- まえがき
- 序章 「読解表現力」は「分析批評」の授業で鍛える
- 一 今すぐ改善したい「読解」の授業 ――例 『一つの花』『ごんぎつね』等
- 1 「読解」の授業、何が問題か
- 2 どのように改善するべきか
- 3 「『比べる』力」を育てる
- 4 「『つなげる』力」を育てる
- 二 「分析批評」の授業はこんな子どもを育てる ――例 『一つの花』『アップとルーズで伝える』
- 三 「読解表現力」は「分析批評」の授業で鍛える ――例 『大造じいさんとガン』『やまなし』
- 1 膨らむ期待
- 2 萎んでしまった期待
- T 文学的な文章で「読解表現力」を鍛える
- 一 「『10』のものさし」で目の付けどころを鍛えよ
- 1 「題」に注目させて鍛えよ――例 『スイミー』『手ぶくろを買いに』等
- 2 「作者名」に注目させて鍛えよ
- 3 「視点」に注目させて鍛えよ――例 『一つの花』
- 4 「設定」に注目させて鍛えよ
- 5 「アイロニー」「パラドックス」に注目させて鍛えよ
- 6 「イメジャリー」に注目させて鍛えよ
- 7 「色」に注目させて鍛えよ――例 『白いぼうし』『大造じいさんとガン』
- 8 「クライマックス」に注目させて鍛えよ
- 9 「レトリック」に注目させて鍛えよ――例 『海雀』
- 10 「あいまいさ」に注目させて鍛えよ――例 『雪』
- 二 「考える力」はこの二つの「力」で鍛えよ
- 1 「比べる」力とは何か――例 『ちいちゃんのかげおくり』
- 2 「つなげる」力とは何か――例 『わらぐつの中の神様』
- 三 「比べる」力はこう鍛えよ
- 1 「比べる」力、この「ものさし」で鍛えよ――例 『モチモチの木』『晴間』『カレーライス』等
- 2 「比べる」力、このアイテムで鍛えよ――例 『ちいちゃんのかげおくり』『海の命』等
- 四 「つなげる」力はこう鍛えよ
- 1 詩文の「つなげる」力は「設定」を決めさせて鍛えよ
- 2 詩文の「つなげる」力、このアイテムで鍛えよ――例 『りんご』『土』
- 3 物語的な文章の「つなげる」力は「アイ・パラ」で鍛えよ――例 『一つの花』
- 4 PISA型問題で鍛えよ――例 『ごんぎつね』
- U 説明的な文章で「読解表現力」を鍛える
- 一 「『5』ものさし」で目の付け所を鍛えよ
- 1 「題」に注目させて鍛えよ――例 『ありの行列』『平和のとりでを築く』等
- 2 「論の進め方」に注目させて鍛えよ
- 3 「内容」に注目させて鍛えよ――例 『ありの行列』『生き物はつながりの中に』
- 4 「構成」に注目させて鍛えよ
- 5 「筆者の工夫点」に注目させて鍛えよ――例 『「かむ」ことの力』『ガラパゴスの自然と生き物』
- 二 「批評力」はこう鍛えよ ――例 『アップとルーズで伝える』
- 三 「説明文を書く」力はこう鍛えよ ――例 『火星に生命をさぐる』
- V 「書く」ことで「読解表現力」を鍛える
- 一 「守」の段階は視写・聴写で鍛えよ
- 二 「破」の段階はこの2ステップで鍛えよ ――例 『海雀』
- 三 「離」の段階はこの5ステップで鍛えよ
- 四 日常的な五つの「日記」で鍛えよ
- 1 「二百字テーマ日記」で鍛えよ
- 2 「パロディー風日記」で鍛えよ――例 『土佐日記』風・『枕草子』風
- 3 「ベン図日記」で鍛えよ――例 『きつつきの商売』
- 4 「学習日記」で鍛えよ――例 『春のうた』
- 5 「分析日記」で鍛えよ
- W 「討論」の授業で「総合的に」鍛える
- ――発問づくり五つのコツと六段階31ステップの組み立て方――
- 一 「討論」の授業で鍛えよ ――「発問づくり」五つのコツ
- 1 「選択させる言葉」で問うて鍛えよ
- 2 「知覚語」で問うて鍛えよ
- 3 「場所」を問うて鍛えよ
- 4 「数」を問うて鍛えよ
- 5 引き出すことばで問うて鍛えよ
- 二 「聞き合う・話し合う」力は三段階3ステップで鍛えよ
- 1 「個」の「聞く力」「話す力」をこの三段階で鍛えよ
- 2 この3ステップで「討論」へとつなげよ
- 三 「討論」は六段階31ステップで鍛えよ
- 1 「自分の考え」はこの3ステップでもたせよ
- 2 「自分の立場」はこの6ステップで表明させよ
- 3 「そう考えた理由」はこの7ステップで発表させよ
- 4 「討論」はこの9ステップで行え
- 5 「最終的な自分の考え」はこの2ステップで書かせよ
- 6 「学習のまとめ」はこの4ステップで書かせよ
- 四 この三つの裏技で「討論」をさらに鍛えよ
- 1 「距離感」を意識させよ
- 2 「A対B=C」と教えよ
- 3 「副線」にこそ気を配れ
- 五 「討論」の授業 最終的にはここを鍛えよ!
