「見方・考え方」を育てる中学歴史授業モデル

「見方・考え方」を育てる中学歴史授業モデル

新刊

総合25位

「歴史的な見方・考え方」を活かす“深い学び”単元別授業モデル

「見方・考え方」を育てる中学歴史授業づくりには、「暗記する歴史」から「考える歴史」への転換を!改訂にも尽力した土屋武志先生監修のわかりやすい理論と豊富な授業モデルで、「主体的・対話的で深い学び」の具体像がわかります。明日の授業に役立つ必読の1冊です。


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ISBN:
978-4-18-325111-4
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 144頁
状態:
在庫あり
出荷:
2019年10月24日
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contents

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 中学歴史「見方・考え方」を育てる授業デザイン
1 中学校歴史的分野でメディアリテラシーを育てる
――なぜ歴史学習がメディア社会のいまこそ重要なのか
2 「見方・考え方」を育てる見学・調査活動をどう実現するか
――博物館・郷土資料館との連携による授業へのヒント
3 教師はいかにして対話的な歴史学習を成立させるのか
――対話を重視する教師の授業実践から読み取る3つのポイント
4 「見方・考え方」をどう捉えるか
――評価の手法
第2章 「見方・考え方」を育てる中学歴史授業モデル
1 第2章 イントロダクション
――第2章の「見方・考え方」
2 A 歴史との対話
(1) 単元名:私たちと歴史
私たちは,なぜ歴史を勉強するのだろうか
――子ども自身が「学ぶ意味」を見出す歴史授業開きとは
(2) 単元名:身近なものにも歴史がある!?
家康と家臣は,なぜ対立したのだろうか
コラム1 歴史テストの作り方
3 B 近世までの日本とアジア
1 古代までの日本
(1) 単元名:日本列島の誕生と大陸との交流
なぜ日本列島に「国」ができたのだろうか
2 中世の日本
(2) 単元名:武士の台頭と鎌倉・室町幕府と東アジアとの関わり
武士はどのようにして権力を高めたのだろう
3 近世の日本
(3) 単元名:江戸幕府の成立と鎖国
なぜ江戸幕府は260年余りも続く平和な世の中を作ることができたのだろうか
(4) 単元名:幕府政治の行きづまりと明治維新
時代の変化を捉え,つながりを感じる歴史学習
コラム2 歴史の覚え方
4 C 近現代の日本と世界
1 近代の日本と世界
(1) 単元名:日清・日露戦争と近代産業
日本は欧米列強とならぶ「一等国」になれるのだろうか
(2) 単元名:第二次世界大戦と日本
なぜ戦争を止めることができなかったのだろうか
2 現代の日本と世界
(3) 単元名:戦後日本の発展と国際社会
東京オリンピックを開くことができたのはなぜか
コラム3 社会科歴史教育の大切さ
おわりに

はじめに

 ――民主的市民を育てる歴史学習


1 学習指導要領改訂の背景

 読者の皆さんは,社会科としての歴史学習にどのような学習活動を思い浮かべますか。日本の学校では,「教師の話を聞いて,教師の板書をノートにうつす」や「教師が配付したワークシートに人名や用語を教師の指示で書き込む」などの活動が,よく見られます。日本の多くの大人たちが学校で経験したことでしょう。しかし,このような活動とは違う活動があります。平成29年版学習指導要領の基本となった「中央教育審議会(教育課程部会)」では,次のような活動が示されました(「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」平成28年8月26日,補足資料)。


・ペアで意見を交換する

・ホワイトボードを使って話し合う

・付箋を使って話し合う

・生徒が説明する

・ポスターなどを作成して発表する

・立場を決めて議論する


 審議会では,このような活動をさらに充実させなければならないという意見が,多く出されました。その背景には,日本の子どもたちの現状に対する危機感がありました。その現状とは,日本の子どもたちの自己肯定感や社会参画意欲が低いことです(前記「まとめ」)。会議の資料とされた日・米・中・韓4カ国の調査によれば,「自分はダメな人間だと思うことがある」と回答した日本の高校生は72.5%にのぼりました。さらに「私の参加により,変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」という質問には,肯定的な回答は,約4割でした。この結果をどう判断するといいでしょうか。この結果は,他の国の半分以下でした。逆に「全くそう思わない」と回答した日本の中学生は,18.6%(高校生もほぼ同数)と他の国よりもはるかに多い数でした。つまり,日本では,多くの若者たちが,社会は変えられないとあきらめてしまっているのです。未来を創り出していかなければならない世代が,このようにいまを変えられないと考えていることへの危機感から,今回,学習指導要領が改訂されました。社会を学習内容とする「社会科」には,子どもに未来を創り出す勇気と自信を生み出す役割(教育効果)が期待されています。


