- はじめに /市毛 勝雄
- 第一部 「読解力の低下」問題をどう見るか
- T 「読解力の低下」をどう見るか
- ――OECD学習到達度調査(PISA2003)の結果をうけて――
- 内なる「国語科」の学力問題
- ――平成13年度及び15年度教育課程実施調査から―― /小森 茂
- 「読解力」低下と授業の改善点 /大森 修
- 「読解力の低下」の原因と今後の国語科教育のあり方
- ――国語科は正面からこの事実を受け止めるべきである―― /鶴田 清司
- 教科書の平仮名は漢字で板書を /野口 芳宏
- どのような授業が「読解力をつけるのか」が問われる /向山 洋一
- U PISAではどんな「読解力」が求められているのか
- PISAにおける「読解力(reading literacy)」の解明 /中村 敦雄
- 情報の読みとり・判断する力・批判する力そして表現する力 /加藤 郁夫
- 文章及び図表・写真等の映像からの情報を吟味して摂取し活用する能力
- ――メディア理解能力・メディア表現能力及び「実証」「論証」の技術―― /大内 善一
- V PISA2003と国内学力調査との比較
- 【JELS二〇〇三〜二〇〇四の国語学力調査との比較】
- 判断・根拠・解釈・推理・メタ認知に関する力の不足 /阿部 昇
- 【平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査との比較】
- PISAと教育課程実施状況調査との比較に立った、国際的なリーディング・リテラシー開発の方策 /有元 秀文
- W 「読解力の低下」問題の焦点
- ――何が議論されてきたか――
- 「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考・評価」の学力構造と基準
- ――国際的スタンダードと日本の国語科授業改革―― /佐藤 洋一
- 言語技術教育の問題以前の国語科「読解力」の低下論 /渋谷 孝
- 第二部 「読解力の低下」問題と国語科授業の改革
- ――『検定外・力がつく日本言語技術教科書』を使って――
- T 『検定外・力がつく日本言語技術教科書』のねらいと内容 /市毛 勝雄
- U 実践提案 報告文「くつ工場を見学して」(三年)
- 音読・キーワード・文章構成の指導が「読解力」の向上につながる /小川 智勢子
- 「批判的読解力」を培う指導 /伴 一孝
- 段落ごとにまとめて読む技術の習得 /高橋 俊三
- V 実践提案 説明文「委員会活動から」(六年)
- 「『発信型』の授業」で読解力を身につける /石田 寛明
- 〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を育てる
- ――説明文を批判的に読ませ、学習用語を指導する―― /柳谷 直明
- 第三部 言語技術教科書の比較研究
- ――読解領域を中心に――
- アメリカの言語技術教科書の特徴と内容 /佐渡島 紗織
- ドイツの言語技術教科書の特徴と内容
- ――系統的なシラバスに基づき徹底訓練される読書技術―― /三森 ゆりか
- フランスの言語技術教科書の特徴と内容
- ――言語「要素」の諸項目から構成・編集されているフランスの読解教科書(前期中等教育の四年間を中心に)―― /中西 一弘
- オーストラリアの言語技術教科書の特徴と内容
- ――多文化社会に対応した多様なテクストの読み解きを提示する教科書―― /奥泉 香
- 日本の言語技術教科書の特徴と内容:時枝誠記『国語 言語編』
- ――国語学の言語本質論から生まれた言語技術教科書―― /小田 迪夫
- 日本の言語技術教科書の特徴と内容:学習院言語技術の会編
- ――読解力と言語技術教育(学習院言語技術の会のテキストの特徴)―― /岩崎 淳
- 書評と第一四回大会の報告
- 大森修 著 『大森修国語教育著作集』(全一二巻)
- 『第四巻こうして「分析批評」は始まった』明治図書 /井関 義久
- 市毛勝雄 監修・日本言語技術教育学会教科書研究部 著 小学校編(全一二巻)
