- 第1章 国語授業で使えるキーフレーズの目的と価値
- 物語を読み解く
- 説明文を読み解く
- 教材と向き合わせる
- 学びを確かなものにする
- 意欲を喚起する
- 話し合いを活性化する
- 話す力を伸ばす
- 聞く力を伸ばす
- 子どもに寄り添う
- 価値づけ,評価する
- 第2章 目的別国語授業で使えるキーフレーズ100
- 1 物語を読み解くためのキーフレーズ
- 001 いつのお話?
- (時の設定の確認)
- 002 お話の場所はどこ?
- (場の設定の確認)
- 003 お話にはだれが出てくる?
- (人物の設定の確認)
- 004 一番大きく変わったのはだれ?
- (中心人物,重要人物の確認)
- 005 登場人物の関係を,図で表してみよう
- (人物の関係の把握)
- 006 「題」は大事だよ!
- (題名の3つの型の意識づけ)
- 007 紙芝居にするとしたら,何枚いるかな?
- (場面構成の意識づけ)
- 008 どんな出来事があったのか教えて
- (出来事・事件の整理)
- 009 ここは声に出して話しているの?
- (会話文・地の文の区別)
- 010 夏目漱石って,猫なんだよね
- (作者・語り手(話者)の区別)
- 011 不思議な世界の入口と出口が見つかるかな?
- (現実世界と非現実世界の区別)
- 012 どんなお話?
- (概要の把握)
- 013 もしも知らない人に短く伝えるとしたら?
- (あらすじの説明)
- 014 最初と最後で,どう変わったの?
- (前ばなし・出来事・後ろばなしの確認)
- 015 何が大きく変わったの?
- (物語の変容の確認)
- 016 どこで一番大きく変わったの?
- (クライマックスの焦点化)
- 017 どんな気持ちなのかな?
- (心情の理解)
- 018 なぜ? どうして?
- (原因の追究)
- 019 どのくらい?
- (イメージの深化)
- 020 このお話がおもしろいのは,どんなところ?
- (作者の工夫・しかけへの着目)
- 021 におわせていることがあったでしょう?
- (伏線の発見)
- 022 この作品から,あなたが受け止めたことは何ですか?
- (作者のメッセージの受け止め)
- 2 説明文を読み解くためのキーフレーズ
- 023 新しく知ったことは,どんなことかな?
- (初発の感想・内容把握)
- 024 主語と述語をはっきりさせ,一文で表してみよう
- (内容の要約)
- 025 どこで分かれるかな?
- (はじめ・なか・おわりの確認)
- 026 一番伝えたいのは,はじめ?おわり?両方?
- (頭括型・尾括型・双括型の確認)
- 027 この部屋にどんな名前をつけようか?
- (小見出しの作成)
- 028 みんなに問いかけている文はどれかな?
- (問いの文の把握)
- 029 「問い」の「答え」は,どこにあるのかな?
- (問いに対する答えの発見)
- 030 具体的な例は,どこに書いてあるかな?
- (具体と抽象の見極め)
- 031 「それ」って何?
- (指示語の確認)
- 032 どの段落にありますか?どの文ですか?
- (思考の限定)
- 033 どうしてこの順番なのかな?
- (時間的な順序・事柄の順序の意味の確認)
- 034 段落を図で表せるかな?
- (全体構造の視覚化)
- 035 筆者はみんなに何を伝えたいんだろう?
- (要旨の確認)
- 036 筆者はこう言ってるけど,みんなはどう思う?
- (意見文・感想文の作成)
- 3 教材と向き合わせるためのキーフレーズ
- 037 はじめて読んでどんなことを思うかな?
- (初発の感想の意識化)
- 038 何かわからないところはありませんか?
- (未知の自覚・問いづくり)
- 039 変だな,おかしいなと思うところはありませんか?
- (疑問・矛盾の自覚化)
- 040 書けた人から,先生のところに持っておいで
- (意見の確認)
- 041 どっちか考えてみよう
- (意見の選択)
- 042 みんなはどう思いましたか?
- (意見の整理)
- 043 自分の考えを,黒板に書いてください
- (意見の公開)
- 044 同じところはどこだろう?
- (共通点の整理)
- 045 違うところはどこだろう?
