音読指導の改革シリーズ1基礎・基本を押さえた音読学習

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生き生きとした国語教育を作り出すために、基礎・基本を押さえた音読学習をどう取り入れるか、低・中・高・中学の実践例を豊富に示す新しい提起。


復刊時予価: 2,563円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-303913-4
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき /蟹沢 幸治
T 生き生きとした国語教室を作り出したい
/新田 育宏
はじめに
総論
一 音読指導の意義
二 音読指導の要点
三 大切な学習の目的意識
おわりに
U 基礎基本の指導の実際
低学年 声を楽しむ一年生 ――入門期の音読指導―― /大瀧 郁子
一 学校が好きになる音読――声を楽しむ
二 国語が好きになる音読――口の形を楽しむ
三 読むことが好きになる音読――はぎれよさを楽しむ
低学年 動作化を取り入れた音読の学習 ――「たぬきの糸車」(光村 一年生)―― /高松 淳子
一 授業のねらい
二 教材の分析
三 単元のねらい
四 単元計画(全一五時間)
五 本時の流れ(二次・第3時)
六 授業の考察
低学年 声の大きさや速さに気をつけた音読の学習 ――「力太郎」(光村 二年生)―― /松橋 麻紀
一 授業のねらい
二 教材の分析
三 単元のねらい
四 単元計画(全一五時間)
五 本時の流れ
六 授業の考察
中学年 リズムやことばの響きを楽しむ音読学習 ――詩「春の歌」(光村 四年生)―― /大久保 伸夫
一 授業のねらい
二 教材の分析
三 単元のねらい
四 単元計画(全六時間
五 本時の流れ(第二次・第1時)
六 授業の考察
高学年 情景を強弱や間を工夫して音読する学習 ――「やまなし」(光村 六年生)―― /田中 慶之
一 授業のねらい
二 教材の分析
三 単元のねらい
四 単元計画(全一二時間)
五 本時の流れ(二次・第2時)
六 授業の分析・反省
中学校 学習プリントを活用した音読の学習 ――「字のないはがき」(光村 中学二年生)―― /橋本 祝子
一 授業のねらい
二 教材の分析
三 単元のねらい
四 単元計画(全六時間)
五 本時の流れ(四次・第1時)
六 授業の考察
V 基礎基本を育てる諸活動
声を出す楽しさをみんなで ――朝会・集会での音読学習―― /大久保 伸夫
一 みんなでやればなお楽しい
二 音読集会での取り組み
三 音読朝会「あいうえお体操」の取り組み
四 実践を振り返って
学年朝会での劇の発表会を通して ――「六月の蝿取り紙」(光村 中学二年生)―― /橋本 祝子
一 授業のねらい
二 指導の流れ
三 指導の展開
四 実践を振り返って
五 資 料
体育館に響き渡る声で ――卒業式の決意表明と呼びかけの指導―― /河原木 江利子
一 指導にあたって
二 決意表明の指導
三 呼びかけの指導
W 資料編
基礎基本を育てる言葉遊び
音読の実態調査・評価
楽しくできる家庭音読
学習指導要領にある音読の指導事項
あとがき /亀岡 コト

まえがき

 音読は読解能力を育てるのかコミュニケーション能力を育てるのか、という議論がひとつある。つまり理解の領域か表現のそれかというのである。事実、学習指導要領の音読の位置づけを見ると時代によって「読むこと」であったり「聞く・話すこと」であったりしている。そして今は「表現」の領域に入っている。音読の性格があっちへ行ったりこっちへ来たりしているということは、それだけあいまいであるということができる。が、同時に音読がそれだけどちらの性格をも合わせもった幅広い総合的言語活動が期待できるというしるしでもある。

 音読にも限界はある。それがすべてだとは思っていない。例えば、それによって話す・聞く能力が完全に育つかというとそうはいかない。話し言葉の指導はもっと深く広いものである。そういうことを踏まえたうえで、なお「今なぜ音読なのか」ということを考えてみたい。

 子どもの側から見ると、音読の魅力は「声を出して読むことは楽しい」の一語につきる。音読することによって読むことの快さにひたる、これである。頭で意味を考えるより音読で文章の調子とか言葉のリズムとかを感じながら、文章全体の流れになじんでいくのである。くり返し読むことによって文章の世界が明るさを増していく。その快感を求めて子どもたちは彫るように読む。呼吸、音声、発音など音声機能を総動員して文章を自分の体内に引き込み、その結果として自然に質の高い音読ができあがっていく。理解とか表現とか議論するより音読が総合学習であるということを音読の実践者ならだれでも実感しているのである。

 音読を熱心に三か月やれば子どもが変わる。クラスが変わる。音読実践者はみなそう思っている。なぜか。それは子どもたちにとって音読学習は楽しいからである。平板なただの活字が、音声を吹きこむことによっておどるように立ち上がってくる。これは子どもたちにとってたまらない喜びである。音読学習のすべての出発点はここにあるといっても過言ではない。本書を編んだ一番のねらいもここにある。楽しく明るい健康な国語教室を作りたい、と。学歴、テスト、偏差値といった戦後教育のキーワードが色あせつつある昨今、学んだ結果より学ぼうとする姿勢とか意欲の方に軸足が移ってきた。その意欲の原点は「学ぶことは楽しい」と実感させることであろう。楽しいとか明るいとかという情調的言い方は理屈好みの人には不満であろうが、これは現場人としての本音である。楽しいから三か月で子どもたちは変わるのである。

 思いつくままにもう少し音読のよさをあげてみる。@文章を読めることが国語学習のすべての前提である。文章を正確に読めることが大切で、正確さを求めるためには音読がよい。A音読学習は「読む」ことと「聞く」ことが一体となって効果をあげるものである。特に「よく聞く」ことが大事で、聞くことの意欲や能力・態度が育つ。また、聞き合うことが自然に行われ、他人理解の点でも効用が大きい。B当然のことであるが理解と表現の関連がごく自然に行われる。C黙読だけでは子どもの読みの実態がよく分からないが、音読すればその実態がはっきりする。また音読を鍛えることによって逆に黙読を正確で豊かなものにしていくことができる。D音読はどの子も参加できるし、どの教師でも取り組むことができる。大体以上のような効用が考えられる。これらの効用を通して学ぶ楽しさと自主的で意欲的な子どもたちのあふれる国語教室を創造したいと願うものである。

 八戸音読研究の会が実践書『授業を変える音読のすすめ』(明治図書)を出してすでに十二年経った。いささかの反響と根強い実践者層の広がりに支えられて今回の本書誕生となった。会員の日常の実践を持ち寄ったもので、ベテラン新人入りまじっての実践集である。その実践技術のうら側にひそむ会員のみなさんのひたむきな指導観、国語教室へ寄せる熱い思いをくみ取っていただければ幸いである。


   八戸音読研究の会顧問 /蟹沢 幸治

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      明治図書

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