- まえがき
- Chapter 1 なぜ学級に「その他大勢」の子が生まれるのか
- 01 「その他」の多様性に目を向けない
- 「その他」の中身を見ようとしない
- 02 子どもを評価するものさしが少ない
- 一つの基準で一人が評価する
- 03 手のかかる子で手一杯になる
- 多忙さが視野を狭める
- 04 良い子ばかりに頼る
- 都合の良い方に流される
- 05 決めつけて見直さない
- 固定観念が目を曇らせる
- 06 チームで子どもを見ていない
- 学級王国が鎖国する
- 07 「よかれ」と思った指導の落とし穴@
- 効率化が「じゃない子」を生み出す
- 08 「よかれ」と思った指導の落とし穴A
- 多すぎる活動が我慢を促す
- 09 「よかれ」と思った指導の落とし穴B
- 勝手な信頼が放任につながる
- 10 「よかれ」と思った指導の落とし穴C
- 過度な自律の要求が委縮を招く
- 11 「よかれ」と思った指導の落とし穴D
- 過剰なおもてなしが受け身にさせる
- 12 「よかれ」と思った指導の落とし穴E
- 担任の分身型リーダーが仲間の成長を妨げる
- 13 「よかれ」と思った指導の落とし穴F
- 表面的な個の尊重が分断をつくる
- Chapter 2 子どもを「その他大勢」にしない 教師のかかわり10のポイント
- 01 風呂敷のように子どもたちを包む
- 02 問いを共有する
- 03 なりたい姿をビジョンにする
- 04 ゴールを決める
- 05 見る目を養う
- 06 言葉を絞る
- 07 手を差し伸べる
- 08 足で稼ぐ
- 09 体で支える
- 10 空気を換える
- Chapter 3 子どもを「その他大勢」にしない学級づくり 10のポイント
- 01 温泉のような学級をつくる
- 02 学級リーダー・フォロワー・サポーターの姿を捉える
- 03 フォロワーを四つの姿で捉える
- 04 支えるフォロワーを育てる
- 05 応援するフォロワーを育てる
- 06 付いて行くフォロワーを育てる
- 07 批判するフォロワーを育てる
- 08 周りの人をサポーターにするチャンネルをつくる
- 09 役割を変更できるシステムをつくる
- 10 システムを変えるシステムをつくる
- Chapter 4 NG×OKで考える 子どもを「その他大勢」にしない学級づくり
- 時期別の学級づくり
- 01 学級開き
- 02 1学期の学級づくり
- 03 2学期の学級づくり
- 04 3学期の学級づくり
- 05 学級じまい
- 学級活動
- 06 学級目標づくり
- 07 学級通信
- 08 当番活動・係活動
- 09 学級レク・学年レク
- 10 学級会
- 11 朝の会・帰りの会
- 12 すきま時間
- 授業づくり
- 13 授業計画
- 14 グループ学習・話し合い
- 15 発表・プレゼン
- その他の活動・行事
- 16 生徒会・委員会活動
- 17 運動会・体育大会
- 18 宿泊研修・修学旅行
- 19 学習発表会・文化祭
- 20 終業式・卒業式
- 場面別の指導
- 21 【対立】学級の決めごとで意見が分かれる時
- 22 【逸脱】学級のきまりが守られない時
- 23 【機能不全】学級の仕組みが機能しない時
- 24 【翻弄】特定の子どもに学級が振り回される時
- 25 【暴走】みんなが前に出すぎてまとまらない時
- 26 【反発】リーダーとフォロワーがぶつかる時
- 27 【分断】小グループが固定化して学級がまとまらない時
- 28 【傍観】困っている仲間を助けようとしない時
- 29 【牽制】誰も前に出たがらない時
- 30 【無反応】リーダーに他の子どもが付いていかない時
- 31 【秘密裏】教師の見えない形でよくない動きがある時
- あとがき
まえがき
「その他」の中にある多様な豊かさを大切にする
学級に「その他大勢」のような存在になっている子どもはいないか?
子どもを「その他大勢」扱いするのは仕方がないとあきらめていないか?