- あとがき
まえがき
まさに今、本書を手にとられたあなたにお尋ねします。
国語科の「学力向上」と言われて、何が浮かびますか?
「『漢字』と『文法』かな……」
正直なご意見だと思います。
では、子どもたちの「文学的な文章(物語文)の読みの学力」はどのようにつけていらっしゃいますか?
「『文学的な文章』と言われても……、説明文なら『要約』とかあるからなんとなくわかるけど……。第一、文学的な文章に積みあがるような『学力』なんてあるの?」
正直なご意見だと思います。
本書は、あなたのような方にこそ、ぜひお読みいただきたいのです!
さらに、突っ込んで質問します。
四年生の教材に『一つの花』(光村)があります。子どもたちに、次のような問いを出します。
この題を検討しなさい。
あなたの学級の子どもたちなら、どう答えますか。
「子どもたちより……、実は……、私自身が何を検討したらよいのか、よくわからない……」
本書は、あなたのような方にこそ、ぜひお読みいただきたいのです!
有元秀文氏(国立教育政策研究所)は、日本の高校生の読解力が低水準だった(二〇〇三年にOECDが行った学習到達度調査、略称「PISA」)要因を、次のように紹介しています(『必ず「PISA型読解力」が育つ七つの授業改革―「読解表現力」と「クリティカル・リーディング」を育てる方法―』(明治図書))。
自由記述問題で無解答が多かったこと。
なぜ、無解答が多かったのでしょうか。
有元氏は、その理由として「今までの日本の国語教育にほとんど欠けていた」次の二点を挙げています。
一 子どもたちは、読んだことを正確に理解した上で、書いてあることを根拠にして、自分の意見を書くことが不得手だった。
二 ほとんどの子どもたちが、クリティカル・リーディング(創造的な批判読み)を学んだことがなかった。
特に「二」では、「PISA」で出題された、登場人物の行動を批判させたり文章を批判させたりする問いに、日本の高校生の三人に一人は解答できず白紙で提出したそうです。
この二点を克服する「読解力」を、文科省はPISA型「読解力」と名づけ、「読解力向上プログラム」や新指導要領においてその力をきちんと子どもたちにつけることを、現場に求めています。
しかし、急にPISA型「読解力」をつけろと言われても、「どんな気持ちですか」発問しかしたことのない者にとっては、「???」の世界です。
そこで有元秀文氏は、文科省の言うPISA型「読解力」を、従来から日本で行われてきた「読解」指導と区別し、現場の者によりイメージしやすいように、「読解」 + 「表現」で「読解表現力」と呼ぼうと提案されたわけです。
「そう言われても、結局なんのことかよくわからない……、第一、じっくり勉強し直す時間など、忙しくてなかなかとれない……」というあなた。でも、ご安心ください。
なぜなら、先の二点を克服する実践が、この日本においても以前から行われてきました。小学校教材においても、その成果がすでに蓄積されていますから、「一から学び直す」必要はありません。明日からすぐに実践できます!
それが、「分析批評」という手法です。
本書は、有元氏の言う「読解表現力」を、「分析批評」という手法によっていかに鍛えていくかを、誰にでもすぐに実践していただけるよう、豊富な教材例・実践例(背表紙をご覧ください!)とともに、ステップを踏みながらわかりやすく紹介したものです。
よって、あなたの強力な助っ人となることでしょう!
さあ、私と一緒に、「読解表現力」を鍛える旅に出かけてみませんか!!
/浜上 薫
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- 明治図書