- はじめに
- 序 群読という朗読法
- 一 群読の誕生
- 二 教育における群読
- 三 群読の教育的効果
- T 物語の群読とは
- 一 群読は楽しい〜ある研修会風景から〜
- 二 物語を群読する意義〜その歴史的背景をふまえて〜
- 三 国語教育における群読の教育的効果と意義
- 四 授業を活性化する
- 五 物語の群読の基本的な学習過程〜個々と群による作品への主体的な関わり〜
- U 物語の群読の実践
- 一 実践1 『大きなかぶ』(ロシアのおはなし) うちだりさこ訳
- 1 教材の特徴
- 2 指導のポイント
- (1) 発音・発声に気をつける
- (2) 繰り返しのおもしろさを体感する
- (3) 動作化し、イメージを深める
- (4) 配置図の例
- (5) 読みの分担例
- 3 指導の実践例
- 二 実践2 『かさこじぞう』(日本民話) 岩崎 京子
- 1 教材の特徴
- 2 指導のポイント
- (1) 民話の語り口を味わう
- (2) 擬態語や擬音語を生かして読む
- (3) 場面の展開をとらえ、それぞれの情景や人物の心情・行動がよく分かる工夫をする
- (4) 配置図の例
- (5) 読みの分担例
- 3 指導の実践例
- 三 実践3 『村の英雄』
- (エチオピア民話)クーランダー、レスロー 渡辺茂男訳
- 1 教材の特徴
- 2 指導のポイント
- (1) 登場人物の心情変化を表現する
- (2) 一人で読む箇所と複数で読む箇所の対比を生かす
- (3) 各場面における調子の変化を楽しむ
- (4) 配置図の例
- (5) 読みの分担例
- 3 指導の実践例
- 四 実践4 『雪わたり』(宮沢賢治)
- 1 教材の特徴
- 2 指導のポイント
- (1) 場面のイメージ
- (2) 人数構成と声質を工夫する
- (3) 声の重なりとリズムを生かす
- (4) 配置図の例
- (5) 読みの分担例
- 3 指導の実践例
- 五 実践5 『大造じいさんとがん』(椋 鳩十)
- 1 教材の特徴
- 2 指導のポイント
- (1) 行動描写をとらえて、群読譜に生かす
- (2) 場面構成をとらえ、読みのテンポを工夫する
- (3) 読みの構えをつくる
- (4) 配置図の例
- (5) 読みの分担例
- 3 指導の実践例
- 六 実践6 『川とノリオ』(いぬい とみこ)
- 1 教材の特徴
- 2 指導のポイント
- (1) 川のイメージを明確にする
- (2) 川のアンサンブルを工夫する
- (3) 効果的な間やトーンの工夫をする
- (4) 配置図の例
- (5) 読みの分担例
- 3 指導の実践例
- V 物語における群読指導の理論
- 一 群読に適した物語教材の条件
- 二 物語教材において群読譜をつくることの意義
- 1 群読譜とは
- 2 群読譜作成の学習効果
- 3 群読譜の構成
- 三 物語の群読における指導技術
- 1 声の重なりとリズム
- (1) バックコーラス法
- (2) プラスプラス法
- (3) ピックアップ法
- (4) ペア・マッチ法
- (5) ポイントミックス法
- 2 イメージ
- 3 集中力
- 4 間のとり方
- 5 声質
- 6 分量
- 7 ダブルミーニング
- 8 配置図
- 9 読解との関わり
- (1) 個々と作品との関わり
- (2) 子どもたち相互の作品との関わり
- 四 主な指導技術と実践作品一覧
- 五 物語の群読における評価
- 1 評価の観点と系統化
- 2 評価の実際
- (1) 群読譜による評価
- (2) 自己評価と相互評価
- (3) 子どもと教師の聞く力を高め、一人一人の朗読の変容をとらえる
- W これからの国語教育と音声言語教育
- 一 情報化・国際化と音声言語教育
- 二 年間指導計画における群読の位置づけ
- おわりに
はじめに
「群読を楽しみたい。」
という声をこのところよく耳にする。
「では、どうしたら群読で楽しみつつ、国語の力をつけることができるのか。」
ということで、『群読指導細案』全六巻が刊行されるに至った。
その背景に、子どもたちの音声言語に関する能力の低下が嘆かれている。
声が小さい。声は大きいがどなり声になっている。
他愛ないおしゃべりはできるが、自分の意見をしっかりと言えない。
人の話をきちんと聞く姿勢に乏しい。
音声言語教育は、国語科の学習のみならず、日々の生活の中から育てていくことが望ましい。例えば、あいさつ、返事、受け答えなどは、その基本である。
それと同時に、教室中に、その子どもたち一人一人の声が響き合い、また、他の人の声にも真剣に耳を傾けられるようになったら、どんなに素晴らしいだろう。きっと、一人一人の顔も声も生き生きとしてくるに違いない。
そのような国語教室が数多く生まれることと子どもたちの言葉の成長を願い、辞読の学習を提案させていただく。
さて『物語の群読指導細案』の執筆にあたり次の二点を特に強調しておきたい。
・群読は、国語学習の総合的学習であり、言語の立体的な学習であること。
・群読は、指導法・評価法・教材等に未開拓部分を含みつつ、新世紀に向けて、今後さらに国語力を高める上で、重要な学習領域になっていくこと。
群読は、一人一人の音読・朗読が生かされる。
文字を音声で表現するところに解釈が深められ、一人一人の声が群の中で響き合う。叙述を細部まで読みとり、日本語のもつ響きを感じとり、作品世界に読み渡る。そして、自分の声と他者の声とがせめぎ合い響き合うのを同時に聞き合い体感することができる。
つまり、群読は、文字と音声、理解と表現、言語論理と言語感覚、発声と聴取等をとりこんだダイナミックな言語活動を保障するものである。
群読をもっと国語学習に取り入れたい。
小著では、各学年毎の実践編を中心に、指導技術や歴史的背景などの理論編をまとめた。群読をさらに教室に取り入れる上で多くの諸先生方のご叱正をいただければ幸いである。
一九九七年 /田子 澄子
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- 明治図書