- はじめに
- Chapter1 マナーとは―知っておきたいマナーの基本
- 01 モラル・ルール・マナーの違い
- 違いを説明できますか?
- 「モラル」は道徳
- 「ルール」は規則・法律
- マナーは思いやり
- 02 マナーはなぜ必要なのか
- 人を敬う思いやり
- @子どもの心の成長を促すため
- Aトラブルを回避するため
- Bチャンスを逃さないため
- 03 第一印象の重要性
- 周りもあなたも選んでいる
- 第一印象が決まる時間
- 第一印象はどこで決まるか
- 第一印象アップは、まず見た目を意識する
- 声の表情も大切
- 04 本気の笑顔と嘘つき笑顔
- 笑顔の違い
- 笑顔エクササイズ
- 笑顔は知性
- 笑顔が減っていないか
- 05 式典での身だしなみ
- 入学式・卒業式での装い
- 男性教師の装い
- 女性教師の装い
- アンボタン(Unbutton)マナー
- 06 子どもへのマナーアプローチ
- マナーが整うとクラスに思いやりが芽生える
- クラスで決めたいマナー事例
- Chapter2 美しく整った立ち居振る舞い
- 01 姿勢とは「姿に勢い」
- 姿勢がよいメリット
- 姿勢が悪いデメリット
- 姿勢チェックポイント
- よい姿勢とは
- 02 流れ動作からストップ・ザ・モーションへ
- 品格アップは動作を止めることから
- 03 式典で差がつく美しいお辞儀
- お辞儀とは
- お辞儀のポイント
- お辞儀の種類
- @「語先後ご礼(ごせんごれい)」または「分離礼」
- A同時礼
- 04 落ち着きのなさは手に出る
- 非言語がうるさい人は落ち着きなく見られる
- Chapter3 意外と知らない正しい敬語
- 01 敬語の基本
- 敬語とは
- 敬語の種類
- @尊敬語
- A謙譲語T
- B謙譲語U
- C丁寧語
- D美化語
- 02 これは失礼シリーズ@ 二重敬語
- 二重敬語とは
- @美化語の多用
- A尊敬語の重複
- 03 これは失礼シリーズA 何気なく使ってしまう言葉
- @若者言葉
- A「参考にします」
- B「すみません(すいません)」
- C「お願い致します」と「お願いいたします」
- D「了解しました」
- E「よろしかったでしょうか?」
- F「方」言葉
- G「ご苦労様」
- H「お座りください」
- I「お名前を頂戴できますか」
- 04 クッション言葉と改まった言葉遣い
- クッション言葉
- 改まった言葉遣い
- よく使う改まった言葉の例文
- 05 品格の上がる言葉遣い
- 言い換えの工夫で好印象に
- @「お役に立てて光栄です」「励みになります」
- A「すみません」「申し訳ありません」を「ありがとうございます」に
- B「返信不要です」を優しい言葉で包む
- C「お忙しい中」を「ご多用の中」に
- D「つまらない物ですが」
- E「お心遣い」「お気遣い」
- F「ご自愛ください」
- G「お越しいただき」
- Chapter4 信頼される電話応対
- 01 信頼される電話応対
- 学校の評価につながる第一声
- 笑顔の準備は整ったか
- 第一声は1トーン上げる
- 伝わる発声
- @母音を制する
- A舌のエクササイズ
- 02 好印象な電話の受け方
- 電話応対の基本
- @迅速に
- A正確に
- B丁寧に
- C簡潔に
- 電話応対の流れ
- @第一声は、ハキハキと大きな声で名乗る
- A聞き取りにくいとき
- B名指しの先生が離席中のとき
- C電話での挨拶言葉
- D最後に名乗る
- E欠席の電話にはひと言添える
- 03 伝言メモのポイント
- 来客中は、原則取り次がない
- Chapter5 来客対応と訪問の所作
- 01 ご案内とドアの開け閉め
- ご案内の心構え
- 部屋へのご案内
- ドアの開閉
- お見送り
- 02 お茶とお菓子の出し方
- お茶(お菓子)の準備
- お茶(お菓子)の出し方
- 03 名刺交換
- 名刺交換は自己紹介のスタート
- 名刺交換の準備
- @名刺入れ
- A名刺の確認
- B取り出しやすい工夫
- 名刺交換でのNG
- 名刺交換の手順
- 04 訪問時に気をつけたいマナー
- 学校の代表としての自覚を
- 訪問の前に
- 訪問の流れと気をつけたいマナー
- Chapter6 円滑なコミュニケーション
- 01 コミュニケーションとは
- コミュニケーションは伝わらないもの
- コミュニケーションギャップの原因
- コミュニケーションは対面だけではない
- 02 報連相の重要性
- 報連相はなぜ大切なのか
- 適切な報連相とは
- @報告のポイント
- A連絡のポイント
- B相談のポイント
- 03 聞く・聴く・訊くの違い
- 聞くとは
- @聞く
- A聴く
- B訊く
- 04 ひと言だけで終わりにしない二言挨拶
- たかが挨拶、されど挨拶
- 二言挨拶
- 05 言い方ひとつで印象は変わる
- 言葉の魔法
- 品格アップの言い換え
- Chapter7 アサーティブなクレーム対応
- 01 アサーティブなクレーム対応
- アサーティブ・コミュニケーションとは
- @Win=Win
- ALose>Win
- BWin>Lose
- 02 クレーム対応時の注意点
- クレームの背景
- クレームがあったら
- @傾聴
- A謝罪のタイミングを逃さない
- B冷静に事実確認
- Cメモを取る
- D迅速、丁寧に対応
- E一人で抱え込まない
- F他人事のような対応はしない
- G具体的な解決策と進捗状況を報告
- 二次クレームにつながるNG対応
- @恥をかかせる
