授業のための全発問16授業のための全発問 (16) 小学6年・文学教材川とノリオ・野ばら

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「川とノリオ」(府川源一郎),「野ばら」(井上一郎)の2編について授業のための発問・指示を徹底究明し,誰にもわかりやすく使えるよう明示。


復刊時予価: 2,618円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-344810-7
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 168頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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はしがき
川とノリオ(小学六年教出・日書)
1 教材本文
2 教材のねらい
3 文章構成
4 指導目標
5 指導計画(8時間)
6 全発問・全説明・全指示、および授業記録
第一時 興味を持って、全文を読ませ、学習のめあて(課題)を考えさせる
第二時 プロローグから川のイメージ化させる <早春>からノリオと川のかかわりの始まりをイメージ化させる
第三時 「*」(秋の章)から、父ちゃんと母ちゃんの心情や、ノリオの様子を読みとらせる
第四時 <また早春>の場面の、川で遊ぶノリオの様子を読みとらせる
第五時 <夏>からノリオの生活の変化を、<8月6日>からノリオの様子を読みとらせる
第六時 じいちゃんと二人きりになったノリオの生活を読みとらせる。/じいちゃんの悲しみを想像させる
第七時 ノリオの青い世界の意味を読みとらせ、さらにノリオの現在の気持ちを考えさせる
第八時 川とノリオとの関係を考えさせ、全体のつながりを考えながら朗読させる
7 全発問・全説明・全指示・授業記録の成果と反省
野ばら(小学校六年光村)
1 教材本文
2 教材のねらい
3 文章構成
4 指導目標
5 指導計画(10時間)
6 全発問・全説明・全指示、および授業記録
第一時 作品と出会わせ、第一次の読みを形成させる
第二時 第一次感想文を記述させる
第三時 第一次感想文を交流させ、一人一人の読みを広げさせる
第四時 作品全体の構成と国境を中心に状況を捉えさせる
第五時 戦争前の二人の登場人物について考えさせる
第六時 戦争勃発による二人の登場人物の変化を考えさせる
第七時 二人を象徴する夢や野ばらについて話し合わせる
第八時 個別の読みとなる第三次の感想文の構想メモを書かせる
第九時 第三次感想文を記述させる
第十時 第三次感想文を交流し、作品との対話を終えるとともに、自己の読みについて考え直させる
あとがき

はしがき

 このたび、市毛・渋谷の共同編集による『授業のための全発問』を刊行し、識者の批正に待つことになった。私どもは、すでに『授業のための教材分析』(1983年)を世に問うた。それは一遍の教材全部についての授業を強く前提にした教材分析を志したものであった。世には教材研究という名の、その実は作品研究そのものが少なくなかったので、あえて「授業のための〜」と銘打つ必要があったのである。ついで私達は、『読み深める授業分析』(1987年)を世に問うた。その時点においては、一編の教材についての全授業記録がないことに授業研究の一つの隘路を痛感していたのである。三度めのこのたびの講座も、前二度の講座の趣旨との関連のもとに構想されたものである。

 昨今では、授業研究の成果が、1950年代とは比較にならないほどに、実践的のも理論的にも多様に行われている。その結果の一端として、質の深まりにかかわる実践的、理論的に克服すべき問題点も明らかにされつつある。質の高い授業の成立の契機としては、授業者の深くて広い教材解釈、児童生徒の学習状況の把握、授業展開上の技術、学級経営のあり方など、いくつか事項があり、それぞれ相互に重要である。ただし、授業の研究においては、諸契機を同時に追究することは不可能である。

 そこで、私達は、文章の読解指導における発問づくりを吟味して(児童に問いかける話ことば通りの形に作って),当該教材の読み取りに必要な発問を順を追って配列して、各発問に、その意味についての解説を付して提示したいと考えた。質のよい発問とその組み立て如何が授業の良し悪しを左右する最も重要な契機であると考えるからである。

 例えば「ごんぎつね」(新美南吉)や「せんこう花火」(中谷宇吉郎)の読解(読み)の授業においても、授業者とABとCとでは、それぞれ担任の学級経営の相違に基づく教室の《雰囲気》の違いがあるし、三人ともほぼ、同等の学力と能力があるとしても、教材解釈のあり方も、発問の配列の順序も微妙に異なるので、授業そのものはそれぞれに異なった様相を呈する。もちろん、違いのあること自体はよいのだが、それは、授業者AとBとCにおいて、大部分の所が共通していて、部分的に相違点があるという状態であることが望ましい。授業の現代化という名の画一化や、客観的で追試に耐える教材分析という名の形式化に傾く共通点の拡大は好ましくないし、さりとて、矮小化された読者論の適用による、読み手主体の尊重という名の恣意的な相違点の協調も好ましくない。