2 基本コンセプトとしての「何ができるか」

 さて,審議会では,若者たちの自信を失わせている原因として,これまでの教科指導の目的が「何を知っているか」にとどまりがちだったことが指摘されました。つまり,これまで,子どもたちが知っていることを活用して「何ができるようになるか」という視点から実践されていなかったと指摘しています。それは,これまでの学習指導要領が「教員が何を教えるかという観点から知識や技能の内容に沿って順序立てて整理した」書き方になっていたためで,だからそれを改めなければならないというのです。これは,学習指導要領の基本コンセプトの大きな変化であり,日本の教育に強い影響を与えることになりました。これまでは,学習指導要領に準拠して,「何ができるか」という視点でなく「何を知っているか」という視点から教科書や入学試験問題が作られてきました。今回,学習指導要領がコンセプト自体を見直して改訂されたことによって,教科書や入試問題も「何ができるか」という視点から作り直されることになります。そして当然,授業自体もこの視点を重視して実践されることになるのです。子どもたちが目標に向かって「活動」に挑戦し,目標を達成して「現状を変えることができた」という自信をもつ経験を意図的に行う授業となるでしょう。本書は,このような背景から,読者の皆さんが,子どもたちにそのような活動を生み出す授業を,意図的に実践するためのヒントとなるよう,企画しました。


3 歴史を「教える」教師から子どもとともに歴史を「考える」教師へ

 さて,社会科で実践されている歴史学習は,これまで「暗記学習」といわれてきました。多くの人が,これを否定しないことが日本の「常識」にもなっているようです。この学習の特徴は,正答が一つで,それを覚えることが学習活動であるとされている点です。多くは,人名や歴史用語を反復して「暗記」する学習です。先に述べたように,試験問題やそれに類似したワークシートで,歴史上の人物の氏名や歴史用語の穴埋め問題に挑戦した経験をもつ日本人は多数にのぼります。ゆえに日本では,歴史=暗記というイメージが定着しています。日本の歴史学習は,中央教育審議会がいう「何を知っているか」という視点で「教えられて」きた学習の典型ともいえます。その結果,歴史は教師が「教える」ものという常識(固定概念)ができあがりました。つまり,「知らないことは教師が子どもに教えてあげる」という考えです。

 しかし,この常識と異なる歴史学習があります。それは,子どもが「過去を解釈し,過去を描く」歴史学習です。教師は,授業として子どもたちに意図的にその機会を与え,その活動状況に即してサポートします。私(土屋)は,これを「解釈型歴史学習」といっています(拙著『解釈型歴史学習のすすめ 対話を重視した社会科歴史』梓出版社,2011)。欧米では,市民権を得ている学習です。私が,論文で「解釈型歴史学習」と表現したところ,それを英語に翻訳する時にネイティブの校正者から「解釈でない歴史があるのですか?」「歴史が解釈であることをあえて翻訳すると英語として不自然では?」という意見がありました。「解釈」という活動を伴う歴史学習が,むしろ「常識」であるようです。

 実は,日本でも歴史学習を「解釈」の学習と見なしてきた「歴史」があります(拙著『アジア共通歴史学習の可能性 解釈型歴史学習の史的研究』,梓出版社,2013)。しかし,なかなか定着しないまま今日に至っています。一方で,子ども同士の対話を促す場面がない授業は,「よくない授業」という評価を与えられるという「常識」があるのも日本の特徴です。「自分の意見をいいましょう」「○○さんの意見についてどうですか?」のような教師の言葉は,日本の授業でよく聞かれる言葉です。この場合,教師は,「教える」というより,子どもたちとともに「考える」立場に立っています。小学校では普通ですが,中学校でも教師がこの立場(役割)を担うことが,大切だと思います。「教える」教師から「考える」教師へ,教師の意識転換が重要です。


