わかる板書で読解力を高める 中学校

わかる板書で読解力を高める 中学校

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これからの時代に求められる読解力の提言と授業例

「教える板書から学ぶ板書への改善」を解説。特に学習者による価値の意識化から活用の工夫へ、黒板の枠を広げるメディアの活用を紹介。さらに探求力を培う板書の書き方を示す。黒板はみんなの広場と主張する改善例や生徒と共に作る文書など新しい例を提案。


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ISBN:
978-4-18-341415-1
ジャンル:
国語
刊行:
3刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 132頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 序論・わかる板書で読解力を高める
――新しい視点に立つ板書活用の提言―― /須田 実
一 板書活用の目的・機能の意義
二 板書活用の具体的機能
三 読むことの学習における基本的な板書事項(教える板書から学ぶ板書への改善)
四 板書の構成を工夫する(学習目標・内容によって構成を工夫することができる)
五 これからの読む力を高める「PISA型」の読解能力の育成
六 社会生活に生きて働く読解力を高める板書活用の改善
U 提言・わかる板書で読解力を高める指導の方法
1 要点が整理された板書を /松野 洋人
一 生徒にとって板書とは
二 授業準備の中核に板書計画を
三 生徒とともに作り上げる板書
2 学習者による価値の意識化から活用の工夫へ /櫻本 明美
一 学習者に意識化を図る問いかけを
二 「読むこと」の板書における留意点
三 黒板の枠を広げるメディアの活用
3 伝え合う学習の出発点として、板書を活用し、読みを深める /相木 英理子
一 はじめに
二 なぜ、プリントではなく、黒板なのか
三 情報の控えを活用した小さな工夫
4 授業を演出する板書の工夫 /中林 郁郎
一 板書と教材・教具
二 PISA調査から明らかになった「読解力」の課題
三 これからの板書
5 探求力を培う板書の書き方 /中島 弘道
一 思考する道筋を板書で構造化する
二 探求力を培うための板書構造モデル〜「故郷(魯迅)」(光村図書中学三年)から〜
三 板書のキーポイント
V授業実践による提言・わかる板書活用で読解力を高める
1 個に応じた読みの態度を育てる説明的な文章の授業 /田中 詠
一 単元名
二 目標
三 指導方針
四 指導計画
五 本時の板書と学習活動
2 文章の展開をとらえる学習
〜文章をランキングする実践〜 /高橋 伸
一 題材名
二 学習目標・内容
三 指導計画(三時間扱い)
四 授業の実際
五 実践を終えて
3 直線的な思考から豊かな思考の空間を生み出す /渡邊 洋子
一 教材名・目指す言語能力
二 指導の内容と教材とのかかわり
三 指導目標
四 指導計画・評価計画
五 本時の展開
六 生徒のまとめた文章から
七 授業を終えて
4 要約の達人になろう!
〜文書の展開に即して的確に要約する力をはぐくむ〜 /村田 伸弘
一 はじめに
二 題材名
三 学習指導内容と教材とのかかわり(教材観)
四 学習指導の方針及び配慮事項
五 指導の目標・評価規準
六 学習指導計画(六時間予定)
七 板書の実際と指導のポイント
八 おわりに
5 身近な情報文・新聞記事から様々な「ひと」の生き方を知ろう /鈴木 佐紀子
一 単元
二 目標
三 評価規準
四 学習指導計画(全六時間)
6 「夏の葬列」の彼を裁く
〜行動と感情を確かめるため、述部に注目して読む〜 /渡辺 節子
一 はじめに
二 板書による「単純化」
三 授業の方法
四 方向を定める〜「許せるかどうか、そう考える根拠は何か」を考え始める〜
五 論点の単純化〜「言葉」に焦点をあわせる〜
六 学習の成果の交流の場としての板書
七 おわりに
7 生徒とともに作る文書 /森川 敬三
一 中学二・三年生における説明的文章の読解
二 本教材の板書に対する基本的な考え方
三 指導の実際
四 考察
8 「文学体験する」板書で読解力を身につける
〜〈空所〉を補充する体験で自己を関わらせる読みを〜 /大日方 信康
一 「文学体験」とは
二 今の子どもたちに欠けているもの
三 指導の実際
9 黒板はみんなの広場だ
〜書き手の論理の展開の仕方を的確にとらえ、内容の理解や自分の表現に役立てることを目指して〜 /中山 敦
一 黒板はみんなの広場だ
二 授業実践例
三 実践の評価のポイントと課題
10 情報(音声教材)を理解し整理するための板書指導
〜目的をもって様々な文章を読み、必要な情報を集めて自分の表現に役立てるための指導方法の工夫〜 /宮ア 潤一
一 はじめに
二 生徒の実態と学習活動
三 成果と今度の課題

まえがき

 本書『わかる板書で読解力を高める』(全四巻)は、これからの読解力の在り方を改善し、「社会生活に生きて働く国語力の伸長を図る」ためのもので、読解理念の研究と実践研究による提言・授業例を掲示したものである。

