国語科新単元学習による授業改革10学びとしての知の方法

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高校における国語科教育の方法をどう21世紀にふさわしい展開とするか、「学び方を学ぶ」「知の方法を学ぶ」という視点から教材改革と授業改革を示した意欲的な問題提起。


復刊時予価: 2,926円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-312625-8
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
中・高
仕様:
A5判 212頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
T 学び方を学ぶ
/由井 はるみ
一 私と新単元学習
1 動機
2 教材編成の工夫
3 指導法の工夫
4 評価
5 生徒の反応
6 今後の課題
二 尋ね人の時間(高校一年・全三十時間)
1 はじめに
2 指導の実際
「水の東西」
「話し言葉における理解と表現」
人の思いをとらえる詩
小説から考える戦争
記事──三國連太郎が体験した戦争──
インタビュー作文を書こう
3 おわりに
三 メディアを読む(高校三年・全十六時間)
1 はじめに
2 授業計画
3 学び方の方法として
4 指導の実際
内容
演習
5 おわりに
四 こんな愛もある(高校二年・全三十時間)
1 はじめに
2 授業計画
3 指導の実際
愛を聞く(体験を通して。「愛」について考える序)
レトリックについて学ぶ
詩について学ぶ
短歌「サラダ記念日」他 俵万智
「愛と孤独」亀井勝一郎
4 『こころ』の実践
先生とはどういう人物か
「K」とはどういう人物か
事件
「奥さん」と「お嬢さん」とはどういう人物か(「奥さん」と「お嬢さん」の愛)
K死後
愛とはどういうものか
U 方法を学ぶ
/草野 十四朗
一 グループによる調査と発表「百人一首の歌人たち」(高校一年・全十二時間)
1 はじめに
2 指導計画
目的と手だて
教材
展開
3 指導の実際
班別学習の指示(調査と発表)
テーマと調査発表事項
図書館利用と資料のまとめ方の指示
発表までの日程
発表の方法
発表の工夫
4 反省と課題――「評価」を踏まえて
「評価」について
反省と課題――生徒の自己評価から
5 補説
「カルタ取り」
「平安文学七並べ」
二 メディアと向き合う表現指導(高校三年・全二十八時間)
1 はじめに――単元設定の理由
2 単元のねらい
3 年間計画
4 単元の構造
5 導入――授業開き「矢ガモ」の比較読み
6 社説と「平成ビンゴ」
7 捕鯨対論――国際理解
8 差別表現と学校怪談――マスコミと口コミ
9 自らのテーマで書く
単元を終えて――まとめにかえて
三 学びの方法としての「メディアリテラシー(Media Literacy)」
「メディアリテラシー」とは
「メディアリテラシー」と諸「リテラシー」
学習活動の前提としての基本的概念(キーコンセプト)
四 自立を促す評価の観点と方法
1 新単元学習における「学力」「学習」「評価」
「学力」をめぐる議論
認識諸能力および言語化能力
2 要素的学力としての認識諸能力と言語技能の分類試案
認識諸能力と言語技能の関係
認識諸能力の領域と項目
言語技能の領域と項目
3 高校現場における学力の現実――受験という総括評価
問題解法の学力
評定の学力
4 「新単元学習」の学力――理念的学力としての特化型言語能力群
5 評価論と目標
評価論の動き
「目標」をめぐる諸概念
目標の記述
6 「新単元学習」における評価
課題解決過程の評価
特化型言語能力群の評価
分節課題解決の評価
言語技能と認識能力の評価
7 まとめにかえて
解説 /浜本 純逸

人間関係を豊かにする力

 人は人と関係を結ぶために言葉を使う。人は言葉を使って他者に働きかけ、言葉をとおして相手を理解しようとする。思っていることを言葉で表現し、相手の表現をとおして理解する。お互いに深く理解し合えた時の喜びは大きい。その喜びが基盤になって人の輪が生まれ、友達が作られ、社会的な共同の生活が可能になる。人と人とを結び、人間関係を豊かにする言葉の力を育てたいと、私たちは願っている。

 ところが、現代では、その言葉の力が急速に衰弱しつつある、と言われている。なぜであろうか。いろいろな原因が錯綜しているのであるが、その一つに、子どもたちの言葉が育つ過程において必要な他者の言葉と出会う時間が少なくなっていることを指摘できようか。家庭では、思春期特有の無口化と、両親の共働きの増加および少子化とが相乗して、親子の言葉を交わす時間が少なくなっている。社会の情報化は、テレビやビデオとの接触時間を多くして、子ども同士の遊びの時間を少なくしている。両親とのおしゃべりや、気のおけない友達との時には喧嘩に至るほどの激しい言葉のやり取りをするような場がなくなりつつあるのである。