4 「考える歴史学習」での問いの作り方とは

 「暗記する歴史」から「考える歴史」への転換に必要不可欠なものが「問い」です。疑問と言い換えることもできます。興味・関心とも言い換えられます。「疑問」から「考える」という行動が生まれます。授業では,これを一般的に「問い」と呼びます。問いの中でも「なぜ」という問いが,疑問を追究する主体的なモチベーションを高めるうえで効果的です。これまでの歴史学習では「なぜ」という問いより「どのように」という問いが多かったようです。今後,歴史学習でも「なぜ」という問いが必要になりますが,それを生むしくみは,次のように考えるとわかりやすくなります。

 社会は,人間が作っています。誰かが(あるいは誰かたちが)何かをすることで社会が動きます(変化します)。だから,その誰かが「なぜそうしたのか?」という問いは,最もシンプルな問いです。これは,過去の社会を扱う歴史学習であっても同じです。「○○は,なぜ○○したのか?」という問いです。この疑問を論理的に解くために,「いつしたのか?」「どこでしたのか?」「誰としたのか?」「どのようにしたのか?」「その結果どうなったのか?」とさらに具体的な問いが必要になります。

 例えば,「15世紀末,新航路を開拓したヨーロッパの国々によって,世界はどのように変化したでしょうか」という問いは,「15世紀末のヨーロッパの人々は,なぜ新航路を開拓したのでしょうか」という問いに変えることができます。この問いから,「いつ,どこを,どのように開拓したか,その結果どうなったか」を調べて図にしたり,年表にしたりして関係性を見つけ,自分の解釈としてまとめ,自分の言葉で説明します。その際,教科書にある歴史用語や歴史上の人物名を適切に用いると,それらを活用する「考える歴史学習」になります。


5 歴史学習での「見方・考え方」と深い学びと本書の使い方

 私は,前節で述べた「考える歴史学習」を「歴史家体験」と呼んでいます。私たちは,過去を体験することはできないけれども,過去を描く,歴史家体験はできると考えるからです。しかし,この考えは,しばしば誤解を受けます。それは,「学校教育は,子どもたちを歴史家にするための教育ではない」という考えがあるからです。確かに社会科は,職業人としての「歴史家」を育てるための教育ではありません。しかし,平和で民主的な社会をいっそう充実させるためには,過去を踏まえて未来を提案する若者たちが必要です。そのためにも,自分自身で過去を説明する経験を社会科歴史学習でさせたいものです。また,過去を描く職業は,歴史家だけではありません。小説家や映画監督・脚本家もそうですし,新聞記者などのジャーナリスト,そしてしばしば歴史的問題に直面する政治家も過去を踏まえて説明します。民主的な現代社会では,祭りなどの伝統や文化財の保存に関わる地域の人々など,職業歴史家でない多くの人々が自分自身で歴史を描く(説明する)機会をもちます。いろいろな人たちによって描かれた歴史(歴史情報)を受け取る市民一人ひとりも,それを基に自身で解釈することができる点で彼らも歴史家だといえます。このように,歴史を解釈できる能力は,民主的能力の一つといえます。その能力を育成するために,授業での「歴史家体験活動」が必要だと私は考えています。この考えは,歴史学習を「歴史家が創った歴史を覚える」ことだと考える学習論の対極にある学習論ですが,中教審を受けた平成29年版学習指導要領に沿う学習論です。

 中学校社会科歴史的分野は,平成29年版学習指導要領解説社会編に述べられているように単元など内容や時間のまとまりを見通した「問い」を設定し,「社会的な見方・考え方」を働かせることで,社会的事象等の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて構想したりする学習を一層充実させることが求められています。しかし,先に述べたように,このような学習活動が,日本で全く行われてこなかったわけでありません。特に,子ども同士の対話的な学習は,これまでも重視されてきました。本書は,これまで実際に挑戦されてきた実践を基に,それらを平成29年版学習指導要領に即して,より一層「主体的・対話的で深い学び」とするための足場となるように,ポイントをまとめました。実践の柱とするため,必要最小限の理論編もつけました。読者は,実践編から読みはじめてもよいし,実践編の興味があるところだけ読んでもよいです。本書を基に,あなた自身の,つまり子どもたち自身の新しい社会科歴史学習を創造いただければ幸いです。


   /土屋 武志

著者紹介

土屋 武志(つちや たけし)著書を検索»

昭和35年生まれ。上越教育大学大学院学校教育研究科修士課程修了。現在,愛知教育大学教授。文部科学省高等学校学習指導要領解説地理歴史編作成協力者(日本史主査)。愛知県岡崎市教育委員会前委員。愛知県NIE推進協議会会長等。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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