- まえがき
- 準備編 指導の裏ワザを使いこなすために
- 01 モノクロからカラー
- 02 自分の色はどんな色
- 03 なくせ,教師の黒星
- 04 つくれ,子どもの白星
- 05 「指導する」と「指導しない」の間に広がるグレー
- 実践編 「荒れのピンチ」を乗り切る学級裏ワザ指導大全
- 学級づくり
- CASE 01 忘れ物が多い
- 方針@ 見直す
- 方針A 10分ママになる
- CASE 02 小さなケンカが絶えない
- 方針@ ロールプレーイングする
- 方針A 環境を整える
- CASE 03 クラス愛を感じない
- 方針@ 守り神をつくる
- 方針A 文化をつくる
- CASE 04 子どもと関わりがもてない
- 方針@ 1対1で関わる
- 方針A 1対多で関わる
- CASE 05 日直や係の仕事を嫌がる
- 方針@ 特典をつける
- 方針A 価値づけをする
- CASE 06 席替えの雰囲気が悪い
- 方針@ プロジェクトメンバー制度にする
- 方針A 頻度を操作する
- CASE 07 雨の日に荒れが目立つ
- 方針@ お楽しみをつくる
- 方針A 雨の日ラッキーデーをつくる
- CASE 08 掃除をしない
- 方針@ 成果で終わる
- 方針A 掃除をさせない
- CASE 09 給食を食べない
- 方針@ 時間をつくる
- 方針A 空気を操る
- CASE 10 学校に来にくい子がいる
- 方針@ 見える応援をする
- 方針A グレーを攻める
- CASE 11 子ども間に力関係を感じる
- 方針@ 優しくなれる時間をもつ
- 方針A 予防は最大の対策
- CASE 12 隣のクラスが荒れてきた
- 方針@ 美味しくする
- 方針A みんなで持つ
- 行事指導
- CASE 13 運動会が不安だ
- 方針@ 0.5秒を目指す
- 方針A 理想を語る
- CASE 14 音楽会が不安だ
- 方針@ 武者修行をする
- 方針A ブラボーおじさんになる
- CASE 15 修学旅行が不安だ
- 方針@ お金の話を語る
- 方針A 最悪を言わせる
- 授業づくり
- CASE 16 子どもたちの反応が悪い
- 方針@ アイテムに頼る
- 方針A みんなに頼る
- CASE 17 楽しく授業ができない@〜図工編〜
- 方針@ すきま図工レクをする
- 方針A ロマンティックをつくる
- CASE 18 楽しく授業ができないA〜小ネタ編〜
- 方針@ つくって作る
- 方針A つくって創る
- CASE 19 時間を守れない
- 方針@ 教師が時間を守る
- 方針A システムをつくる
- CASE 20 私語が多い
- 方針@ 静かをつくる
- 方針A 様々な指導をする
- CASE 21 態度が悪い
- 方針@ フォーメーションを変える
- 方針A 態度の良し悪しをチェックする
- CASE 22 自習ができない
- 方針@ メニューをつくる
- 方針A 禁断の手を使う
- CASE 23 習熟の時間の差が大きい
- 方針@ バリエーションを増やす
- 方針A みんなで進む
- CASE 24 子どもが自分の意見を出せない
- 方針@ 意見を浴びる
- 方針A 意見を出す
- CASE 25 子どもたちの成績が上がらない
- 方針@ フェアを心がける
- 方針A テストにこだわる
- CASE 26 自分以外の授業が荒れてきた
- 方針@ ルフィになる
- 方針A いっしょに学ぶ
- 子どもとの関係づくり
- CASE 27 子どもと上手く関係をつくれない
- 方針@ 量を重視する
- 方針A 返りを期待するのをやめる
- CASE 28 子どもに指導が入りにくい
- 方針@ 心配する
- 方針A 作戦を立てる
- CASE 29 子ども同士の関係が冷えている
- 方針@ 動画を作る
- 方針A イベントを作る
- 保護者・同僚との関係づくり
- CASE 30 保護者が怖い
- 方針@ できることを言う
- 方針A 育ててもらう
- CASE 31 保護者に信頼されていない
- 方針@ 通信を出す
- 方針A 先手を打つ
- CASE 32 保護者が協力してくれない
- 方針@ 仲間になる
- 方針A 自分を見つめ直す
