21世紀型授業づくり122
豊かな人間性を育てる読書活動と図書館の活用

21世紀型授業づくり122豊かな人間性を育てる読書活動と図書館の活用

投票受付中

書評掲載中

読書離れを克服するためにどう図書館を活用するかを解説。

読書離れをどう克服するか、具体的提案を行う。そのために@読み聞かせからブックトーク、A読書活動を楽しむ読書まつり、B読書討論会からブックディベートへ、C学校図書館教育のカリキュラム改革、などを提案。学校の読書環境を整える方策など読書活動例を満載。


復刊時予価: 2,618円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: 未販売

電子化リクエスト受付中

電子書籍化リクエスト

ボタンを押すと電子化リクエストが送信できます。リクエストは弊社での電子化検討及び著者交渉の際に活用させていただきます。

ISBN:
4-18-308012-6
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 168頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

はしがき
T 全校読書活動の展開
1 読書離れを克服する
(1) 目に余る読書意欲の欠落を打開する
(2) 望ましい読書習慣を養うことは簡単ではない
(3) 椋鳩十の「母と子の20分間読書」に学ぶ
2 読書によって感性を育む
(1) 幼児期の感性を大切に伸ばそう
(2) 宮沢賢治の「注文の多い料理店」のおもしろさを探る
(3) 優れた読書感想の基本的な条件となるもの
3 OECDの学力調査のもたらしたもの
(1) 「2000年の読解力調査」の問題例をめぐって
(2) 読書活動と総合読解力の得点との関連性
(3) 娯楽読書に偏向している日本の読書傾向
4 デューイの図書館思想のもたらしたもの
(1) デューイの「子ども中心の教育」の提唱
(2) デューイは図書館を授業の出発点と位置づけた
(3) 学校図書館活用能力で最も欠けているもの
5 図書委員の活動内容を再検討する
(1) 図書委員のカウンター当番は主な活動ではない
(2) 図書委員が主体的に取り組む企画の例
(3) 学級分館の活性化の推進役を図書委員が果たす
6 司書教諭の職務とリーダーシップ
(1) 司書教諭が配置されて学校図書館は変化したか
(2) 司書教諭の職務内容の再検討と新しい方向
(3) 余暇利用の楽しみと個に応じる調べ学習と
U 読み聞かせからブックトークへ
1 小学校低学年の読み聞かせ
(1) 本に親しみ,言葉に関心を持つ
(2) 豊かな感性(心)を持つ
(3) 一人読みへの基礎的な力を育む
2 中学年からの読み聞かせ
(1) 長編読書への道
(2) 本との出会いから本の選択力へ
(3) 感動を伝えようとする読み聞かせ
3 多読期の読書活動を支えるブックトーク
(1) 多読期の読書活動
(2) 個人個人に合った読書教材の提供
(3) テーマが導き出す読書
4 個人の読書に取り入れるブックトーク活動
(1) ブックトークによる読書発表会
(2) ブックトークからテーマ読書へ
V 読書活動を楽しむ読書まつり
1 楽しい読書活動
(1) 春の読書まつり
(2) 秋まつり週間
(3) 作家講演会
2 大型紙芝居
(1) 読書まつりを盛り上げる大型紙芝居
(2) ペープサート
(3) 影絵
3 集団読書の発展
(1) 読書会
(2) まんがの方法
(3) 読書まつりにアニマシオンを
4 その他の校内読書活動
(1) クラスのおすすめ本の紹介
(2) 語り聞かせや落語を授業に導入
(3) 夏休み図書館開放・読書郵便
W 読書討論会からブックディベートへ
1 描く――「本の帯」
(1) 読むこと,かくこと,発表(討論)すること
(2) 「描く」こと
(3) 「本の帯」を作る
2 書く・描く――「読書新聞」
(1) 「読書新聞」を作る
(2) 作成上の留意点
(3) 「読書新聞」の効用
3 討論する――「書評座談会」
(1) 相乗効果をもたらすもの
(2) 「書評座談会」とは
(3) 変容する生徒
4 ディベートする――「ブックディベート」
(1) 「ブックディベート」とは
(2) 実践の概要
(3) 深化する読書
X 学校図書館教育のカリキュラム
1 学校図書館の組織と運営
(1) 学校経営の中核としての位置づけ
(2) 「学校図書館」の基本的な考え方
(3) 授業を支えるために
(4) 学校図書館部会の役割
2 学校図書館の年間計画
(1) 学校図書館を利用する授業
(2) 学校図書館での授業を通して見えてきたもの
(3) 「学校図書館メディアを利用する授業」(国語科のみ抜粋)
(4) 「学校図書館の利用教育・読書教育の授業」
(5) 学校図書館メディアを利用する学習計画<1年生>
3 学校図書館メディアの整備
(1) 学校図書館メディアの構成
(2) 「学校図書館を利用する授業」の研究
(3) 『小学校図書館の学習基本図書』(西宮市小学校図書館研究会編)
――国語科・社会科・理科・生活科・総合的な学習――の編集
(4) 読書案内適書群――「読んでほしいな これだけは」
(5) 「読んでごらん
(6) 特別書架として配架
(7) 情報ファイルの整備
(8) 学習した児童の主な作品
4 子どもと本と学びをつなぐ
(1) 学校図書館から,「つながる授業」の楽しさ
(2) 低学年の児童に関わって見えてきたこと
(3) 1年生の国語科授業(ティームティーチィングの授業例)
(4) 調べる学習に取り組んで見えてきたこと
5 終わりに
Y 学校の読書環境を整える
1 学校図書館の環境を見直す
(1) 図書館の場所と施設
(2) 司書教諭として関わった静岡の3校の施設と場所等
(3) 校外の施設の利点を吸収する
2 プロムナード構想(図書館に人を呼ぶ作戦)
(1) 図書館を広げて生まれる可能性
(2) 全職員にお願いする「リフレッシュの秘訣」
(3) 観山中の自慢――読書掲示物の工夫
(4) 新規採用教師の意欲的な試み
3 保健室,心の相談室ライブラリー
(1) 心のオアシスとしての保健室と図書館
(2) 保健室ライブラリーと相談室ライブラリー
4 人的な読書環境を整える
(1) 全職員体制で,人的読書環境を整える
(2) 学校図書館のビジョンのアピール
5 読書環境としての担任,個人への読書相談
――「心の旅に」に触れて。中3の担任として――
Z 学校図書館のボランティア活動
1 司書教諭がリーダーシップを発揮して
(1) 保護者の立場のボランティア
(2) 自主運営で行うボランティア
2 図書ボランティアの活動とその効果
(1) 読み聞かせ
(2) 環境づくりボランティア
(3) 本の貸し出し,長い休み時間の見守り
(4) 本の管理補助
3 地域の図書館活動とのつながりと学校支援体制
4 図書ボランティアQ&A
(1) 読み聞かせボランティア
(2) 学校図書館環境づくりボランティア

