言語技術教育16
国語学力を育てる言語技術教育
――「読解力」の構造を問う――

言語技術教育16国語学力を育てる言語技術教育――「読解力」の構造を問う――

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PISA型読解力の構造と、これを鍛える授業がわかる

第16回大会のテーマは「読解力」を正面に据えてその構造の考え方を提案すると同時に「読解力」を鍛えるための授業技術を提案する。特に会長(市毛勝雄)副会長(向山洋一)が提案授業をする研究的模擬が課題の中心。学会記事と共に会場参加者の討論が期待されている。


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ISBN:
978-4-18-308116-2
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 132頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに /市毛 勝雄
第一部 国語学力を育てる言語技術教育
――「読解力」の構造を問う――
誰でもできる「読解力」を育てる授業 /市毛 勝雄
PISA型読解力と向山実践 /向山 洋一
読解は内容と形式の一体的理解によって成り立つ /野口 芳宏
言語技術概念の構築の道程
――「道はるか」の現在―― /渋谷 孝
「読解力」の構造把握に読解は表現である≠ニいう認識を /小田 迪夫
読む力は「批評力」に極まる /井関 義久
教育課程・国語科の読む能力の構造 /小森 茂
いかなる「読解力」の構造も忘れてならないことがある /大森 修
国語科の「教科内容」とその取り出し方の解明が先決である /大内 善一
「読解力」指導の三層構造 /高橋 俊三
「教材」と「表現」から読解力を問い直す /町田 守弘
PISA「読解力」の捉え方および国語科と他教科の新しい関係構築 /阿部 昇
「PISA型読解力」と言語技術教育
――「基礎的な読解力」と「発展的な読解力」を育てる―― /鶴田 清司
「わかりにくさ」を切り口に批判的な思考力をつける
――「モアイは語る――地球の未来」(光村図書・中学二年)を例に―― /加藤 郁夫
五つのステップで「基礎学力」保証からメタ評価能力育成へ /佐藤 洋一
第二部 国語学力を育てる授業改革とは?
――研究的模擬授業による提案と検討――
T 研究的模擬授業
――提案者の抱負――
〈大会・第一部授業者〉
「小論文」を書かせる指導 /市毛 勝雄
「森の出口」の記録を分析する /向山 洋一
〈大会・第二部授業者――低学年〉
「PISA型読解力」を「キーワードの取り出し」「名づけ」で向上させる /瀧沢 葉子
〈大会・第二部授業者――高学年〉
向山型指導法で育成するPISA型の読解力
――向山型「写真の読み取り指導」は「PISA型の読解力」を育てる指導にも応用できる―― /谷 和樹
〈大会・第二部授業者――中学校〉
「学力形成主義」の授業法――古典「防人の歌」の場合―― /野口 芳宏
U 研究的模擬授業への期待
学校教育・国語科としての授業改革 /小森 茂
言語技術が形としてよく見える授業を /小田 迪夫
提案と授業としての完成度を期待する /大森 修
言語技術教育に求められているもの
――「反省的実践」と「対話的・協同的学び」の要素を―― /鶴田 清司
言語技術概念の追究のための模擬授業を見る態度が出来ていない /渋谷 孝
教材の「形式」「内容」を一体的に読み取らせる授業を期待する /大内 善一
当該言語技術の価値と習得法を明確に /高橋 俊三
模擬授業の先進性と検討会の重要性 /阿部 昇
基礎学力の保証、「受信・発信」の基礎・基本技術と評価を明確に /佐藤 洋一
書評と第一五回大会(大阪大会)報告
〈書評〉
高橋俊三著(明治図書)
『教師の話力を磨く』 /村松 賢一
難波博孝・三原市立木原小学校著(明治図書)
『楽しく論理力が育つ国語科授業づくり』 /佐藤 洋一
佐藤康子・大内善一著(明治図書)
『子どもが語り合い、聴き合う国語の授業』 /兵藤 伸彦
基幹学力研究会編(明治図書)
『聞く・話す・読む・書く4Rsを育てるスモールステップ』 /柳谷 直明
メルヴィ・バレ他著/北川達夫&フィンランド・メソッド普及会訳・編(経済界)
『フィンランド国語教科書 小学3年生』『同 小学4年生』 /井上 尚美
日本言語技術教育学会 第一五回大会の報告 /佐藤 洋一
編集後記 /佐藤 洋一

