表現力を鍛える文学の授業

表現力を鍛える文学の授業

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文学の授業は「表現力を鍛える」観点で大きく変わる!

文学の授業は「表現力を鍛える」観点から大きく変わらなければならないと著者たちは主張する。そのために@読み書き融合で古典に親しむ、A想像的短作文・対話の工夫、B文学作品を評価しながら読むなど小・中の文学教材の分析、検討を通して提案。


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ISBN:
978-4-18-335519-5
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
理論編
1 表現力を鍛える文学の授業
一 文学教材の読みの目標
二 「だれ」の心情を読むのか
三 心情を考える「根拠」は、どこにあるのか
四 表現に開く文学の授業
2 入門期の古典学習はどうあるべきか
――「読み書き融合」で古典に親しむ――
一 はじめに
二 小学校は古典の入門期
三 入門期にすべきこと
四 「読み書き融合」で入門期の古典学習を
五 おわりに
3 「作品が醸し出す世界」へ誘い、表現力を鍛える
――「想像的短作文・対話」の工夫――
一 「作品が醸し出す世界」へ誘うとは
二 「想像的短作文」で「再構成する力」を鍛える
三 「想像的対話」で「つなぐ力」を鍛える
四 ねらいと教材の特性に即して表現方法を工夫する
4 表現者の位置に立ち作品を「改訂」する文学の授業
――文学作品を評価しながら読む――
一 はじめに
二 作品を評価する読みの課題
三 「感想を書く」「理解する」の呪縛を解く
四 「改訂する」ことで創作意図に立たせる授業の構想
実践編
1 「人物の心情を直接問わずに『読み声の交流』で表現に開く」文学の授業
――「かさこじぞう」(東京書籍・教育出版小学二年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 「伝え合い」の交流(「読み声の交流」)がもたらしたもの(ワークシートへの書き込みから)
六 実践のまとめ(「今後の展望」に代えて)
2 「視点を変えて書く力を育てる」文学の授業
――「ごんぎつね」(光村図書小学四年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 「開かれた表現力」の作品例
六 今後の展望
3 「フリートークで読む」文学の授業
――「海の命」(光村図書小学六年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 今後の展望
4 「読み書き融合」で古人と親しむ古典の授業
――「枕草子」(東京書籍小学六年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 今後の展望
5 「心を揺さぶられて語りたくなる」文学の授業
――「少年の日の思い出」(光村図書中学一年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 今後の展望
6 「述べ方の工夫に着目しながら、作者の感じ方や考えを読む」古典の授業
――「枕草子・第一段」(光村図書中学二年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて ――表現したいものを持たせるために――
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 「開かれた表現力」を鍛えるワークシート例等
六 今後の展望
7 「『挿話』を読む」ことで、人物像について表現したくなる文学の授業
――「握手」(光村図書中学三年)――
一 単元で鍛える表現力
二 表現力に開くための手だて
三 単元の全体像
四 「開かれた表現力」の授業の具体像
五 今後の展望
おわりに

はじめに

 若いころ、畏友宮本輝氏らと同じ同人誌(『わが仲間』)で小説を書いていた。だから、小学校の教師になってからは、文学教材にこだわった授業を行っていた。教職五年目に転勤した小学校の校長先生から、「なぜ、どうして、どんな」ばかりを問い続ける文学の授業ではダメだ。学習者の国語学力を高めるためには、説明文の授業に取り組む必要がある。そのリーダーとして、説明文の研究をしなさい。このひと言が転機となった。

 以後、説明文の研究、実践に勤しむようになるが、それと比例するかのように私の文学の授業も変わっていった。自然と言葉にこだわり、関係性を読ませるようになった。何よりも変わったのは、「なぜ、どうして、どんな」などと文章から遠ざけるような発問が少なくなり、人物の心情を「直接」問わずして、人物の心情に迫ることを心がけるようになったことである。そうした指導が、学習者の表現力を鍛えることになることに気づき始めていた。

 指導主事時代から大学の教師になった現在に至るまで、数多くの授業を参観する機会に恵まれている。そのつど気になることは、文学教材での指導では、教材を縦に細かく切り、登場する人物の心情をつぶさに読み取らせようとするその実態である。そして、「答えはないのだから」という大義名分のもと、「根拠」はさも自分自身のなかにあるかのような授業に終始している点である。小森茂氏は、講演等で「気持ちが悪くなるほど気持ちを問う授業」と繰り返し指摘したのは、こういった学習の実態を見据えてのことであろう。

 本書の「理論編」では、まず長崎は、以上のような実態を踏まえた上で、「表現力を鍛える文学の授業」に向かうために、どうしても整理しておかなければならない基本的な事項を押さえた。平成二〇年版の新学習指導要領からは、小学校段階から古典の学習が導入されることになった。そこで石丸は、入門期としての古典学習について「読み書き融合」の観点から論述した。本書は、小中九年間を見据えた文学の授業でどのように表現に開くかをテーマとしたため、尾川は小学校での実践者の立場から、中村は中学校での実践者の立場から持論を展開した。

 文学の授業も“いよいよ”変わらなければならないという感を強くするのは、平成二〇年版学習指導要領(国語)に記載された以下の言語活動例を見ても分かる。

○ 詩歌や物語などを読み、内容や表現の仕方について感想を交流すること。(中学校第2学年)

○ 物語や小説などを読んで批評すること。(中学校第3学年)

 四三年ぶりに復活した全国学力・学習状況調査での「蜘蛛の糸」を題材とした問題が想起される。「お釈迦様は極楽の蓮池のふちに立って」から「もう午に近くなったのでございましょう」までの三の場面が「ないほうがいいと思う」か、「あったほうがいいと思う」かと問い、その理由を尋ねるという中学校の「活用」(B)問題である。

 こういった学習こそ「表現力を鍛える文学の授業」だと言えよう。これまでに、物語や小説などを読んで「批評」を加えた文学の授業などあっただろうか。文学の授業も“いよいよ”としたのは、大いなる「期待感」からである。

 小中連携、いや一貫の「表現力を鍛える文学の授業」を標榜して、小・中の仲間に「実践編」を担当して頂いた。表現に開いた文学の授業として一つの指標となり得るのか、ご批正を仰ぎたい。

 最後に、『表現力を鍛える説明文の授業』(二〇〇八)に続き、今回もこのような機会を与えて頂いた明治図書の江部満氏、校正を担当してくださった鈴木啓太氏には心から感謝申し上げたい。


  二〇〇九年八月   /長崎 伸仁

著者紹介

長崎 伸仁(ながさき のぶひと)著書を検索»

1949(昭和24)年和歌山県生まれ。兵庫教育大学大学院修士課程修了。大阪府公立小学校教諭,大阪府教育委員会指導主事兼社会教育主事,大阪府公立小学校教頭,山口大学教育学部助教授,同教授,同附属光小学校長,創価大学教育学部教授を歴任して現在,創価大学教職大学院教授。

石丸 憲一(いしまる けんいち)著書を検索»

1961(昭和36)年静岡県生まれ。兵庫教育大学大学院修士課程修了。静岡県公立小学校教諭,2007(平成19)年度より創価大学教育学部准教授を経て現在,創価大学教職大学院准教授。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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