 かつての読解は、昭和三〇年以降になって定着したと考えられる。その背景には、昭和三〇年の学習指導要領における系統的・段階的な言語技術の修得への志向があったからと言える。この読解力は主として文学教材の指導に多用され、文章の一言一句をゆるがせにせず、表現者の内奥にある意図や思考をとらえようとすることを根本的な態度としていた。そして授業は教材文の分析的解釈に偏した国語科の授業であった。

 このような読解は、古来から古典における偉人・聖人の文献を学ぶ方法を継承した読みであり、まさに読んで解釈することを前提にした教師主導の授業であった。しかし、その後は「読解」も「読むこと」と改められ、今日に至っているという経緯がある。

 ところが、現状において再び「読解」という語が話題となっており、文部科学省からも「読解力向上に関する指導資料」(一七年一二月)が公刊されたことにより、「読解」についての研究・実践が行われる状況となっている。そして、教育課程部会審議経過報告(一八年二月一三日)には、「子どもの社会的自立、職業的自立を重視し、社会の側からの視点や国際的な通用性」を考え、学習指導要領の改善について検討していくこととなっている。

 このような教育改善における国語力の育成に関する「読解力」は、必然的に新しい発想により、改善する方向になってきている。

 このような改善の動きは、OECD(経済協力開発機構)「生徒の学習到達度調査」(PISA)による検討が行われた結果が大きな要因となっていると考える。中央教育審議会は、「新しい時代の義務教育を創造する」(一七年一〇月二六日)を出したが、その中で「国語力はすべての教科の基本となるものであり、その充実を図ることが重要である」と述べ、「学習指導要領の見直し」を提示している。

 国語力の内容には「思考力」「読解力」「表現力」が重視されており、PISA調査の定義である「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」としている。

 右の「読解力」は、「効果的に社会に参加する言語の活用力」として考える学習改善をすることが求められている。こうした「読解力」を高めるには、実践指導の在り方として「どうすればよいのか」を考えなければその具現化を図ることができない。どのようなすばらしい教育理念であっても、学習者の国語力をつける教育での学習の仕方が問われなければならない。

 本書『わかる板書で読解力を高める』は、実践における学習で「わかる板書活用による」を考え、提言したしだいである。板書は「学習目標」を明確にするための「伝え合い・考え合う言語活動」の成果を明示したり、目標を到達するための学習状況をわかりやすく示し、次の授業展開につなげる効力がある。学習状況を評価する「学習意欲」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の観点等の評価のメモ・記録などが「即時的に学習者全員にわかる」ように示すことができる。学習プリントなどではなく、学習状況の「即時性・具体性」を生かすことができる。また、学習者の「とまどい、迷い、悩み、不安感」などを瞬時に書いてわからせることが可能である。

 わかる板書活用は、「わかることによって次の活動や思考が可能となる」からである。「わからない」と、次の行為ができないのが当然なのである。「学習状況の流れの中でおぼれている子どもに活力をつける指導」が必要である。

 また、思考力の指導においては、問いを板書し、その問いに応じられるように板書を活用することも有効である。問いがなければ考えようとしないのは学習する子どもばかりではなく、どの人もそうである。「教えるより、学ぶ学習」の方法がとれる。問題を考えて解答する活動は活力の出る学習となり、熱中する学びとなるのだ。

 板書は国語科学習だけではなく、全ての教科等の学習で活用されており、学習ノートと板書、発問と板書、問題解決のための板書等、学習状況の展開ケースに子どもたちは親しみをもっており、板書による導入・展開・終結の構成を体験的に知っている。また、教師が板書するだけではなく、自分たちも板書する学習活動をもっている。

 読解の基礎・基本の学習における「語と語、文と文との関係」「漢字の読み書き」「段落相互の関係」「論理的表現の方法」「感想・意見の発表」「情報の活用」「想像しながら読む」「読んで話す」「読んで書く」など、多様な国語力の学習を体験している。これらの体験に加えて、PISA型の「読解力」の学習が新しく学べるならば、読解力の社会に生きる活用力は高められると考える。まとめとして、読解力の育成視点として三項目を示しておきたい。

(1) 読解力はテキストを肯定的に理解するだけでなく、書き手の意図などを解釈したり自分の知識や経験と関連づけ、建設的に批判したりする読む力を高める。

(2) 読解した内容を要約したり紹介したり、自分の考えや意見を書くなど、実社会に生きて働く国語力を高める。

(3) 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実させ、実生活の様々な場面で直面する課題を解決する資質や能力を高める。

 終わりに、本書『わかる板書で読解力を高める』(全四巻)の企画から刊行に至るまでの御高配をいただき、お世話くださった明治図書の江部満編集長さんに対し、厚く御礼を申し上げるしだいです。


  二〇〇七年九月編著者   /須田 実

著者紹介

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1930年生まれ。群馬大学教育学部卒。公立,国立学校の教諭を経て,群馬県教育委員会義務教育課指導主事,前橋市立学校の校長,群馬県教育センターの部長,再び校長となり,退任後は前橋市教育研究所長,群馬女子短期大学講師等に当たる。この間,文部省の学習指導要領作成協力者として,その任に当たる。現在は,「新しい国語実践の研究会」代表,「国語科授業方法研究会」主宰などに努め,国語力をつける実践的研究を継続している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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