はしがき

 平成9年6月11日に公布された「学校図書館法の一部を改正する法律」によって,「平成15年4月1日以降,12学級以上の学校には,必ず司書教諭を置かなければならないこと」と決定されてから,私の生活は急変した。放送大学の司書教諭養成講座を担当することになったからである。

 私は,昭和53年度から東京の青葉学園での司書教諭養成講座に,毎夏,出講するようになっていたから,司書教諭養成講座の内容については,熟知していたので,私が担当することになった8回(毎回45分)分のテレビ放送の計画はスムーズに立てることができた。

 しかし,毎回,45分もの長い時間,一人の話を聞かせるのは,聞く者はつらいだろうと考えて,学校図書館のロケーションによる映像を,できるだけ多く取り入れるように心がけた。とはいっても,この科目に使える予算は限られているから,第1回のロケは東京と大阪,第2回は本州の各地,第3回は沖縄と,いくつかの地域の先進校に協力していただいた。

 学校図書館の優れた実践校のロケをするといっても,「どういう目的で」「どういう学習活動を」という,私自身の目的意識がはっきりしていなければ,撮影の専門家たちを動員してカメラを回しても,こちらが望んだ画像を得ることはできない。

 幸いなことに,大阪府和泉市の幸小学校から,図書館教育について,講演を依頼され,私が同校を訪れたことがきっかけとなって,毎回,必ず実践授業を見させてくださるという条件のもとに,3年間に19回,授業を見せていただき,それに合せて講話して,図書館をどのように改善していけばよいのか,お話した。最初のうちは消極的だった先生方も,自分の授業について丁寧な指導を受けて,それを明日からの授業に生かせたし,その結果,子どもたちの目の色が変わっていき,積極的になった。

