- まえがき
- T 序論・作文力を高める学習指導の改善(新提言)
- ――「目標準拠による指導と評価の一体化」で国語力を付ける作文の指導――
- 一 全教科等の学習に生きて働く横断的国語能力の育成を目指す作文指導
- ――教科中心主義的な教育課程の枠組みから能力関連機能を生かし合う学習――
- (1) 教科等の枠組みや国語科の領域の枠組みを超えた作文指導の改善を図る/ (2) 国語科の三領域一事項の能力関連を図る指導
- 二 作文学習の目標チェックと指導事項のチェック
- ――目標準拠の評価を明確にするための関連チェック――
- ・ 作文指導の学習目標を明確にする(目標は到達度評価の起点に立つものである)〈作文の目標チェック〉
- 三 観点別学習状況評価を生かす作文指導
- ――評価で変革する作文指導力の向上――
- (1) 観点別学習状況評価は、基礎・基本の国語力を多面的に高める指導力となる/ (2) 評価規準の設定をし、学習目標の到達度評価につなげる/ (3) 作文の評価・評定について
- 四 これからの時代に求められる作文力の育成
- ――変動する社会の発展に参画する生きる力となる作文能力――
- U 提言・作文力を高める学習指導の方法
- 1 作文の基礎力を育てる入門期の指導 /吉永 幸司
- 一 入門期の作文指導は「お話好き」の子どもを育てることから始める
- 二 話したことが文章になっていく過程を体験させる
- 三 作文の基礎となる技能の適切な指導が正しい文を書かせる
- 四 心の動きを書き増やし、書くことが楽しいと思えることを積み上げる
- 2 楽しく書くための記述前の指導の工夫(一年) /神山 和江
- 一 意欲をもって書かせる指導の工夫
- 二 書く方法を知るための指導の工夫
- 3 二年生の豊かな感情表現の表出を核にして新たな作文能力が取り込まれていく過程が大切だ /渡辺 知樹
- 一 作文力の育成は、付加の過程である
- 二 作文を書くことは体で覚える学習である
- 三 二年生は素直な感情表現ができる学年である
- 四 作文を書くことは、自分の生活を豊かにするという実感をもたせること
- 4 楽しんで、作文の基礎を身に付ける(二年) /松山 美重子
- 一 作文の楽しさを経験させるためのアイディア
- 二 順序やまとまりを考えて伝えるためのアイディア
- V 作文力を高める授業実践例
- 1 「対話」から「書く」へ(入門期における段階的指導) /那須 由季
- (1) 「はるのおたより」(四月 八時間)/ (2) 「はなしましょう、ききましょう」(五月 六時間)/ (3) 「えとことばでかきましょう」(六月 六時間)/ (4) 「えやしゃしんをみてかきましょう」(自作単元 七月 五時間)
- 2 尋ねたり応答したりすることを書く学習(一年) /大石 正廣
- (1) 単元名/ (2) 単元目標/ (3) 学習の内容/ (4) 指導計画/ (5) 具体的な授業展開(第二・三時)/ (6) まとめ
- 3 一斉学習で書き方を学ぶ(一年) /勝村 孝子
- (1) 単元名/ (2) 学習目標/ (3) 作文力を高めるための取り組み/ (4) 指導計画(全八時間)/ (5) 授業の展開/ (6) 成果と課題/ (7) 一斉学習後の児童作文
- 4 支援に評価を生かす工夫(一年) /恩田 千明
- (1) 単元名/ (2) 学習目標/ (3) 指導計画(一二時間)/ (4) 指導・評価の工夫/ (5) 学習の実際(一学年二四名)/ (6) 参考資料
- 5 おしえてあげる! おきにいりののりもの(一年) /井藤 いづみ
- (1) 単元名/ (2) 単元のねらい/ (3) 単元構想図(全九時間)/ (4) 授業の実際/ (5) 学習を終えて
- 6 したこと、見たことについての書く学習(一年・五感を大事にして) /石原 和人
- (1) 単元(教材)名/ (2) 単元の目標/ (3) この教材で身に付けさせたい力/ (4) 指導計画/ (5) 教材化について/ (6) 本時の展開/ (7) 本時の様子/ (8) 本時以降の実践について
- 7 お話を聞いて書く学習(二年) /山田 定子
- (1) 単元名/ (2) 学習目標/ (3) 指導計画(八時間)/ (4) 授業の実際/ (5) 授業を終えて
- 8 本を読み、思ったことや考えたことを書く学習(二年)
- ――「スイミー」の学習から―― /長嶋 美智子
- (1) 単元名(教材名)/ (2) 学習目標・学習内容/ (3) 指導計画(一四時間)/ (4) 指導にあたって/ (5) 具体的な実践
- 9 写真と言葉のつながりを考えて書く学習(二年)
- ――映像情報と言葉を相互に補完しながら感動を焦点化していく授業作り―― /西上 慶一
- (1) 単元名/ (2) 学習目標/ (3) 指導計画(全六時間)/ (4) 作文力を高めるための指導方法の工夫/ (5) 授業の実際(第五時)/ (6) まとめ(二年生の作文力とメディアリテラシー教育の接点)
