わかる板書で読解力を高める 小学1−2年

わかる板書で読解力を高める 小学1−2年

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これからの時代に求められる読解力の提言と授業例

新しい「読解力」は「効果的に社会に参加する言語の活用力」として考える学習改善をめざす。本書は実践における学習で「わかる板書活用による」ことを考えて改革の提言を集録した。わかる板書活用は「わかることで次の活動・思考が可能となる」からだ。


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ISBN:
978-4-18-341113-6
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 136頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 序論・わかる板書で読解力を高める
――新しい視点に立つ板書活用の提言―― /須田 実
一 板書活用の目的・機能の意義
二 板書活用の具体的機能
三 読むことの学習における基本的な板書事項(教える板書から学ぶ板書への改善)
四 板書の構成を工夫する(学習目標・内容によって構成を工夫することができる)
五 これからの読む力を高める「PISA型」の読解能力の育成
六 社会生活に生きて働く読解力を高める板書活用の改善
U 提言・わかる板書で読解力を高める指導の方法
1 読解力を高める低学年の板書 /吉永 幸司
一 低学年だから板書の活用で読解力を高める
二 読解力を高める低学年の板書
2 子どもの目をひきつける板書の工夫 /松碕 嘉信
一 板書を構造化する
二 板書でゆさぶりをかける
三 動作化を板書で生かす
四 つぶやきを生かす
五 子どもの学習記録を板書で生かす
3 思考力を育てる構造的な板書の工夫 /神山 和江
一 導入時の板書の工夫
二 展開時の板書の工夫(ショベルカー)
三 まとめの板書の工夫
4 子どもの学習意欲を高めながら読みを深める板書の活用(拡散的な板書から収束的な板書へ) /高山 利三郎
一 板書の方法
二 板書の留意点
三 子どもの読みを深める板書の活用(拡散的な板書から収束的な板書へ)
5 指導過程を踏まえた板書の機能を活用し、子どもたちの読解力の向上を図る /齋木 雄造
一 はじめに
二 二年生で目指す読解力
三 読解力の向上に機能する板書
四 「サンゴの海の生きものたち」(光村図書)の指導から
五 おわりに
V 実践授業による提言・わかる板書で読解力を高める
1 絵を文と結びつけながら読もう
それぞれの卵を生む場所について、叙述に即して読む「だいじな たまご」(大阪書籍一年上) /丹羽 和江
一 単元のねらい
二 指導にあたって
三 学習目標
四 単元指導計画(全五時間)
五 授業の実際(二次の第三時)
六 授業を終えて
2 子どもと作る板書
――教師は黒板に、子どもはノートに―― /山田 定子
一 単元名
二 学習目標
三 指導計画(全七時間)
四 授業の実際
五 学習を終えて
3 子どもがつくる「わかる板書」
――キーワードの構造化で確かに読む説明文の指導―― /末永 優子
一 低学年における板書とキーワードの構造化
二 実際の指導
三 子どもがつくる「わかる板書」
4 順序を意識させながら読解力を高めるために /田島 俊子
一 単元名
二 単元の目標
三 指導計画
四 展開例
五 終わりに
5 想像の広がりが伝わる板書の工夫 /田澤 ゆかり
一 題材名
二 題材の目標
三 題材について
四 読解力を高めるための板書の役割
五 展開例
六 実践をふり返って
七 今後の課題
6 言葉にこだわり、考えを深める板書づくり
―「ビーバーの大工事」の実践を通して― /水谷 益子
一 単元名
二 学習目標
三 指導計画
四 児童の実態と教材について
五 実践
六 単元を振り返って
7 子どもを育てる板書 /岡田 一伸五
一 学年・学級経営計画と結びつけて板書を作る
二 文章の構造を理解した上で板書を作る
三 子どもの情報を活かした板書を作る
8 個の読みを全体の読みにつなげる板書の工夫 /富士野 幸子
一 教材名
二 単元の目標
三 単元の評価規準
四 指導計画
五 授業の実際
六 授業を終えて
9 ねらいを明確にした板書とその活用 /勝村 孝子
一 めざす言語能力
二 教材名
三 指導の内容と教材の関わり
四 学習目標
五 指導計画と板書のねらい(読むこと八〇時間中一二時間)
六 本時(一次・八時間目)
七 読解力を高めるために板書を利用して行ったこと
八 考察(ねらいを明確にした板書とその成果および課題)
10 子どもの意識に寄り添い、読解力を高める板書 /中嶋 孝佳
一 はじめに
二 単元の構想
三 指導の実際
四 おわりに

まえがき

 本書『わかる板書で読解力を高める』(全四巻)は、これからの読解力の在り方を改善し、「社会生活に生きて働く国語力の伸長を図る」ためのもので、読解理念の研究と実践研究による提言・授業例を掲示したものである。

 かつての読解は、昭和三〇年以降になって定着したと考えられる。その背景には、昭和三〇年の学習指導要領における系統的・段階的な言語技術の修得への志向があったからと言える。この読解力は主として文学教材の指導に多用され、文章の一言一句をゆるがせにせず、表現者の内奥にある意図や思考をとらえようとすることを根本的な態度としていた。そして授業は教材文の分析的解釈に偏した国語科の授業であった。