 これまでの国語科教育は、読むことをとおして知識・情報を与えると同時に読む力を育てることに専念する傾きがあった。文字言語に重心をおいてきたのである。これからは、中等教育においても音声言語の教育を取り入れ充実させていかなければならない。文字言語の教育と音声言語の教育がともに必要なのである。「聞く・話す・読む・書く」力を基礎学力として育てる実践の構想力が求められている。現代の言語状況において、学校では、言葉を交わし合い、言葉で意志疎通を図る習慣と力とを育てていくことが必要であろう。言語活動の場を多くすることによって確かな言語生活力を育てたい。

 他者と出会う、文化と出会う 教師の話を聞いたり友達の話を聞いたりすることは、すべて他者との出会いの場である。おしゃべりや会話は楽しいが、改めて、何かを聞こうとし何か話そうとすると、どれほどのことを話し得ているか聞き得ているかということに気づいて愕然とする。抵抗なく聞いたり滞りなく話している時は他者と出会っていないと言えるであろう。謙虚に聞くことも大事であるが、自分を持って聞かないと聞こえてこないことが多いのも事実である。他者に分かってもらおうとして話すと自ずから事例を多くしたり事実と意見を区別しようとする心構えになる。話し言葉の生活において他者と出会うことにより、自分を見つめ自分を豊かにすることができる。

 中等教育では、高い文化と出会わせること、高い文化への志向を育てることも必要になってくる。伸びようとする心は、たえず身の回りの状況に不満を抱く。理想を求めるがゆえに現状に批判的になる。その時、彼らの心に響き彼らの見方や考えを鍛えるのが高い文化である。すぐれた言葉の文化に出会わせることによって感動の場を共有し、言葉の生活を豊かにしようとする心を育てたい。


学び方を学ぶ

 二十世紀の社会の変化にはめまぐるしいものがあった。その前半は明治から大正・昭和へと工場労働制が進み、和服が洋服へと替わっていったように心の持ち方も世界へと開かれていった。後半は上滑りながら民主主義が定着していく過程であり、大衆消費社会へと移っていった。電気炊飯器が普及して鍋・釜の影が薄くなり、やがてテレビ・コンピュータの時代へと変わっていった。この変化は、二十一世紀にはいっそう激しくなるであろう。憶えた知識だけでは変化に対応していけない。変化に対応するためには「学ぶ」ことが必要であり「学び方を学ぶ」ことが求められている。

 これからの社会は、情報のあふれる社会である。メディアの発達により、情報は、新聞・書物・テレビ・インターネットなどに氾濫している。しかし、それらの情報は、濃淡さまざまであり、質においても高いものから低いものまでいろいろである。自分の疑問や問題を解決するためには、自分なりの価値観を作りながら、情報の取捨選択をしなければならない。情報を収集し選択し活用する能力を育てることが必要になってきている。

 二十一世紀の社会に、自分を作りつつ自分を生かしていくには、協同する心を育てるとともに自己学習力を育てていくことが必要である。問題を見つけ、自ら解決していくための学習力を育てるのである。わたしは、学習意欲、課題発見力、学習計画力、情報操作力、まとめ・発表する力、自己評価力、を自己学習力の要素と考えてきた。それらを貫く体験を言葉にする力、語彙力、要約力、表現力、発表力、などが国語科で育てる学力である。

 国語科新単元学習は、とくに国語科で育てなければならない学力に中心をおいて、あわせて自己学習力をも育てることに努めてきた。由井・草野の両教諭は、「学びの方法としての知」を育てることに力を尽くしてきた。現代の「学び」論との架け橋になることを試みてきたのである。


高等学校で日常的に行う実践

 現在の高等学校では、大体において中間試験と定期試験があり、その結果の点数を重視して評価・評定がなされている。ということは、二人の実践においても同僚の教師と進度を共通にしなければならないという難関が待っていたわけで、「読むこと」の指導に傾いているのはやむを得なかったと言えようか。

 「単元学習では学力が育たない」と言われてきた。また、「単元学習は受験に役立たない」とも言われて、これまでの高等学校では単元学習に取り組む教師は少数であった。由井・草野両教諭は、現在の高等学校に籍を置くものとして、この問題は避けて通れなかったし避けることをしなかった。「学びの方法としての知」を育てることを主としながらも「大学受験に合格する知識」をも育てることを目指したのである。

 両教諭は、現在の高等学校で日常的に行える単元学習を目指してきたのであり、現在の高等学校において実現可能な実践を探究してきたのである。

 本書が、これからの高等学校国語科教育方法改革の踏み台となることを願っている。


  1999年10月17日   /浜本 純逸

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