- はじめに
- 序章 発問から物語の授業づくりを考える
- 桃山学院教育大学 /二瓶 弘行
- 物語を確かに読むとは、物語の「作品の心」を受け取ること
- 「大きな3つの問い」による詳細な読解
- 第1章から第11章は、それぞれ以下のような構成になっています。
- 1 教材解釈と単元構想
- @単元の中心発問につながる教材解釈
- A単元構想と発問
- B発問で見る単元の見取図
- 2 発問を位置づけた単元計画
- 3 授業展開例
- 第1章 おおきなかぶ
- 島根県松江市立大庭小学校 /広山 隆行
- 第2章 スイミー
- 立命館小学校 /宍戸 寛昌
- 第3章 お手紙
- 和歌山信愛大学 /小林 康宏
- 第4章 かさこじぞう
- 東京都江戸川区立船堀第二小学校 /藤原 隆博
- 第5章 ちいちゃんのかげおくり
- 大阪府 /河合 啓志
- 第6章 モチモチの木
- 立命館小学校 /宍戸 寛昌
- 第7章 世界一美しいぼくの村
- 宮崎県都城市立五十市小学校 /比江 嶋哲
- 第8章 一つの花
- 青森県八戸市立中居林小学校 /大江 雅之
- 第9章 ごんぎつね
- 新潟県長岡市立大河津小学校 /嵐 直人
- 第10章 大造じいさんとがん
- 筑波大学附属小学校 /弥延 浩史
- 第11章 海の命
- 筑波大学附属小学校 /青木 伸生
はじめに
もはや教科書の古典とも言うべき椋鳩十の『大造じいさんとがん』を学習材に、二十代のころに授業を試みたことがあります。
これまでにも、多くの実践記録が重点的に扱ってきた、残雪とはやぶさが格闘する場面。そして、多くの実践記録に見られる学習課題を、私も子どもたちに提示しました。
「大造じいさんは、なぜ銃を下ろしてしまったのでしょう」
作品には確かに、「が、何と思ったか、また、じゅうを下ろしてしまいました」とあります。しかし、大造じいさんの気持ちは直接描かれていません。読者に読みが委ねられます。子どもたちも、きっと様々に意見をもてるだろう…。
ある子は言います。「突然現れた残雪が、自分の飼い慣らしたおとりのがんを助けようとしているとじいさんは思ったのでは。だから、銃を下ろしたんだ」
ある子は述べます。「とりあえず、様子を見ようと思ったのでは。もしかすると、はやぶさが残雪を代わりにやっつけてくれるかもしれないと期待したのかも」
また、ある子は話します。「間違って、おとりのがんを撃ってしまうと悪いから。だって、空中で激しく動いてるわけでしょ」
子どもたちの発言が続きます。多様な意見が出され、黒板が埋まっていきます。
けれども、それだけです。自分と異なる意見も、なんとなく意味がわかる。なんとなくいい。少し違和感がある意見も、なんとなく否定はできない。そうして、子どもたちは、曖昧な思いを抱きながら授業は終わる。教師である私もまた。
「発問」は、子どもたちの思考を揺さぶり、言葉そのものを検討し、一人ひとりが自分の読みを形成し、仲間と交流・共有する、その読みの授業を創り出す、「命」ともいうべきものです。だからこそ、その「発問」は、育成すべき「読みの力」に基づく、教師の徹底的な教材研究と、学習者の「読みの力」の実態把握なしでは生み出せません。
本書では、典型教材を基に、どのように作品と向き合い、どのような「発問」を設定していけばよいのか、若い先生方にも受け取っていただけるように、丁寧にわかりやすく解説しました。先生方の明日の物語授業づくりに、きっと役立つことを願いつつ。
2020年6月 /二瓶 弘行
「発問大全」なので仕方がないが児童の発言の拠り所となる叙述がもう少し分かりやすく示されていると
若い先生方にとってより親切なのではないかと感じた。
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