 このような読解は、古来から古典における偉人・聖人の文献を学ぶ方法を継承した読みであり、まさに読んで解釈することを前提にした教師主導の授業であった。しかし、その後は「読解」も「読むこと」と改められ、今日に至っているという経緯がある。

 ところが、現状において再び「読解」という語が話題となっており、文部科学省からも「読解力向上に関する指導資料」(一七年一二月)が公刊されたことにより、「読解」についての研究・実践が行われる状況となっている。そして、教育課程部会審議経過報告(一八年二月一三日)には、「子どもの社会的自立、職業的自立を重視し、社会の側からの視点や国際的な通用性」を考え、学習指導要領の改善について検討していくこととなっている。

 このような教育改善における国語力の育成に関する「読解力」は、必然的に新しい発想により、改善する方向になってきている。

 このような改善の動きは、OECD(経済協力開発機構)「生徒の学習到達度調査」(PISA)による検討が行われた結果が大きな要因となっていると考える。中央教育審議会は、「新しい時代の義務教育を創造する」(一七年一〇月二六日)を出したが、その中で「国語力はすべての教科の基本となるものであり、その充実を図ることが重要である」と述べ、「学習指導要領の見直し」を提示している。

 国語力の内容には「思考力」「読解力」「表現力」が重視されており、PISA調査の定義である「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」としている。

 右の「読解力」は、「効果的に社会に参加する言語の活用力」として考える学習改善をすることが求められている。こうした「読解力」を高めるには、実践指導の在り方として「どうすればよいのか」を考えなければその具現化を図ることができない。どのようなすばらしい教育理念であっても、学習者の国語力をつける教育での学習の仕方が問われなければならない。

 本書『わかる板書で読解力を高める』は、実践における学習で「わかる板書活用による」を考え、提言したしだいである。板書は「学習目標」を明確にするための「伝え合い・考え合う言語活動」の成果を明示したり、目標を到達するための学習状況をわかりやすく示し、次の授業展開につなげる効力がある。学習状況を評価する「学習意欲」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の観点等の評価のメモ・記録などが「即時的に学習者全員にわかる」ように示すことができる。学習プリントなどではなく、学習状況の「即時性・具体性」を生かすことができる。また、学習者の「とまどい、迷い、悩み、不安感」などを瞬時に書いてわからせることが可能である。

 わかる板書活用は、「わかることによって次の活動や思考が可能となる」からである。「わからない」と、次の行為ができないのが当然なのである。「学習状況の流れの中でおぼれている子どもに活力をつける指導」が必要である。

 また、思考力の指導においては、問いを板書し、その問いに応じられるように板書を活用することも有効である。問いがなければ考えようとしないのは学習する子どもばかりではなく、どの人もそうである。「教えるより、学ぶ学習」の方法がとれる。問題を考えて解答する活動は活力の出る学習となり、熱中する学びとなるのだ。

 板書は国語科学習だけではなく、全ての教科等の学習で活用されており、学習ノートと板書、発問と板書、問題解決のための板書等、学習状況の展開ケースに子どもたちは親しみをもっており、板書による導入・展開・終結の構成を体験的に知っている。また、教師が板書するだけではなく、自分たちも板書する学習活動をもっている。

 読解の基礎・基本の学習における「語と語、文と文との関係」「漢字の読み書き」「段落相互の関係」「論理的表現の方法」「感想・意見の発表」「情報の活用」「想像しながら読む」「読んで話す」「読んで書く」など、多様な国語力の学習を体験している。これらの体験に加えて、PISA型の「読解力」の学習が新しく学べるならば、読解力の社会に生きる活用力は高められると考える。まとめとして、読解力の育成視点として三項目を示しておきたい。

(1) 読解力はテキストを肯定的に理解するだけでなく、書き手の意図などを解釈したり自分の知識や経験と関連づけ、建設的に批判したりする読む力を高める。

(2) 読解した内容を要約したり紹介したり、自分の考えや意見を書くなど、実社会に生きて働く国語力を高める。

(3) 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実させ、実生活の様々な場面で直面する課題を解決する資質や能力を高める。

 終わりに、本書『わかる板書で読解力を高める』(全四巻)の企画から刊行に至るまでの御高配をいただき、お世話くださった明治図書の江部満編集長さんに対し、厚く御礼を申し上げるしだいです。


  二〇〇七年九月   編著者 /須田 実

著者紹介

須田 実(すだ みのる)著書を検索»

1930年生まれ。群馬大学教育学部卒。公立,国立学校の教諭を経て,群馬県教育委員会義務教育課指導主事,前橋市立学校の校長,群馬県教育センターの部長,再び校長となり,退任後は前橋市教育研究所長,群馬女子短期大学講師等に当たる。この間,文部省の学習指導要領作成協力者として,その任に当たる。現在は,「新しい国語実践の研究会」代表,「国語科授業方法研究会」主宰などに努め,国語力をつける実践的研究を継続している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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