はじめに

 日本言語技術教育学会第一六回大会は二〇〇七年三月三日に岡山大学創立五〇周年記念館で開催されることになった。これはひとえに会員皆さんの熱意と、会場設営、および学会運営に努力してくださる役員諸氏のおかげである。ここに改めて感謝の言葉を捧げたい。

 今回の大会テーマは、「国語学力を育てる言語技術教育――『読解力』の構造を問う――」である。このテーマは言うまでもなくPISA調査における「読解力」の調査結果に基づいている。

 これまでの国語教育、とくに文学教材を中心にした心情追求の授業は、生徒に対して現在の社会が期待している国語学力をつけていないのではないか、という批判を受け続けてきた。ところが、それに代わるはずの文部科学省のいわゆる「論理的思考力、表現力」の授業という理念は、抽象的な言葉では示されるものの、どういう内容をもっているのか一向にはっきりしないままであった。

 それが平成一七年一二月、『読解力向上に関する指導資料・PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向』という詳細な資料が文部科学省によって発表された。わたしの読み方が偏っているのかも知れないが、この資料には従来の「学習指導要領」とは一線を画した全く新しい考え方がいくつも示されている。

 まず、「読解力」(リーディング・リテラシー)という語の定義を行い、「わが国の国語教育等で従来用いられてきた『読解』ないしは『読解力』という語の意味するところとは大きく異なるので、本プログラムでは単に『読解力』とはせずに、あえてPISA型『読解力』と表記することとした」と明記した。この措置は、これから発表される学習指導要領が持っている方向を暗示するものであろう。すなわち「教育的解釈学」との決別である。

 この方向は、わが日本言語技術教育学会が一五年前に発足したときに明示した方向と合致する。

 そして今回の学会では、この「読解力」を正面に据えて、その構造の考え方を提案すると同時に、「読解力」を鍛えるための授業技術を提案しよう、とする。このようなダイナミックな研究行動を採用できるのは、国内で数多い国語教育の学会の中でもわが学会だけであろう。これは構成会員の水準も高く、参加者の意識も高い学会である証拠である。当日は、多くの参加者を得て、充実した研究討議が行われることを期待する。

 今回の学会の特色は、従来行われてきた午前中の理論的なシンポジウムをやめて、模擬授業を行ったうえで、それを材料にして具体的な議論をしようというのである。

 とくに午前中は、PISA型読解力の内容を指導する授業にはどういうものがあるか、そういう授業でPISA型読解力が身につくものか、という厳しい基準で討議したい。従来のように、「PISA型読解力」の指導はどうあるべきか、というような理念だけでは誰もが満足しない、という予想から設定された企画である。登壇講師に言わせ放しにせず、参加者全員が大いに持論を開陳していただきたい。

 午後の三人の研究的模擬授業は、それぞれ独自の観点から、PISA型「読解力」に挑戦する多角的な授業を展開していただいて、参加者各自の授業イメージの参考になるような模擬授業検討会を期待したい。

 本年は時あたかも三月三日「桃の節句」の当日に当たる。会員各位の学校では多忙を極める時季であろう。その一日の貴重な時間を割いていただいて、新しい学習指導要領に深く関わる問題を討議していただきたい。

 当日、元気な顔の会員諸賢にお目にかかることを心から楽しみに、お待ちしている。


  二〇〇七年三月

   日本言語技術教育学会会長 /市毛 勝雄

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