- まえがき
- T 序論 読解表現力強化プログラム
- ――習得力・活用力を育成する学習指導の開発
- 一 新学習指導要領の「読解力」の要請課題
- 二 教育新時代を拓く「読解表現力の開発」
- ――PISA型読解力の国際化――
- 三 PISA型読解力の3目標・7能力
- 四 「読解表現力強化プログラム」の基本的学習計画の立案をする
- 五 読解にかかわる言語活動の重視
- ――対話・記録・報告・要約・説明・感想等の能力育成――
- U 提言 読解表現力を高める学習指導
- [1] 「なぜ」を発展させる学習指導に
- 一 読みの観点を明確に
- 二 読解したことを生かした自分の考えづくりに
- 三 既習体験が重なる学習展開に
- 四 考えを伝え合い・共有できる子供たちに
- [2] 実生活に生きて働く力としての国語力の育成
- 一 はじめに――「読解表現力強化プログラム」について
- 二 各学習過程における高学年の指導事項のめやすと言語活動例
- 三 提言――ことばの学び手が育つ国語教室の創造をめざして
- 四 終わりに――「学習の振り返り」をもって
- [3] 自律した言葉の学び手が育つ読解表現力指導
- 一 はじめに
- 二 読解表現力を育てる教材研究の視点
- 三 読解表現力を育てる発問の検討
- V 実践 [論説文・説明文]
- [1] 基礎学習を設定し、要旨をとらえ要約する力を育てる
- ――「まんがの方法」(教出)の実践――
- [2] テキストに基づき文章を構造化し、自分の書く力を高めるプログラ
- ――「千年の釘にいどむ」(光村)の実践――
- [3] 自分の考えを明確にしながら読む
- ――「日本語を考える」(教出)の実践――
- [4] 説明的な文章教材から学ぶ「まとめの段落」の構成
- ――「サクラソウとトラマルハナバチ」(光村)の実践――
- [5] 明確な視点を与えて書かせることによって読解表現力をつける
- ――「ニュース番組作りの現場から」(光村)の実践――
- [6] 学習のゴールと読み方を示し、習得と活用の場を設定する
- ――「千年の釘にいどむ」「本は友達」(光村)の実践――
- W 実践 [文学・生活文・その他]
- [1] 複数の作品を読み、「比べたり、つなげたりして意味を見出し表現する力」を育む
- ――「わらぐつの中の神様」(光村)、「注文の多い料理店」(大書・東書・学図)の実践――
- [2] 教材文を挿絵と対比して読み取り、意見の交流を通して実生活に活きる読解力を培う
- ――「注文の多い料理店」を実践して――
- [3] 読解と表現の結びつきを実感するプログラム
- ――「だいじょうぶ だいじょうぶ」(東書)の実践――
- [4] 笑い話のおもしろさを考える
- ――『畏饅頭』を教材にして――
- [5] 登場人物の思いをたどり、その思いを検討し読み深める授業
- ――「父ちゃんの凧」(学図)の実践――
- [6] ポスターで物語の魅力を伝え合おう
まえがき
今回の学習指導要領の改訂経緯として、PISA調査(読解力)の結果を踏まえた指導の改善が導入されており、教育の国際化時代を迎えたことを強く感じると共に、文部科学省の英断を歓迎するところである。
文科省は、国立政策研究所の「教育課程実施状況調査」の「根拠を明確にしながら自分の考えや意見を述べる力」や「読んだ内容をもとに自分の考えを明確にして再構成する力」を育てる読解指導について提示し、中央教育審議会の「審議のまとめ」にも「読解力や記述式問題に課題があること」、「PISA調査の読解力の習熟度レベル別の生徒の割合において、前回調査(二〇〇〇年)と比較して、成績中位層が減り、低位層が増加しているなど成績分布の分散が拡大していることなどの低下傾向が見られた。」と記されている。
なお、「思考力・判断力・表現力」等を問う「読解力や記述式の問題に課題があること」を示し、「読解表現力」の重視について検討されることとなった。この状況は、平成一八年においても続き、より低下していった。
さらに、「教育内容に関する主な改善事項」として、各教科における「言語活動の充実」が要請され、国語をはじめとする言語は「知的活動(論理や思考)」だけではなく、「コミュニケーションや感性・情緒の基盤」でもあり、国語科では、これからの言語の果たす役割に応じ、的確に理解し、論理的に思考し表現する能力、互いの立場や考えを尊重し、伝え合う能力を育成することや、我が国の言語文化に触れて感性や情緒をはぐくむことを重視することを要請している。
これからの読解表現力の育成についてはどのようにすればよいのか、その資料として文部科学省から「読解力向上に関する指導資料〜PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向〜」(平成一七年一二月)が刊行され、読む行為のプロセスとしては、単なる「テキストの中の情報の取り出し」だけではなく、書かれた情報から推論して意味を理解する「テキストの解釈」、書かれた情報を自らの知識や経験に位置づける「熟考・評価」の三つの観点を設定し、問題が構成されている。さらに出題形式は、選択問題のみならず、記述式問題も多く取り入れられており、テキストを単に読むだけではなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりすることが求められている内容である。
本書『読解表現力強化プログラム』〜習得力・活用力を育成する学習指導の開発〜は、これまでの「読解力」についての研究と実践を通してのみではなく、自らの研究、自らの授業を学び合い、各県ごとの月例会を通して実践研究会を行い、さらには各県持ち廻りによる全国研究大会を通して「これからの新しい国語実践について」討論し、パネルディスカッションしてきたもので、実践の論理・実践の活動を高め合った方々と共に、全六巻にまとめた。
本書の構成はT序論、U提言、V・W授業実践例とし、「読解表現力強化プログラム」の課題を記述したものである。PISA学習におけるフィンランドの子どもたちの教科書にある五つの課題解決力となる「発想力」・「論理力」・「表現力」・「批判的思考力」・「コミュニケーション能力」を課題とし、自ら考え、自ら活動する学習への研究と実践に懸命に取り組んでいただいた成果を編者として期待するところである。
小生の序においては、特に「読解表現力強化プログラムの授業」は、「目標・指導事項・言語活動の一体的関連を図ることを強調したこと」を述べておきたい。
終わりに、本書の企画・編集等について、大変お世話になった明治図書の江部満編集長に感謝いたします。
二〇〇九年五月 編著者 /須田 実
-
- 明治図書