- はじめに
- T 知っておきたい! 国語科板書の基礎・基本
- 国語科授業における板書の役割と効果
- 1 近年の板書事情
- 2 先輩の国語教師から教えられたこと
- 3 板書と思考
- 4 立ち止まって考える板書
- 5 板書とノート
- 6 視聴写のすすめ
- 7 板書の導入・展開・まとめ
- (1)導入/ (2)展開/ (3)まとめ
- 8 板書の仕方の工夫
- (1)板面のデザイン/ (2)補助学習具
- U 授業がうまくなる! 国語科板書の実物モデル
- 低学年
- 1 低学年の板書ポイント
- 2 物語文1年「大きなかぶ」の板書モデルと授業展開
- 生き生きと学習するために役立つ板書とその工夫
- 【板書事例1】 情景を思い描き、みんなでさし絵を作る板書
- 【板書事例2】 ノートに書いたことを板書で交流する
- 【板書事例3】 劇あそびの学習を生かす板書の工夫
- 3 説明文1年「どうぶつの赤ちゃん」の板書モデルと授業展開
- 思考を整理して共有し、深める板書の工夫
- 【板書事例4】 初発の感想を整理しながら、文章全体を見通す板書
- 【板書事例5】 読み取りを観点ごとに確認していく板書
- 【板書事例6】 話し合い活動に役立つ板書
- 4 物語文2年「スイミー」の板書モデルと授業展開
- イメージを豊かにし、思いや考えをはっきりさせる板書の工夫
- 【板書事例7】 主人公を印象づける板書
- 【板書事例8】 吹き出しを使って、思いや考えをはっきりさせる板書
- 【板書事例9】 大きな魚を使って、まとめをする板書
- 5 説明文2年「たんぽぽのちえ」の板書モデルと授業展開
- 自力で進めながら読み取っていく板書の工夫
- 【板書事例10】 学習の流れを確認しながら読み取る学習
- 【板書事例11】 指示語に着目して読み取る学習
- 【板書事例12】 自力で進めていき、読み取る学習の板書
- 6 詩2年「とまとまと……」「へんなひとかぞえうた」の板書モデルと授業展開
- 考えをはっきりさせて読み味わう板書の工夫
- 【板書事例13】 考えをはっきりさせ、発見を見やすくする板書
- 【板書事例14】 考えをはっきりさせ、見通しを持たせる板書
- 中学年
- 1 中学年の板書ポイント
- 2 物語文3年「手ぶくろを買いに」の板書モデルと授業展開
- 登場人物の心の交流にせまる板書とその工夫
- 【板書事例15】 ゆれ動く母ぎつねの気持ちを表す板書
- 【板書事例16】 子ぎつねの人間に対する思いを表す板書
- 【板書事例17】 心の変化をとらえた終末の板書
- 3 説明文3年「ありの行列」の板書モデルと授業展開
- 育てたい力に合わせた板書の工夫
- 【板書事例18】 段落相互の関係を考える力を育てるための板書
- 【板書事例19】 中心となる語をとらえて内容を把握する力を育てるための板書
- 【板書事例20】 自分の考えをまとめる力を育てるための板書
- 4 物語文4年「ごんぎつね」の板書モデルと授業展開
- 場面の様子や人物の気持ちを豊かに想像させる板書の工夫
- 【板書事例21】 考えをはっきりさせ、見通しを持たせる板書
- 【板書事例22】 考えをはっきりさせ、発表を見やすくする板書
- 【板書事例23】 場面をつかみ、人物の気持ちをはっきりさせる板書
- 5 説明文4年「『伝え合う』ということ」の板書モデルと授業展開
- 子どもの思考を促す意図的板書をめざして
- 【板書事例24】 学習材と子どもたちが向き合う板書
- 【板書事例25】 筆者の立場になって読み進む板書
- 【板書事例26】 点字のすばらしさを実感できる板書
- 高学年
- 1 高学年の板書ポイント
- 2 物語文5年「大造じいさんとガン」の板書モデルと授業展開
- 子どもが自分でノート作りをする授業の工夫
- 【板書事例27】 大造じいさんと残雪・場面設定を知るための板書
- 【板書事例28】 大造じいさんと残雪の知恵比べの様子をノートで見る板書
- 【板書事例29】 ハヤブサと戦う残雪と大造じいさんの様子をノートで見る板書
- 3 説明文5年「千年の釘にいどむ」の板書モデルと授業展開
- 子どもの理解を促すための板書の工夫
- 【板書事例30】 ことばと図で子どもの理解を促す板書
- 【板書事例31】 ことばの意味をおさえて理解を促す板書
- 【板書事例32】 子どものことばや発言を生かす板書