- 『検定外・力がつく日本言語技術教科書』明治図書 /渋谷 孝
- 松山雅子 編著
- 『自己認識としてのメディア・リテラシー ――文化的アプローチによる国語科メディアプログラムの開発――』教育出版 /有働 玲子
- 田中実・須貝千里 編
- 『「これからの文学教育」のゆくえ』右文書院 /薄井 道正
- 科学的『読み』の授業研究会 編
- 『国語科 小学校・中学校 新教材の徹底研究と授業づくり』学文社 /堀 裕嗣
- 山本隆春 著
- 『文学教育基礎論の構築 ――読者反応を核としたリテラシー実践に向けて――』溪水社 /浜本 純逸
- 柴田義松・鈴木康之・鶴田清司 編
- 『大学生のための日本語学習法』学文社 /町田 守弘
- 日本言語技術教育学会 第一四回大会の報告 /佐藤 洋一
- 編集後記 /鶴田 清司
はじめに
日本言語技術教育学会にとって本年度は一つの収穫があった。それは『検定外・力がつく日本言語技術教科書』が二〇〇五年一一月中旬に、本学会の教科書研究部によって作成されたことである。
この刊行には、本学会理事各位の深いご理解とご支援があった。ここで深く御礼申しあげる。
『検定外・力がつく日本言語技術教科書』は小学一年生から六年生まで、前編・後編二巻ずつの全一二巻である。
内容は前後編とも教科書編とワークブック編とから成る。「新しい学習」として「あいさつ・敬語・視写・聴写・自己紹介」、音声言語学習として「話し合い・スピーチ」、読む・書く学習として「記録・報告・説明・論説」、論理的思考として「帰納・演繹・情報処理」、物語・小説・詩歌・劇として約四作品という構成である。教材数は平均が前編二五編、後編二五編。特色は、論理的文章教材の「話す・書く」という表現教材の指導過程を詳細に設定した点である。本書の第二部にも「ねらいと内容」として、やや詳しく紹介した。本学会各位の「指導に挑戦」を期待している。
本大会では、この『検定外・力がつく日本言語技術教科書』の教材二つを使って、第二部の模擬授業を計画した。
本年の大会テーマは「『読解力の低下』問題と国語科授業の改革――言語技術教育はどう応えるか――」である。
第一部はパネルディスカッションで、小田迪夫氏「〈意識化〉と〈慣れ〉の言語技術を」、小森茂氏「なぜ国語力(読解力)が重要なのか思考言語・感情言語・文化言語として=v、大森修氏「PISAの結果に基づいて」、鶴田清司氏「『読解力』の低下は国語科授業に原因がある」の提案とそれをめぐる協議・検討がある。
第二部は模擬授業とその協議・検討である。大会テーマを受けて「――『検定外・力がつく日本言語技術教科書』の指定教材を使って――」として、模擬授業一 小川智勢子、同二 伴一孝、 同三 高橋俊三(三年報告「くつ工場を見学して」)、模擬授業四 石田寛明、同五 柳谷直明(六年説明「委員会活動から」)の五氏の模擬授業を行ってから、指定討論者、向山洋一、野口芳宏、市毛勝雄、大内善一の四氏による協議・検討がある。
わが学会では、理論を主張するためには「事実」による立証が要求される。その「立証」の場が「模擬授業」である。例年、この実践によって有名な「理論」が実際どのくらい「強力」なのかを確認することができた人は数多い。今年もその体験ができる。
特に本年は、本学会の刊行した教科書を使った模擬授業によって、論理的文章の三年「報告」と六年「説明」とから一編ずつ選んで、その指導効果を検証しようという企画である。本教科書が論理的文章教材の学習指導にどのくらい有効か、模擬授業が授業の効果をどのくらい検証できるか、等のあらゆる角度からの検討を期待している。
もちろん最終的には、学校に戻ってからの会員各位の実践にどのくらい役立つかが最終評価となるわけであるが、本学会の試みがその糸口になれば幸いである。
本年の大会で多くの会員に豊かな収穫があることを祈る。
そして、本書が本大会のよい手引きになることを期待している。
二〇〇六年三月 日本言語技術教育学会会長 /市毛 勝雄
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