- (相違点の整理)
- 4 学びを確かなものにするためのキーフレーズ
- 046 新しい「国語言葉」を教えるね
- (学習用語の確認)
- 047 番号を打ちながら書いてごらん
- (ナンバリング)
- 048 文章の中に答えはあります
- (論理的な思考の促進)
- 049 この言葉を使って,例文がつくれるかな?
- (例文作成による技法の習得)
- 050 工夫を見つけることができるかな?
- (表現技法の発見)
- 051 どうしてリズムがいい感じがするのかな?
- (伝統的なリズムの発見)
- 052 そういうつもりで読んでみよう
- (解釈のある音読)
- 053 色で表すと何色かな?
- (象徴としての色の想像)
- 054 今日の雨を○○雨っていうんだよ
- (学習の適時性の確認)
- 5 意欲を喚起するためのキーフレーズ
- 055 今日は何を勉強するかというとね…
- (めあての確認)
- 056 1人で読める人?1人で読みたい人!
- (音読の意欲喚起)
- 057 まだの人はいますか?
- (全員参加の保障)
- 058 どっちの意見が多いと思う?
- (意思表明の支援)
- 059 多数決で決めていい?
- (話し合いの意義の確認)
- 060 わからないかもしれないなぁ…
- (挑発による意欲喚起)
- 6 話し合いを活性化するためのキーフレーズ
- 061 ペアで話し合ってみよう
- (機能に応じた話し合い(言い合う))
- 062 グループで意見を1つに決めてごらん
- (機能に応じた話し合い(決める))
- 063 できるだけたくさん出してください
- (機能に応じた話し合い(たくさん出す))
- 064 15秒待って,意見がなかったら話すよ
- (話し合いへの参加意欲の喚起)
- 065 とっておきの意見はとっておこう!
- (意見を取り上げる順番の調整)
- 066 (黒板の)どこに書くと思う?
- (意見の整理)
- 067 同じでいいから,自分で言ってごらん
- (多様な意見の表出)
- 068 「いいでーす」は,いいです!
- (形式的な話型の否定)
- 7 話す力を伸ばすためのキーフレーズ
- 069 正しく,はっきり,すらすら
- (音読の指導(基本の三原則))
- 070 1つの言葉のまとまりは意識して,ゆっくり読もう
- (音読の指導(速さと言葉のつながり))
- 071 考えながら音読しよう
- (音読の指導(目的の明確化))
- 072 天使の声を出してごらん
- (朗読の指導(声の高さ))
- 073 「…です」と言いきろう
- (発言語尾の指導)
- 074 「どうですか?」って,聞いてごらん
- (話し合いの話法の指導)
- 075 「…でしょ?」って,確認してごらん
- (聞き手に対応した発表の指導)
- 076 …には,黒板君しかいないよね?
- (相手を意識した発表の指導)
- 8 聞く力を伸ばすためのキ―フレーズ
- 077 今,だれが話しているの? どこにいるの?
- (聞く態度の指導)
- 078 瞳を開いて聞いてごらん
- (傾聴の指導)
- 079 対応しよう
- (反応の仕方の指導)
- 080 「。」「、」で「うん」
- (対応の態度化の指導)
- 081 もう1回言ってみて。大事なことを言ったよ
- (聞いているかどうかの確認)
- 082 手には何も持ちません
- (聞き方の指導)
- 083 自分で大事だなと思ったら,すぐメモするんだよ
- (メモを取りながら聞くことの指導)
- 9 子どもに寄り添うためのキーフレーズ
- 084 先生と同じ速さで書いてごらん
- (速記力の育成)
- 085 自分の意見は,話し合いのチケットだよ
- (意見をもつことの指導)
- 086 あとどのくらい時間がほしい?
- (作業時間の自覚化)
- 087 とってもいい意見だから,後で発表してくれない?
- (発表への勇気づけ)
- 088 自信のない人から発表してもらいます
- (自信のない子どもへの配慮)
- 089 ここまで声を届けてごらん
- (声の大きさのイメージ)
- 090 考えが変わるのは,すばらしいことだよ
- (話し合いによる変容の肯定)
- 10 価値づけ,評価するためのキーフレーズ
- 091 いいねぇ! すばらしい! うまい! いい感じ!…
- (テンポのよい言葉かけ)
- 092 先生はわかるよ
- (発言への共感)
- 093 これ,だれも書いてないよ
- (個性的な意見の価値づけ)
- 094 おもしろいなぁ!どうしてそう思ったの?