- CASE 33 同僚とうまく協力できない
- 方針@ 妖精になる
- 方針A かわいい後輩,芯のある先輩になる
- 最終局面
- CASE 34 荒れが進んでどうにもならない
- 方針@ ひっさつ技を使う
- 自己改善
- CASE 35 余裕がない
- CASE 36 時間がない
- CASE 37 手立てがない
- CASE 38 成長したい
- CASE 39 自分らしくありたい
- あとがき
まえがき
「流した汗はうそをつかない」
と,大好きだった小学校6年生の担任であるY先生に,卒業アルバムへ書いてもらいました。その言葉を大切に,その時々で汗をかきながら,かつては世界を救う勇者だった自分の夢がプロバスケ選手,社長,そして小学校の先生へと変わっていきました。
10数年前。夢叶い,念願だった小学校の先生になり,かわいくてたまらない3年生の担任になりました。みんなやる気満々,たくさん遊んで,授業して,充実した4月でした。しかし,ゴールデンウィーク明け頃から(何かおかしいぞ…)と危機感を覚えました。
よく見ると,掃除をしているのはクラスの半数。小さなトラブルが絶えない。宿題忘れや忘れ物は多い。休み時間には黒板に自由に落書きをしたり,奇声のような大きな声を上げたりする様子…。まさに「荒れのピンチ」だったのです。学級崩壊という言葉が,何度もよぎりました。
幸い,私には毎週のようにいつもの店で酒を飲みながら話を聞いてくださる先輩方や,励ましてくれる同期がいました。「あるある! 分かるでぇ」「そういう時はこう言ってみたら?」「私だったら…」そんな仲間たちとの会話の中で課題が整理されました。
荒れのピンチと戦いながら,だんだん離れ離れになっていくクラスの気持ちを何とかまとめたいと考えました。試行錯誤しながらある日,小学校時代にY先生に褒めていただいた「チンプーくん」という守り神(p.32参照)を教室で紹介しました。
これがヒット。3年生の子どもたちは食いつき,似たキャラクターをつくったり,新聞で漫画を連載してくれたりする子も出てきました。秋の運動会では,チンプーお守りをつくって頑張りました。その効果か,綱引きで優勝をした時はクラスみんなで喜びあうことができました。
守り神と称したクラスのマスコットキャラクターをつくる…それだけで,少しだけピンチを防ぐことができたことに驚きました。
それから時は流れ,いろいろなピンチを乗り越えたり乗り越えられなかったりしながら,私も中堅としてこの仕事にも慣れてきました。最近は,生活指導主担や学年主任をしながら,あの頃は想像できませんでしたが,ちょっとだけ学校全体に関わる機会が増えてきました。
そんな私は,4月の職場の雰囲気が大好きです。1日に新しい先生が異動されてきて,春休み中に自分が受け持つクラスが分かり,引き継ぎをし,学年団で教材を選び,遠足の下見に行き,「こんな学級に,こんな学年にしたいよね!」という期待でどこか興奮状態の,あの4月の職場が。
どんな学級開きをしようか。どんな実践をしようか。昔の私を見ているかのような,嬉しそうな,やる気に満ちた後輩たちの姿が眩しいのです。刺激的で4月は毎年ワクワクします。
しかし,その興奮が5月,6月に一旦冷めてしまうのを何度も見てきました。気づけば,希望に満ちた職場が悩みや疲れでどんよりしてくるのです…。
この本には,私が実践してきた裏ワザを詰め込みました。
たくさん動いて汗をかいたり。
うまくいくかドキドキして冷や汗をかいたり。
(こんなの怒られないか?)と緊張して脂汗をかいたり。
ピンチを乗り越えた子どもの変容を見て,目から大粒の汗を流したり。
たくさんの汗をかいて見つけてきた裏ワザたちです。私は「流した汗はうそをつかない」と,やっぱり今も信じています。
どこから読んでいただいても構いません。あなたやあなたのクラスのピンチが少しでも解決することを願って書きました。何か1つでも試して,またあの4月の雰囲気に戻していきませんか?
2022年5月 /宇都宮 誠
いつも見返して、学級経営を振り返りたいです
正攻法を身に付けておく必要はあるものの、こういう引き出しがあればクラスの安定につながることは間違いなしです。
今年は困ったとき、この本にかなりお世話になりました。