- 10 昔話や童話を聞き(読み)、想像したことを書く学習 /石森 直記
- (1) 単元名/ (2) 学習目標・内容/ (3) 指導計画(一〇時間)/ (4) 各指導時間における「主な学習活動」と「教師の支援と留意点」/ (5) 作文力を高めるために/ (6) 授業の実際・本時@「お話の続きを想像して書く」/ (7) 授業の実際・本時A「お話パワーアップ大作戦」
- 11 細かいステップで書けない子も書けるようになる(二年)
- ――日常の生活を生かした作文指導―― /勝俣 あゆみ
- (1) 単元名/ (2) 学習目標・内容/ (3) 指導計画(全七時間)/ (4) 授業の実際/ (5) 作文力を高める工夫と成果
- 12 体験を生かして知らせたいことを書く学習
- ――ね、だから家族みんなで「げんき村」に行こっ!―― /大杉 稔
- (1) 書く勢いを生む単元の構想/ (2) 指導と学習の実際
まえがき
本書『作文力を高める新提言』は、これからの社会の発展にかかわる作文力の育成とともに、児童生徒の一人一人が、自らの人間としての潜在的可能性を実現化していくための国語力を高めることを願い、提言するものである。
提言の主眼には「目標・指導・評価の一体化」に立つ学習の創意工夫の実践的改善・改革への願いを込めている。
作文力は、生涯にわたって社会に生きる力となるものであり、将来の社会生活の中で「報告書」「企案文」「説明書」「情報文」「通信文」「記録」「意見文」「依頼状」等、多岐にわたる作文(文章表現)が要請されたり、必要に迫られることと考えられる。このことは国語科の目標である「国語を適切に表現する」「正確に理解する」「伝え合う力を高める」「思考力・想像力・言語感覚を養う」などの国語力としての諸能力を身につけておかなければならないということになってくる。また、表現するときの「目的意識・相手意識・状況意識・方法意識・評価意識」などの五つの意識を身につけ、発信する人間としての資質を重視する必要がある。そのためには、具体的に書くことの作文の力は「どうやれば高められるのか」についての方法的指導を明確にした授業をする必要があり、子どもたちの「知りたい・分かりたい・上達したい」という「つぶやき」をしっかりと受け止めなければならないと考える。このような実態の存在する理由には、教師が作文の「題材を指示し伝達する」ことで「書く学習が始まる」という原因がある。このようなケースは、戦後五十年余の間に作文の主流的存在としてあった「生活作文」に偏した状況があったからである。また、その評価についても、どのような国語力を目指す作文の学習なのか・どのような思考や情報を必要とするのか、などの学習力の欠けた作品主義的内容によるものであったと判断する。
これらのことを踏まえて、本書では次のような提言をすることとしたのである。
Tの序論では、「作文力を高める学習指導の改善」を図るために、目標準拠の指導と評価の一体化で到達度を高める学習について述べた。その一として、「全教科等の学習に生きて働く横断的国語能力の育成を目指す」考えに立ち、文章を表現する活動をとりあげている社会科や理科における学習(書くこと)の活動が学習指導要領の内容にもあり、国語科の学習指導要領(小学校)の第1章第5節の中にも「国語科の学習の中だけでなく、あらゆる機会を視野に入れて、それらとの関連にも十分に配慮した指導計画、学習内容、学習方法を工夫したり開発したりすることが必要である」と示されていることなども踏まえ、新しい作文学習の在り方を提言した。
提言の二としては、「作文の目標を明確にする」ための「目標チェックと指導事項のチェック」の方法について述べ、目標準拠の評価による学習改善への提言をした。
提言の三としては、「観点別学習状況評価と評価規準を活用した作文指導の方法」をあげて、評価で変革する作文指導力の向上を図る方法等について提言し、作文の評価・評定との関係にもふれておいた。
提言の四としては、これからの時代に求められる作文力の育成として、変動する社会の発展に参画する生きる力となる作文能力を目指し、子どもの社会的自立や社会の変動に対応する作文力を重視した。この四における提言への過程として、現状における作文の指導例、「論理的に伝え合う」「情報化・国際化に対応する」「社会生活の向上のために」「調べて書く」などが提言されているが、題材内容の改善に傾斜しており、本当に国語力をつけ、高めているかという課題が残されていると考える。その課題を超えるためには、作文の評価で変わる指導に焦点を当てて改善する提言を意図するものである。本書に執筆された方々とともに今後もいっそうの努力をと念じているしだいである。
終わりに、本書の企画・編集・御教導いただいた明治図書の江部満編集長にあつく御礼を申し上げます。
平成一八年五月 編著者 /須田 実
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- 明治図書