文科省全国学力調査 中学校国語B問題を授業する
「活用」の力とはなにか

文科省全国学力調査 中学校国語B問題を授業する「活用」の力とはなにか

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「活用力」を身につける指導案と評価問題の作り方がわかる!

B問題が投げかけた課題とは?実際のB問題が示す学力観と授業改善のための「10の視点」を導き、さらに「活用」型の学力をつけるモデル指導案と評価問題作成の実例を収録。中学国語は今後どうあるべきか、PISA型「読解力」の研究成果等をもとに具体的に提案した。


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ISBN:
978-4-18-318118-3
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 120頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに /岩間 正則
T 「B問題」がつきつける国語科授業改善とは
一 「B問題」はどのような学力観を示したか
@ 法律に位置づけられた学力として
A 実社会に出て活用できる学力として
B 国際標準の学力として
二 「B問題」がつきつけている実践課題とは
@ 書く力の育成の充実を図る
A 考えるプロセスを重視する
B カリキュラムを検討する
三 これまでの授業をふり返る
@ 「話すこと・聞くこと」の領域
A 「書くこと」の領域
B 「読むこと」の領域
四 「B問題」を生かした10の授業改善の視点
@ 書くことの機会を多くする
A 書き方を練習する
B プレゼンテーションの機会を多くする
C 文章全体を踏まえた課題設定を行う
D 表現の仕方に着目する
E 複数教材をもっと授業に取り入れていく
F 非連続型テキストや映像を活用する
G 自分の考えの根拠を明確にしていく
H 学習を総合的に組み立てる
I 読書に親しむ
五 指導と評価の一体化
U 「B問題」を生かした授業
一 「調べたことを発表する(ロボット)」問題からアプローチする
@ これからの学習指導をこう変えよう―「活用」を見すえて
(1) 指導計画を見直す
(2) 教材研究のあり方を見直す
(3) 指導法を見直す
(4) 公表結果をこう読む
A 「活用」の力を付けるモデル指導案
(1) ディベートの映像を見て、自分の意見を書こう
(2) 立場を決めて話し合おう
二 「文学作品を評価しながら読む(蜘蛛の糸)」問題からアプローチする
@ これからの学習指導をこう変えよう―「活用」を見すえて
(1) 「作品の内容や表現上の特徴をとらえる」ということ
(2) 「作品の展開や心情の変化に着目する」ということ
(3) 「作品の内容や構成、表現上の特色を踏まえ、自分の考えを書く」ということ
(4) 公表結果をこう読む
A 「活用」の力を付けるモデル指導案
(1) 「『走れメロス』の登場人物の描かれ方を採点しよう」とその留意点
(2) 「『竹取物語』文章構成を評価しよう」とその留意点
三 「複数の資料を比較しながら読む(広告カード)」問題からアプローチする
@ これからの学習指導をこう変えよう―「活用」を見すえて
(1) 「複数の資料を扱う」という視点から
(2) 「ひとまとまりの記述(表現)をする」という視点から
(3) 公表結果をこう読む
A 「活用」の力を付けるモデル指導案
(1) 「教科書編集者の意図を読む」とその留意点
(2) 「折り込みチラシ制作者の意図を読む」とその留意点
V 新たな評価問題をつくる
はじめに
一 「B問題」の解説から着眼点をさぐる
@ ねらい(評価したい力)を明確にする
A 評価したい力が発揮された姿を想起する
B 記述式の問題を取り入れる
二 問題作成のプロセスをたどる
@ 評価の観点
A ねらいに合ったテキストを選ぶ
B 問いのための場面を設定する
C ねらいと評価の観点を具体化する
D 問いと授業をふり返る
(1) ねらいに示した力がどの程度生徒に付いているか
(2) 使用したテキストと設問は実態に沿ったものであったか
(3) 日常の授業での課題設定と学習活動は適切であったか
三 評価問題のバリエーション
おわりに

はじめに

 平成十九年四月二十四日、全国の小学校六年、中学校三年合わせて約二三七万人を対象にした全国学力・学習状況調査が、約三万三〇〇〇校の小中学校で一斉に行われた。調査の対象となったのは、原則として小学校第六学年の全児童と中学校第三学年の全生徒である。学年全員が対象のテストは、昭和三十九年以来四十三年ぶりだったこともあり、実施される前から教育現場では大きな話題となっていた。

