国語科授業改革双書33子どもとひらく国語科学習材・作文編

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国語科学習材の開発を共同研究で試みた成果。言語活動を具体化させるための方法として歳時的方法と風土的方法を取り上げ新しい題材を開発。


復刊時予価: 2,904円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-318925-X
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 208頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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はじめに /中洌 正堯
序章 文章表現学習材開発論
一 文章表現学習材開発の拠点と方法 /中洌 正堯
一 文章表現教育の目標/ 二 文章表現教育の領域/ 三 文章表現教育の内容/ 四 文章表現の学習材
二 地域に根ざした学習材の開発 /小山 泰
一 地域素材を作文指導に活用する意義/ 二 地域素材を用いた作文指導実践事例/ 三 まとめ
第一章 わたしたちの情報探索
序 情報活用・発信・利用のための作文指導 /佐藤 明宏
一 はじめに/ 二 理解と関連した説明的表現について/ 三 意見文について/ 四 ディベート作文について/ 五 おわりに
一 一年生に「生き物のふしぎ」を伝えよう
―「虫のゆりかご」(光村 三年下)― /森山 勇
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全一八時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
二 「わたしたちの俳句歳時記」を作ろう
―「季節とわたしたち」(大阪書籍 四年上)「竹とともに生きる」(大阪書籍 五年上)― /大石 正
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全二一時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
三 「ディベート型取材」で作る 町への提言集
―「わたしは文章設計士」(大阪書籍 五年下)― /山本 知恵美
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全七時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
四 「椋鳩十 物語歳時記」を作ろう
―「大造じいさんとがん」(学校図書 五年上)・ 椋鳩十の作品― /吉田 伸子
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全一六時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
第二章 わたしたちの生活の発見
序 文化参加のしるし
―「国語地域教育学」受容・理解の試み(一)―/ 牧戸 章
一 宮澤賢治が「グスコーブドリの伝記」で描いた世界/ 二 「ことば」の生成/ 三 「ことば」から世界をどうとらえるか/ 四 文化参加のしるし
一 「天気予報の文章」を自作する
―高学年・短作文指導の事例― /佐倉 義信
一 「天気予報の文章」とは/ 二 共通題材で書く/ 三 自由題材で書く/ 四 まとめ
二 意見文「残菜について考えよう」(六年) /佐藤 俊幸
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全八時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
三 全校詩集『ゆずり葉たちのうた、いっぱい』に見る学習材 /河野 寿賀子
一 はじめに/ 二 逆瀬台小学校の子ども、その地域と時季性/ 三 逆瀬台っ子たちの目と耳/ 四 まとめ
第三章 わたしたちの文化の発信
序 言語文化生態論(エコロジカルな言語教育理論)として
―「国語地域教育学」受容・理解の試み(二)― /牧戸 章
一 環境としての言語文化/ 二 虚構の環境/ 三 子どもたちの表現する「地域性」/ 四 新しい言語文化の創造
一 学校カルタをつくろう
―「カルタ」づくり(光村 一年下)― /今宮 信吾
一授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全九時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
二 たくみ君とみきちゃんにつたえよう「五小校区のたから」
―「読んでもらう相手を考えて」(東京書籍 三年下)― /岸本 憲一良
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全一二時間+課外)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
三 子どもと創る本校ガイド(五年) /田窪 豊
一 授業にあたって/ 二 単元の目標/ 三 単元計画(全一一時間)/ 四 授業の実際/ 五 まとめ
おわりに /長崎 伸仁

はじめに

 「国語科学習材」というとき、言語そのものの知識や体系、あるいはその研究の仕方、話すこと・聞くこと、書くこと、読むことという言語活動そのもの、その活動を具現化させる話題・題材、それにともなう言語による認識や思考、さらにそれらを体制化する態度や習慣などのすべてが、対象となる。

 右の諸事項の中で、私たちは、言語活動を具現化させる話題・題材とその質量に注目し、そこから言語そのものの教育と言語活動の教育の二側面に分け入ろうとしたのである。そのとき、子どもたち(学習者)の肩に後ろから手を置いて、その肩ごしに前を見ようとしたことが、『子どもとひらく国語科学習材』の書名となった。

 〈作文編〉は、先の〈音声言語編〉と姉妹編をなしている。〈音声言語〉に対して〈文字言語〉とすると、書くことも読むことも含んでしまう。ここは書くことを主とするので文章表現を押し立てたい。ただ、〈文章表現編〉では書名としてはなじまない。そこで、これまでの伝統に生きてきた〈作文〉に新しい役割を付与して書名とした。書中〈作文〉と〈文章表現〉の二つの用語が混在するが、その学習指導上の願いは別のものではない。

 さて、言語活動(作文・文章表現)を具現化させる話題・題材とその質量を追究するために、私たちの選んだ方法は、「歳時記的方法」であり、「風土記的方法」である。これは、日本に暮らす人々の生活を、時間軸と空間軸の座標上にとらえようとするとき、自ずから選ばれる方法でもある。時間軸は時季性、空間軸は地域性と置き換えることも可能である。

 時季性、地域性は、しかし、学習者の日常生活の中では、見過ごされやすいものでもある。私たちは、時季性、地域性にもとづく文章表現学習材開発について、学習者を次のように段階を追って導いていくことが必要になる。

 時季性、地域性にもとづく話題・題材が与えられて、自分の学習材とする段階、話題・題材の選択肢が与えられて、自分の学習材とする段階、ヒントが与えられて、自分の学習材とする段階、大枠が導かれて、自分の学習材とする段階、導きなしに自ら学習材を発見する段階、というように。

 個々の実践においては、どの段階を経過しつつあるものかをたえず測定し、次の展開を目ざさなくてはならない。

 本書の序章には「文章表現学習材開発論」を置き、右の「歳時記的方法」「風土記的方法」を中心として、「文章表現学習材開発の拠点と方法」「地域に根ざした学習材の開発」について論述した。

 第一章を「わたしたちの情報探索」とし、ここには、「序」と四つの実践を配した。

 また、第二章を「わたしたちの生活の発見」とし、ここには、「序」と三つの実践を配した。

 そして、第三章を「わたしたちの文化の発信」とし、ここには、「序」と三つの実践を配した。

 実践のどれもが、「歳時記的方法」「風土記的方法」をなんらかのかたちで採用している。取り上げられた文章表現から、時季性と地域性に生きる子どもたちの呼吸が伝わってくることが期待される。

 日本の文章表現の学習指導に関する実践・研究の集積は、たずねれば豊かで深いものを蔵している。本書は、そうした伝統をふまえつつ、今日における新しい角度からの実践・研究への参画である。


  一九九九(平成一一)年一月   兵庫教育大学教授 /中洌 正堯

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