- (独創的な意見の価値づけ)
- 095 証拠が出た!なんだか解決に近づいてきたぞ
- (根拠の発見の価値づけ)
- 096 見つけた!ちょっと聞いて
- (よさを広げる中間評価)
- 097 何がよかったかわかる?
- (よさの共有)
- 098 今のをみんなで真似してみようか
- (モデルの共有)
- 099 山登りだとすると,今はどのあたり?
- (活動の進み具合の自己評価)
- 100 前のノートと見比べてごらん
- (伸びの自己評価)
はじめに
本書を手に取ってくださった先生にお聞きします。
「先生は授業中,どのような言葉を使って指導していますか?」
日本語,英語,中国語などの言語を思い浮かべた方。
標準語かお住まいの地域の方言を思い浮かべた方。
「〜です。〜ます。」「〜だ。〜である。」という敬体・常体を思い浮かべた方。
優しく,厳しく,明るく,暗く,という性格や声質を思い浮かべた方。
いろいろでしょう。
そのくらい「言葉」のイメージは曖昧で人それぞれです。
本書でいう「言葉」とは,教師が授業中に意図的に発する指導言・助言・評価言を指します。
また,教師が教えたい事柄を,知らない子どもに対して投げかける指導言を「発問」とします。
授業中の子どもの活動に対して,教師が目指す姿に向けて,その場,そのとき,その瞬間に投げかける助言・評価言を「言葉かけ」とします。
教師には,職業として教師だけがもち得る「言葉(発問・言葉かけ)」があります。それを意識し,いつ,どんなときに使うのか,その目的・意図を明確にすることによって子どもたちへの指導が効果的になります。本書では,国語授業にかかわるそれらの特徴的な言葉を,できる限り一般化し,「キーフレーズ」として集めてみました。
本書には,100のキーフレーズが載せてあります。どのページから見ていただいても構いません。ページをめくって気になる言葉をどうぞご覧ください。
第2章の見開きの左ページには,キーフレーズとそのキーフレーズがどんな目的で使われるのかを端的に示しています。その下には,キーフレーズが使われる場面が,教師(T)と子ども(C)の対話で描かれています。実際の授業において,どのようなやりとりの中でキーフレーズが用いられるのかがわかりやすいように,臨場感のある描写に努めています。
見開きの右ページには,キーフレーズの解説と,授業例で教師がキーフレーズを使うに至った背景を書いてあります。教師の発問・言葉かけには,必ず目的や意図があるのがおわかりいただけるはずです。加えて,同じ場面で使えるその他のフレーズや使用上の注意点なども示しています。
100のキーフレーズは,目的によって10のジャンルに分けてあります。
前半の5つのジャンルは,国語という教科の特性が特に表れているキーフレーズです。国語の教科書に出てくる学習用語を教えるためのもので,授業の中心発問として使うことができるキーフレーズを多く扱っています。
後半の5つのジャンルは,国語の授業に限らず,他の教科・領域などでも広く利用可能なキーフレーズが中心になっています。話し合いを活性化するためのキーフレーズは,主体的で対話的な学びにつながります。また,話す・聞く力を伸ばすためのキーフレーズは,学級づくりにも役立ちます。価値づけ,評価するためのキーフレーズは,教師と子ども,あるいは子ども同士の関係を良好なものにすることにも貢献します。
これらのキーフレーズは,事前に準備できるものと瞬時に発するものがあります。中には「これ,使ってみたいけど,中心発問とは違って瞬時に使うものだから」というものもあるかもしれません。それでも使う場を意図的に仕組むことで子どもたちの学習を豊かにすることができます。そもそも,100のキーフレーズは,このまま言わなければならないというものではありません。目の前の子どもの実態に応じて先生なりにアレンジしてください。そうすることで,借り物ではない,先生にとってオンリーワンのキーフレーズになるはずです。そうして,よりよい国語授業づくりに役立てていただければ幸いです。
2021年12月 /広山 隆行
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- 明治図書
- 他の教科のシリーズも使っていますが、発問について考える際に参考になります。2022/2/2620代・小学校教員