 この調査の目的は、「義務教育の構造を改革して、その質の保証・向上を図っていくこと」で、主として「知識」に関する「A問題」と、主として活用に関する「B問題」の二種類よりなっていた。とくに活用についての「B問題」は、予想したものと問題の設定や問い方が大きく違っていたこともあり、かなり注目を浴びる問題となった。


 こうした全国学力・学習状況調査の結果が先頃公表された。

 実現状況としては「A問題」では、八二・二パーセント、「B問題」では七二・〇パーセントであった。

 「A問題」については、この数値が示すように、概ね満足できる状況にある。学習した「知識」についての習得がきちんとされていたといえるだろう。

 「B問題」については、「A問題」よりも実現状況は下回るものの、こちらも概ね満足できる状況といえるだろう。個々の問題や無解答率についてもいろいろと課題はある。しかし、それでも現行の学習指導要領に基づき[確かな学力]が育成されつつあると考えられる。


 ところで、今回の全国学力・学習状況調査が投げかけたものには、結果の公表とそれにともなう教育行政や政治的なものなど様々な問題があるが、学校現場に直接かかわるものとしては、とくに次の三点のことが挙げられるのではないだろうか。

 第一に、学力の問題である。今回評価しようとしているのはいうまでもなく、知識や理解はもちろんのこと学ぶ意欲や課題解決能力なども視野に入れた[確かな学力]である。とくに、「B問題」では活用に関するものが問われている。活用の考え方は改正された学校教育法にも位置づけられており、今後ますます重視されるものとなる。活用は、「効果的に社会に参加する」ためのPISA型「読解力」の育成とも相通じるものがある。

 第二に、授業改善の視点の問題である。「B問題」では、実生活の場面を想定した問題や作品全体を考えて結末について考えるなど、これまで行われていた国語の試験問題とはかなり違っていた。これは[確かな学力]の育成のためにどのような授業改善をしていったらいいのかということに対してのメッセージとしてとらえることができる。「B問題」を踏まえての授業改善の視点をさぐりたい。

 第三に、評価についての問題である。まずは生徒一人一人の学習状況の評価について考えたい。そのためには結果をどのように個人に返すか工夫する必要があるだろう。また今回の結果は各学校の国語科のカリキュラムを評価する一つの視点でもある。「第二に」でふれたように授業改善につなげるようにしたいものである。さらに「B問題」は、定期試験といった評価問題作成の改善にも参考になる。学習した内容の知識を確認することから、知識や技能の活用についても評価できるような評価問題に変えていきたい。


 こうしたことを受け、本書では全国学力・学習状況調査の「B問題」から考えられる課題をもとに、[確かな学力]の育成の方策について考えた。それぞれの章では、主として次のような内容について述べている。


 ◆第T章……「B問題」が示している学力や、「B問題」がつきつけている課題について考察した。さらに、ここでの課題を受けて授業改善のための10の視点を示した。この10の視点は、第U章での「『B問題』を生かした授業」のところで、授業モデルを示す際にも基本の考え方となっている。

 ◆第U章……まず「B問題」の三つの大問と出題要旨、さらにはその結果に対しての解説を示した。次に、それぞれの問題をもとに、授業改善のための具体的な方法を提示した。ここには、活用の力を身に付けるための授業モデル指導例を指導案の形式で入れてある。こうした指導例を参考にして、さらに授業改善の工夫をして欲しい。

 ◆第V章……新しい評価問題を作成するための手順と、評価問題例をいくつか示した。評価問題を工夫することは、授業改善をしていくためには欠かすことができないポイントの一つである。なお、ここに示した問題例は実際に試行しているものである。まだ改善の余地はあるが、評価問題を作成する際の参考にして欲しい。


 ところで、この本は「B問題」をもとに課題を提示し、[確かな学力]を身に付けさせるための具体的方策について述べたものである。「B問題」への対策本ではないことを確認しておきたい。なお、この本は、横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校の実践を中心にまとめてある。原稿をまとめるにあたりご指導いただいた同校校長(横浜国立大学教育人間科学部教育実践総合センター教授)木展郎先生ならびに明治図書の佐保文章さんのご厚意に心から感謝申し上げたい。


  平成十九年十月   /岩間 正則

著者紹介

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横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校副校長


横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校では、2005年よりPISA型「読解力」の研究に取り組んでいる。本書もそうした研究をベースにしている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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