 私達は、このシリーズにおいて、授業のための発問を提供して、画一的な対応を強いるつもりはない。同一教材による授業において、どの程度まで共通な発問が可能かについて、一つの問題を提起したいのである。私達が、授業の研究会や他の学校の授業を見に行くのも、まさにここに問題があるからである。これは、よい授業をするための、同時に授業研究上焦眉の問題である。

 本講座の執筆上の基本的な方針については「執筆要項」に示した。その点においてどの巻も、構成と展開において同一の講座と解釈しての秩序を保っている。ただし、教材解釈の立場、ひいては発問作りの立場については、各担当者の考え方に委ねた。したがって、補助資料をたくさん使った単元学習形態のもの、読者論の立場を意識的に加味したもの、分析批評の立場がよく出ているものなど、顕著な特色の表れているものがある。その評価については読者に委ねたいと考えるものである。

 なお、各発問・指示、などの記録には、筆者注の間の随所に市毛、渋谷がそれぞれの責任おいて授業上の一つの問題と考えらえれる所に、注をつけた。広く批正を得たいと考えたのである。これは、授業者や授業の共同研究者との、当初からの合意の許に行ったものではない。発問のあり方や授業記録の読み方についての多様な見方のあり得ることについて、随所に一つの立場を示した。編者の非力をためらいながらも、敢えてこのようなことを試みたのは、読者からも、執筆者、共同研究者からも、批正を得たいと考えたからである。指導者の助言とは全く違うものであり、講座の編集者としてのあり方のひとつの表明の試みのつもりである。

 これまでの講座と同様に、今回の試みについても批正をいただけるならば、授業記録の執筆者、協力者ともども、まことに有難いことである。


  平成二(1099)年四月一日   /渋谷 孝 /市毛 勝雄



 次の執筆要項は、編者において、各教材の担当者にお願いしたものである。読者において、私達の立場を理解していただく一助にと、その要項について掲載いておきたい。


【執筆要項】


T 一編の教材について、読解指導のための全時間の授業のための発問を作る。その発問は児童に話しことばで問いかける形にすること。発問をつくるためには、当然綿密な教材研究が必要であるが、本講座では、教材研究を主とするものではないので、教材研究上の解釈ないし分析については記述しない。ただし、発問の一つ一つに、その発問の趣旨についての解説をつけているので、そこに教材研究上の立場の一端は現れることになる。


U 教材解釈をどんなに深く行っても、その発問がどんな授業者にもそのまま使えるとは限らない。また、熟達した授業者が作った発問でも、それを使って自分の学級で授業をして、授業が成立するとは限らない。しかし、授業者が異なり、児童生徒の状況が異なっていても、教材が共通である限り、教材の本質と深く関わる発問は、必ず、どんな立場の授業者にも相当に使えるものがあり得ることもまた事実である。そういう発問を作ることを目指し、それを基本発問と呼ぶことにする。私達がこの講座で作った発問が、みな優れた発問だというつもりはないが、多くの授業者の吟味によって、同時に識者の批正によって、より優れたものを作っていく一つの段階にしたいと考えるものである。


V 基本発問の作り方


@ 教材の文章から、問題とすべき箇所を選定する。

A 発問のねらいを絞る。

B 発問の科白(台詞、せりふ)を決める(児童に向って問いかける通りのこ  とばにする)

C 解答の文言(ことば、文章)を決める。

D 正解の範囲を決める。


W 基本発問と補助発問

 基本発問はゴチックで示すことにする(具体例参照)。また、基本発問だけをいくら並べても授業を展開することはできないので、補助発問も組み入れることにする。


X 全時間の発問のうち、執筆者において任意の一時間分の授業記録を載せることにする。それは、基本発問および補助発問が、実際の授業において、どのように生かされ、また生かされないものかについての一つの姿を示したかったからである。


Y なお、本講座の発問づくりの立場については、全巻統一の立場をとっている。ただし、発問づくりの考え方については、特定の統一的な立場をとってはいない。それぞれの授業者と協力者の考え方に委ねている。従って、はしがきに述べてあるように、趣の違ういくつかの立場を窮うことが出来るであろう。読者において判断し、吟味してもらいたいと考えるものである。

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