- 4 詩5年 金子みすゞ「日の光」の板書モデルと授業展開
- 詩のおもしろさを感じさせる板書の工夫
- 【板書事例33】 作者のものの見方を感じ取る板書
- 5 物語文6年「海の命」の板書モデルと授業展開
- 関連づけて読む力を身につける構造的な板書
- 【板書事例34】 子どもたちの力で学習課題を作り出していく助けとなる板書
- 【板書事例35】 ことばやほかの人物と関連づけて読む力をつける板書
- 【板書事例36】 子どもたちの力で読み深めるための助けとなる構造的な板書
- 6 説明文6年「平和のとりでを築く」の板書モデルと授業展開
- 自分の考えを深め発信する板書
- 【板書事例37】 表紙を作り、全体を見通す板書
- 【板書事例38】 学習のめあてを話し合い、学習の見通しを持たせる板書
- 【板書事例39】 全体の組み立てを考えさせる板書
- 7 漢字6年の板書モデルと授業展開
- 自ら学ぶ漢字の学習の板書
- 【板書事例40】 子どもと作る漢字の板書
- おわりに
はじめに
詩を読みます。
「へへへへへへへへへへへ」「へへへへへへへへへへへ」「へへへへへへへへへへへ」
「へへへへへへへへへへへ」「へへへへへへへへへへへ」「へへへへへへへへへへへ」
さあ、何という題名の詩か分かりますか。聞いただけでは見当もつきませんね。
ところが、板書してみると、おぼろげながら分かってくるのです。
これは、「なみ」(うちだりんたろう作)という題名の詩の一部です。黒板に書いてみると、波が浮かび上がり、意味が分かってきます。これは「目で味わう詩」ということになります。
へへへへへへへへへへへ
へへへへへへへへへへへ
へへへへへへへへへへへ
へへへへへへへへへへへ
へへへへへへへへへへへ
へへへへへへへへへへへ
板書の一番の目的は、「視覚に訴えて思考を深める」ことにあります。話し合っているとき、声だけ聞いていたのでは考えがなかなか整理されません。そんなときは、まずノートに書いてみて考えることです。教師でしたら、黒板に書いてみることが大事です。空回りしやすいことばのやりとりを板書という形に整理して、思考の拠点を作ることにあるのです。
本書では、「板書」を通して、学習指導のあり方を、あらためて問い直してみたいと思います。
黒板独自の機能「視覚に訴えて考えさせたり、理解させたりするはたらき」を原点に立ち返って見直してみます。
板書の有効なところを、教師の側から挙げてみると、次のようになります。
○みんなの前で書きたいことがすぐに書ける。 ○書きながら見ながら説明できる。
○すぐに消したり、付け加えたりすることができる。
黒板は、こんなに便利なことがあるのです。
黒板は停電のときも使えます。コンピューターがフリーズして動かないときにも使えます。移動黒板ならどこにでも持って行けます。大事なことを書いて伝えることができます。そのまま、しばらく残しておくこともできるのです。
機器の便利さに押されていると、大事なことを忘れがちになります。それは、ことばの力をつけることにあります。「考えること」や「伝えること」がきちんと育っているかを、教師は自問自答する必要があります。「読解力」や「聴解力」が足りないというときだからこそ、もっとも身近で手軽な板書という視覚材を利用して、国語学習の指導を充実させる必要があります。「黒板一つで勝負する」教師が、もっと出てきていいのではないでしょうか。
半世紀の長きにわたり、現場の実践を大事にし、国語教師であることに誇りと自覚を持って、「授業で勝負すること」を唱えたのは、大先輩であり、恩師でもある石田佐久馬先生(元お茶の水女子大学附属小学校教諭・元日本国語教師の会代表)です。『発問・板書・ノート』(初版昭和三十九年・東洋館出版社)という不滅の名著があります。
板書の仕方は、教室の現場で、先輩教師から直に学ぶことが一番です。ところが、現在の教室現場には、それだけの時間的ゆとりがありません。空き時間に先輩教師の授業参観ができないのが現実です。
そこで、大先輩の石田先生から直に教室で学んだ実践や、著書から学んだ理論と実践を伝え、同輩の国語教師の板書を再現し、紙面で解説したのが本書です。本書から学んだことが明日の授業展開に役立つことを切に望みます。
平成二十三年二月 /若林 富男
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- 明治図書