- Aたらい回し・情報の共有ができていない
- B対応が遅い
- C学校の都合ばかり押しつける
- 03 クレーマーをファンにするテクニック
- 伝え方で印象は変わる
- ファン化するメッセージの伝え方
- @「アイ(I)メッセージ」私を主語に話す
- A感謝をタイムリーに伝える
- Bクレーム対応時のお詫びの言葉
- 04 いちばん困る「ちんげんさい」
- 「ちんげんさい」とは
- GRROWモデル
- おわりに
はじめに
本書を手に取っていただき、ありがとうございます。
子どもの未来を支えている先生が、その大切な役割をさらに輝かせるヒントを、この本ではお伝えしていきます。
初めまして。昔、吃音だった声とマナーの専門家、吉田正美です。
現在、大手企業、行政、病院など新入社員から管理職、経営者まで幅広い層へ研修講師として全国にお招きいただいています。
また、小学校にて夢を発表する、夢プレゼン授業、卒業式前の立ち居振る舞い授業(歩き方・お辞儀など)、中学校では、職業体験前の電話応対、ルールメイキングなどの演題でゲストティーチャーとして、束の間の先生を体験させていただいています(毎日、子どもたちから刺激をもらえる先生のお仕事が羨ましいです)。
こうして、授業で学校へおうかがいすると、校長先生から、教員を守るためにも教員向けマナー研修をお願いしたいとのご要望をいただくことが多くあります。教育の専門家でもない私が、恐縮ながら、教員の皆さんに向けたマナー本の執筆を切に願った理由は2つあります。
1つ目は、「学校へのご恩送り」です。吃音を治してくださったのは、小学校5年時の担任の先生でした。音読のときはいつも保健室に避難するか欠席する、自信のかけらもない子どもでした。おまけに、赤面症もあり、赤鬼と陰で呼ばれていたことも知っていました。
「今までの先生はごまかせたけれど、私は見逃さない。あなたは笑顔が最高だから、笑顔でゆっくり読んでごらん。赤鬼と笑う人は成敗するから安心しなさい」
このひと言で吹っ切れ、つまらずに音読できたときには、拍手喝采でした。その後、朗読大会へ導いてくださり、賞をいただくまでに進化しました。正に人生を変えてくださった恩人です。人は、人によって磨かれます。あの先生との出会いがなければ、人前で話すことや、ボイストレーニングを生業にすることはなかったことでしょう。
そして、自分を信じることで書く自信を持ち、果敢にチャレンジできるマインドを授けていただいたことにも感謝しかありません。
チャンスは人からしか訪れません。私も、「子どもたちにお節介がしたいけれど、公教育にはなかなか入りづらく、興味のある先生がいらしたらつなげてほしい」と出会う方々に語り、発信を諦めずに続けていたからこそ、本書を執筆するという夢が叶いました。早期よりマナーを身につけることで、学習だけでは得ることができない「生きる力」として将来の信頼、評価につながってほしい思いが1つ目の理由です。
2つ目は、マナーを身につけ人間力を高めていただき、自身を守るプロテクターにしてほしいとの思いからです。
マナーは、その人の美学が現れる生き方です。そして思いやりでもあります。
マナーと聞くと堅苦しいイメージがありますが、コミュニケーション環境が楽になる処方箋なのです。
皆さんにも、安心してお任せできる先生でよかった、先生には何でも相談できる、将来、先生みたいな人になりたい――など、周囲の方を笑顔にさせる先生でいただきたいです。
さて、子どもをはじめ、職員同士、地域、保護者、他校など接する人々が多いにもかかわらず、教員の皆さんには、新入社員研修のようなマナー研修を受講したことがない方が多いことに驚きました。社会人1年目で、経験値もなく、いきなり先生と呼ばれ、お手本になる存在になる視線を受けることは、非常に気の毒でなりません。
実は、言葉遣いや態度が、子どもや保護者との信頼関係を大きく左右します。
・一般企業では通じない、学校の常識は世間の非常識だと思われる風潮にあるのが残念で、なんとかしたい
・子どものお手本になるような、立ち居振る舞いを身につけ、さすが○○学校の先生は洗練されていると、プライベートでも役立つマナーを教えてほしい
・マナーを教える適任者がいないため探していました
など、一般常識を指導してほしいというご要望を数多くいただきます。
3人の年子を持つ私は、PTA本部役員歴も長く、また授業で身近に先生方に接する機会が増え、一保護者の立場では、想像もつかないほどの激務には、本当に頭が下がる思いです。
時には、早朝から夜遅くまで子ども、保護者対応に追われ、授業準備、学級経営、クラブ活動と、毎日が戦争のような忙しさ。3人に一人が過去2年間の間に、教員をやめたいと思ったことがあるという統計もあります。また、悲しいことに、教員を目指す方が減少していることも事実です。
本書では、各章にて事例を挙げてマナーの具体例をお伝えしています。「マナーのきほんのき」として手軽に活用いただければと思います。頭での理解だけではなく、心と体に落とし込むほど、日頃からお手元に置いていただけると、こんなに嬉しいことはありません。
「柔よく剛を制す」「柳に雪折れなし」の教訓があるように、否定せず、柔軟な思考で相手に敬意をはらうことを意識するだけで、十分にマナーは成り立ちます。
あなたの言葉ひとつで、子どもが笑顔になる瞬間を、もっと増やしませんか?
この本が、新任の先生だけではなく、多くの教員の皆さまの一助になれば幸いです。
実り多い教員生活のスタートになりますように。
/吉田 正美
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- 明治図書