- まえがき /須田 実
- 一 序論:敬語指導の基礎・基本の知識・技能とその活用力の育成
- ――社会に生きる人と人との心をつなぎ合う―― /須田 実
- 1 敬語指導の基本的理念と内容
- 2 敬語指導の基礎的・基本的知識・技能の定着とその活用力の育成
- 3 敬語指導の実践的課題と方法
- 4 敬語学習方法のアイデア(楽しく学び、活用力を付ける学習)例
- 5 学び合う人間の生きる力として向上を図る(評価力・向上心を含めて)
- 二 敬語指導の授業実践例
- 〈中学1年@〉 話す目的や相手や場面などを考えて対話するための言葉遣いの学習 /飯田 良
- 1 はじめに
- 2 単元の概要
- 3 学習の実際
- 4 実践を終えて
- 〈中学1年A〉 パネルディスカッションにおいて司会の言葉遣いについての指導方法の工夫 /宮崎 潤一
- 1 はじめに
- 2 総合的学習における発表活動(外郭)の概要
- 3 司会者に対して場面場所状況に応じて教師が司会の言葉遣いについての指導方法(内殻)本実践
- 4 指導の実際
- 5 まとめ
- 6 今後の課題
- 〈中学1年B〉 敬語の尊敬語・謙譲語・丁寧語のそれぞれの単文について誤りを正したりする「Q&A方式」の学習 /室岡 美恵子
- 1 単元・教材
- 2 学習指導と評価の計画(全四時間)
- 3 学習指導の評価と考察
- 〈中学1年C〉 お世話になった人にお礼の手紙を書く学習 /村田 伸宏
- 1 はじめに
- 2 学習の目標と指導計画
- 3 学習指導の実際とポイント
- 4 おわりに
- 〈中学2年@〉 物語教材を読んで話し合ったことを手紙で作者に伝える学習 /桑山 美佐子
- 1 はじめに
- 2 物語教材の読み方を学ぶ(内容と表現の両面から)
- 3 基本的な手紙の書き方を学ぶ(9/12時)
- 4 学びを生かして自分の手紙を書き、推敲する
- 〈中学2年A〉 敬語についての考えや感じたことを話し合い、その成果を「敬語新聞」としてまとめる
- ――方言と共通語から発展させて―― /田中 詠
- 1 単元名と目標
- 2 基本的な考え方
- 3 指導計画
- 〈中学2年B〉 「敬語」についての図書を選び、紹介し合い、敬語力を高める学習 /舟橋 秀晃
- 1 単元の概要
- 2 学習の実際
- 3 指導を終えて
- 〈中学2年C〉 これまでにいろいろお世話になった人に礼状を書こう /中西 一彦
- 1 はじめに
- 2 礼状を書く
- 3 おわりに
- 〈中学3年@〉 敬語についての理解を整理し、「敬語一覧表」を作成する学習 /米山 洋子
- 1 生徒の実態より
- 2 敬語の使い方を理解する学習指導の概要
- 3 指導の実際
- 4 あらたに見えてきたこと
- 〈中学3年A〉 面接・面談における言葉遣いや態度や表情などを話し合う学習 /市川 恵幸
- 1 はじめに
- 2 授業計画
- 3 授業実践
- 4 まとめ(評価)
- 〈中学3年B〉 招待状を各自が考えて作成し、発表し合う学習
- ――毛筆で招待状を書き、地域の先輩を、正しい敬語でお招きする―― /渡辺 節子
- 1 はじめに
- 2 学習内容を活用できる日常の場面の設定と、生徒間の学びの交流
- 3 実践の概要
- 4 指導の実際
- 5 おわりに
- 〈中学3年C〉 敬語について話し合い、経験や体験を通して敬語力を高める学習
- ――実生活に根ざした敬語の指導―― /須郷 和歌子
- 1 実践の概要
- 2 授業の実際
- 3 実践の成果と課題
- 〈中学3年D〉 中学校の卒業に際し、これまでお世話になった人への礼状を書く学習 /井田 明子
- 1 はじめに
- 2 学習指導の実際
- 3 授業の実際
- 4 課題とされる敬語表現とまとめ
まえがき
敬語は、「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の三分類で構成されている。「尊敬」の意味は“他人の人格・行為などをとおとびうやまうこと”と広辞苑に出ており、「謙譲」の意味は“へりくだること”の意味と出ている。「へりくだる」の意味は“他をうやまって自分を卑下する”の意味も示している。「丁寧」の意味は“注意深く心がゆきとどくこと”と出ている。
こうしてみると、「尊敬語・謙譲語・丁寧語」は、「敬語」とまとめて言える言語表現の語であることがわかる。言い換えれば、社会的ルールを守るマナーであるとも言えよう。
社会生活における「マナーと言葉遣い」は、わが国のみならず、どの国においても社会ルールとしての慣習が守られるようにしている。人と人とが互いに不快感を与えないよう気をつけるために、「礼」にのっとった行動・言語の基本的マナーを身に付け、それを表現し、仕事も人間関係も充実した生活を送るように努めているのである。
このような社会における社会人の基本は、家庭においても「躾(しつけ)」として、礼儀作法が身に付くように、幼い子どもの時から親が教え導いてきている実態がある。朝は「おはようございます」、昼は「こんにちは」、夜は「こんばんは」など、幼い時から覚えさせられた経験をもっていることと思う。さらに、言葉だけではなく、頭を下げ、相手の人に顔を向けて「私は元気ですよ」と呼びかける態度についても教えられた経験をもっているであろう。活気のある、みんなであいさつをし合う生活をつくるマナーである。これは、朝のメッセージ、昼のメッセージ、夜のメッセージとして、自分の心を開いて、相手の心も開かせ、互いの心を近づけるための大切な行為である。
日常生活において、電話で用件をすます場合にも、買い物をする場合にも、そこには自分の行動目標に達するための会話があり、その中で敬語が使われる。いずれの場合にも、対話者相互の「役割」が反映して一定の社会ルールによる言葉遣いがなされる。それは礼儀であり、「教えてもらう」「お世話になる」などの立場にある場合には、相手が自分より年齢が下であっても、敬語を用いながら「感謝の言葉」を述べるのが自然なのである。
このような「情報交換型」の基本的な会話は、まず「挨拶」「あいづち」から始まって、用件の切り出しに移り、話の目的に達して、ふたたび「挨拶」の形で終わるものである。
敬語についての文化審議会の指針で、「社会全般にわたり、敬語がコミュニケーションを円滑に行い、確かな人間関係を築いていくために欠かせないものである」と述べているように、学校教育においても単なる知識としての敬語指導であってはならないのであり、敬語を駆使する力が、社会に生きる力につながっていることを重視しているのである。
本書『敬語指導の基礎・基本』は、こうした敬語指導の「知識・能力」「その活用力」について育成する実践の在り方を工夫し、敬語指導の向上を目指すためのものである。
小学校・中学校の各巻の「実践指導例」は、それぞれの学年に応じ、全国各地の優れた諸先生によって執筆されたものである。ご活用していただき、より一層の指導向上が図られればと願っております。
最後になりましたが、本書の刊行につきまして、大変お世話になりました明治図書の江部満編集長に心からの感謝を申し上げるしだいです。
平成二十年十月 編著者 /須田 実
無くもがな。なお、23頁に、
おしらせをください
という表現が挙げてあって、これを敬語文に改めると、
おしらせしていただけますでしょうか。
となる、という記述がある。
おしらせいただけますでしょうか。
の間違いだと思う。菊地康人『敬語』(講談社学術文庫、
1997年)208頁を参照のこと。