これは、私が教師として大切にしてきた問いです。学級には、いろいろな子どもたちがいます。その中の一部はリーダーシップを発揮する子どもです。また、問題行動が見られる子や、できないことが気になる子など、教師が意識を向けやすい子どもたちです。
一方で、目立つ行動をせずに、教師にとってあまり手のかからないと感じる子どもたちがたくさんいます。その子どもたちを「その他大勢」のように扱って、かかわるのを後回しにして放っておくことがあるかもしれません。そうすると、一人一人の子どものよさを学校生活の中で伸ばすことが難しくなります。また、子ども主体の様々な活動を行うことを目指しても、子どもたちのよさを生かして協働する体制が整いません。
そもそも、統計で使う「その他」は同じものの集まりではありません。割合が小さい内容をまとめた表現です。学級で「その他大勢」扱いをされる子どもたちも同じで、一人一人が多様な価値を秘めています。教師が子どもの豊かな価値に目を向けていないだけです。
子どもを誰一人置き去りにせずに、子どもたちが持ち味を磨ける環境を整えるにはどうしたらよいのでしょうか? 子どもたちを「その他大勢」扱いせずに、一人一人が持ち味を発揮しながら協働する学級は、実現できるのでしょうか?
学級づくりではリーダーの育成や手のかかる子どもの生かし方が注目されがちです。実は、学級づくりの鍵になるのは目立ちにくい子どもたちを「その他大勢」にしないことであると考えます。「その他」ではなく、「この子」としてかかわることを大切にすべきです。本書は、このような問題意識に基づいています。
子どもの協働を促す環境と関係をつくる
教師は多忙です。すべての子どもと向き合う時間的・精神的な余裕はないかもしれません。私は、現場で奮闘する先生方の学級づくりを批判して追い詰めるつもりはありません。
逆に、子どもたちの力を借りて学級づくりを行うことが、教師の過度な負担を軽減し、子どもたちが「自分たちの学級」という意識をもって自治的に活動する端緒になります。リーダーとして期待していた子どもが育たなかったり、手のかかる子に振り回されたりして、学級経営に行き詰まりを感じた時こそ、「その他大勢」扱いをせざるを得なかった子どもに目を向けましょう。一人で何人もの子どもを育てようとするのではなく、子どもたちが育つ環境を整えます。子どもが協働してお互いのよさを磨き合うようにします。
子どもが伸び伸びと育つためには、教師がすべての情報を把握して、厳しく締め付けて管理することは勧めません。ゆるやかにつながる関係性を基盤として、温泉のようなぬくもりを感じる学級を目指します。教師は子どもたちをやわらかく包み込むようにします。
また、教師が「その他大勢」扱いをしがちな子どもたちは、強いリーダーシップをもっているわけではありません。だからこそ、子ども同士がつながり合うようにします。リーダーの子どもや、他の子どもたちと連携できるフォロワーを育てます。フォロワーは仲間を支え、励まし、仲間と共に進み、時には建設的な批判をします。子ども同士が私的な仲のよさに関係なく、仲間として協働できる仕組みづくりと教師のかかわりが鍵になります。
本書では、Chapter 1で「その他大勢」の子どもが学級に生まれる原因と背景について考えます。教師が「よかれ」と思って指導した結果、「その他大勢」扱いされる子どもが出てくる問題についても取り上げます。
Chapter 2では、子どもを「その他大勢」にしない教師のかかわりについて、十個のポイントを紹介します。教師としての問い・目・言葉・手・足・体などの視点から、子どもたちを包み込むような教師のあり方について考えます。
Chapter 3では、「その他大勢」にしない学級づくりについて考えます。キーワードは「温泉」、「リーダー・フォロワー・サポーター」、「変動的なシステム」です。
Chapter 4では、時期と場面に分けて学級づくりのNGとOKについて考えます。後半では学級で起こりやすいつまずきを取り上げ、子どもの力で乗り越える方法を考えます。
本書で示す考えや実践はすべて、現場にいる子どもたちを通して考えたものです。「これが正解!」と言い切るものではありません。本書の内容が現場で奮闘する先生方の元気の源になり、充実した気持ちで教室に向かう力になれば幸いです。
二〇二四年二月 /川端 裕介
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- 明治図書
- 学級経営について見直すことができた。信頼を前面に出しすぎても、子どもは萎縮するというのが納得。2024/3/3140代・小学校管理職