の子をほめます(3年)
- 3 手と手を合わせて,友になる(3年)
- 4 10秒で10問,はじめはできなくて当たり前です(4年)
- 5 エジソンは何回ぐらい失敗したでしょう?(4年)
- 6 人はそれぞれ違うものです(4年)
- 第5章 クラスがギュッとまとまる! 学級づくりのゲーム&アクティビティ
- 1 学級開き当日にできる短い活動@(3年)
- 2 学級開き当日にできる短い活動A(3年)
- 3 友だちづくりや学級づくりの活動@(3年)
- 4 友だちづくりや学級づくりの活動A(3年)
- 5 友だちづくりや学級づくりの活動B(3年)
- 6 学級開き当日にできる短い活動@(4年)
- 7 学級開き当日にできる短い活動A(4年)
- 8 友だちづくりや学級づくりの活動@(4年)
- 9 友だちづくりや学級づくりの活動A(4年)
- 10 友だちづくりや学級づくりの活動B(4年)
- 第6章 クラスがどんどんうまくいく! 学級づくりの工夫&アイデア
- 1 「学級目標づくり」の工夫&アイデア
- 2 「朝の会」の工夫&アイデア
- 3 「給食当番」の工夫&アイデア
- 4 「掃除当番」の工夫&アイデア
- 5 「係活動」の工夫&アイデア
- 6 「帰りの会」の工夫&アイデア
- 7 「学級通信」の工夫&アイデア
- 8 「連絡帳」の工夫&アイデア
- 9 「はじめての保護者会」の工夫&アイデア
- 第7章 パッと使えて効果絶大! 達人教師の学級開き小ネタ集
- 1 3年生の小ネタ集
- 2 4年生の小ネタ集
- 第8章 「今すぐ何とかしたい!」を素早く解決! 学級開きの悩みQ&A
- 1 役割分担に時間がかかってしまいます…
- 2 持ち上がりで学級開きに新鮮味がありません…
- 3 学級開きに使える時間が足りません…
- 4 学級通信に何を書けばよいかわかりません…
- 5 発達障がいの子の支援に必要な準備は…
- 6 子どもが前学年のことにこだわります…
- 7 学級の雰囲気がとても暗いです…
- 8 学級編成に保護者からクレームが入りました…
- 9 わがままが目にあまる子がいます…
さぁ,学級づくりのスタートダッシュを決めよう!
「学級開き」をイメージすると,いつも,はじめて教師になったときの学級開きを思い出します。最初に担任したのは4年生でした。その日を少しでも印象的なものにしようと,目一杯準備して教室に入りました。テンションを高めて教室に入り,自分の名前を力強く黒板に書き,ギターを弾きながら歌い,ハンドスプリング(体操の技)まで披露しました。子どもたちは笑顔を向けたり,拍手をしてくれたりしました。その日の評判は上々で,4月後半から行われた家庭訪問では,「始業式の日は,『楽しそうな先生だ』と喜んで帰ってきた」と多くの家庭で言われました。ガッツポーズをして帰ってきた子もいたそうです。しかし,その後が順風満帆だったかというと,そんなわけがありません。現実の厳しさを知ることとなりました。
さて,本書は中学年版です。学校事情から比較的若い先生が中学年を担任することが多いようです。この時期は,「9歳の崖」「10歳の壁」という言葉があるように子どもたちが急激に成長する時期でもあり,また,様々な葛藤を迎える時期でもあります。低学年のようでありながら,そうではない,かといって高学年でもない,といったとらえにくい時期だといえるでしょう。3年生進級時にクラス編成替えをする学校も多く,低学年のときは特に気にならなかった子どもたちが,3年生になって学級崩壊のような状態になったと報告される例も少なくありません。
読者である先生方はよくご存知だと思いますが,低学年のときは,特に算数などは丸暗記や見ればすぐ解けるような問題だったのが,3年生くらいから複雑になり,抽象度が高まり,思考力が必要となってきます。つまり,学習の難度が増し,学力差が大きくなってくるころです。また,この抽象思考ができる能力は,子どもたちの内面に劇的な変化を起こします。大人は,自分の中にもう1人の自分がいて,自分を客観的に見ています。いわゆるメタ認知能力をもっている状態です。9歳から10歳の頃に,多くの子どもたちがこの能力を獲得します。自分を相対化することが可能になるので,他者との比較も可能になります。だから,秀でたいとがんばる一方で,自分はみんなよりも劣っているなどのことも認知できるようになります。勉強ができなくなることが,自尊感情にダメージを与えるようになるわけです。
抽象的思考は論理的思考力も高めます。また,時間感覚も正確に認知するようになります。すると,教師の発言に対して「〜ということは,〜ってなるから,先生の言っていることはおかしい」とか「前に言ったことと違うじゃん」などと,考えることができるようになります。低学年のときまでのように,頭ごなしの指導は難しくなります。
そして,最もよく知られた変化は「ギャングエイジ」という言葉に象徴されるように,社会性が育ってくる時期で,不特定多数の仲間をつくり始めます。前に述べたような他者比較による劣等感や,逆の優越感が生まれてくるのも社会性のなせる技だと考えられます。学級集団づくりとしては,仲間づくりが成功すれば,クラスのまとまりができて低学年までにはなし得なかったダイナミックな活動が可能になります。しかし,一方で荒れるときは「徒党を組む」ような状態になり,組織性が出てきます。低学年のときのような,なんだかわけのわからない混沌とした状態と違って,集団で1人をいじめたり,また,集団で教師に反抗したりするようなこともやってのけるようになります。
人の発達において中学年は大きな成長を遂げるときです。あどけなさと大人っぽさが入り交じった,とても魅力的な時期だとも言えます。教壇は選ばれた者だけが立てる舞台です。ぜひ,学級担任を楽しんでもらいたいです。学級開きだけで1年が決まるわけではありませんが,あなたの教育観が表出する日でもあるでしょう。よい出会いとなることを願っています。
2018年2月 /赤坂 真二
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- 明治図書
- 学級開きについて詳しく書かれていたので、とても参考になりました。2024/2/2240代・小学校教員