 図書館を改善するにしても,形の面にこだわると,子どもたちはついてこない。「本を読め!」と呼びかけても,子どもはすぐに動かない。だが,全校の教師が自分の教室の入口に,イラストを交えた「読書ゆうびん」を毎月掲げることによって,子どもたちも動きだすようになった。

 千葉県市川市の富貴島小学校の三浦せい子さんは,私が担当していた青葉学園の司書教諭の講座を受講したが,休憩時に,講義の内容について話しかけてきたことがきっかけとなって,同校の読書教育研究会にお招きくださるようになり,新しいアイデアを提案させていただいた。

 放送大学の司書教諭養成講座を立ち上げるにあたって,学校に足しげく通わせていただく土台となったのは,東京都小学校図書館研究会の蔵元和子さんと,東京都中学校図書館研究会の池田茂都枝さんである。このお二人との交流は,かれこれ30年に登る。学校現場の生の声を聞くことによって,学校図書館の研究や読書教育の推進は,ひとりだけの研究では達成できにくいことを,私は長い時間の流れの中で学んだ。

 曲里由喜子さんと牧野雅子さんは,放送大学のロケを通してお世話になった人である。渡辺暢恵さんは学生時代に読書教育を卒業論文のテーマに選んだことから,おつき合いが始まった。千葉市の小学校に勤務されていたが,研究に対する熱意が高まり,現在は筑波大学の大学院に進まれて,研究を深めつつある。私の放送大学のロケーションは3期に分けられるが,渡辺さんは第2期の司会の補助役をしてくださった。


 この本を出版するにあたって,もうひとり,特記しなくてはならない人がいる。それは,明治図書出版の企画開発室の江部満氏である。江部氏とも30年以上前からのお付き合いであることから,私は年賀状をさしあげるときに,「司書教諭が配置されたというのに,活気がないですね」と添え書きした。その結果,「編著で,『読書活動と図書館の活用』という本をやってくれませんか」という話になったのである。

 私は,この誘いに大変感動させられた。江部氏の「読書活動」という言葉によって,「読書教育」と「読書活動」の違いの大きさに気づかされたのである。教師の感覚からすると「教育」なのだが,子どもたちの立場からすると「活動」でありたいというのである。「教育」という言葉から連想されるのは「教科書・教師・指導・課題・評価」などであるのに対して,「活動」から連想されるのは「楽しみ・仲間・感動」である。この差はとても大きい。

 戦後ずっと続いている日本の学校教育を代表する言葉を探すと,「学力低下・学校ぎらい」かと,私には思える。その原因を集約すると,「教科が増えすぎたこと・勤勉の放棄」などが浮かび上がる。いずれ,各教科が存在することの是非を検討するときが来るだろうと思う。図書館については「利用指導」意識が強すぎた。「活用」との違いを考える必要がある。

 第T章の第4節で,現代の学校教育の理論の柱となっているジョン・デューイ(Dewey, John,1859〜1952)の神髄を取り上げたが,その意図を汲みとっていただきたい。私自身,学習者中心の学校への転換の必要性を長い間訴えてきた。今後の展開を期待したい。

 本書の執筆分担は次のようになっている。ご協力いただいた皆さんに心から御礼申し上げたい。

  増田 信一(京都女子大学発達教育学部教授)  第T章

  蔵元 和子(文教大学非常勤講師)  第U章

  三浦 せい子(千葉県市川市立国府台小学校司書教諭)  第V章

  池田 茂都枝(元東京都杉並区立大宮中学校教諭)  第W章

  曲里 由喜子(兵庫県西宮市立広田小学校司書教諭)  第X章

  牧野 雅子(静岡県静岡市立観山中学校司書教諭)  第Y章

  渡辺 暢恵(筑波大学大学院院生)  第Z章


  2006年7月30日   /増田 信一

著者紹介

増田 信一(ますだ しんいち)著書を検索»

1933年,長野県に生まれる。1957年,東京学芸大学国語科卒業。公立小学校・公立中学校・国立大学附属中学校教諭を経て,奈良教育大学教授。現在,京都女子大学教授。また,日本学校図書館学会副会長,日本読書学会理事,日本国語教育学会理事も務めている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