- まえがき
- 序章 日本語教育の徹底を国民的運動に発展
- 全国小学校国語教育研究会名誉顧問 /瀬川 榮志
- T 「生きる力」を育む日本人としての子ども
- 一 豊かな言葉の力を子どもたちに
- 二 「生きる力」と国語
- 三 豊かな国語力をどう培うか
- U 学習指導要領の基本理念の具現化
- 一 なぜ「伝え合う力」(「人間関係力」)の育成が必要なのか
- 二 どのように具現化するか
- 三 今後の課題は何か
- V 国語教育を支える言語観
- 一 今なぜ言語観か〜日本文化として価値ある言語の蓄積を願って〜
- 二 伝え合いを成立させる価値ある言語行動
- 三 思考力が働く言語の国語科指導への生かし方
- おわりに
- W 「生きて働く国語力」の螺旋的系統
- 一 国語力の螺旋的系統とは
- 二 国語科教育の体系化はなぜ必要か
- 三 効果的な国語科指導の具体例
- X 学習者主体の国語科授業の開発
- 一 基礎・基本と評価の明確化
- 二 個に応じた学習指導の工夫
- 三 子どもを変える授業の組織化
- Y 国語教育と国語科教育の徹底
- 一 「生きる力」を培うこれからの国語科教育
- 二 学校教育における国語教育
- 三 国語科教育と国語教育を調和統一した学校
- Z 国語教育を中核に据えた学校教育
- 一 学校教育の改革
- 二 教師の意識改革
- 三 児童の国語力による向上的変容の具体事例
- [ 国語教育を中核に据えた家庭教育
- はじめに
- 一 家庭と学校との連携
- 二 家庭も意識改革で言葉の力を
- 三 思春期の子どもの言語力は大人の対応力で
- おわりに
- \ 国語教育を中核に据えた社会教育
- 一 地域に眠る方言に視点をあてる
- 二 古老がたまうつ先生(先輩の授業)として登場
- 三 古語のにだてい(新事をつくる)にふれる
- 四 新生児にまつわる神秘的な儀式
- 五 地域の古老は言語学者である
- ] 日本語教育重視と新教師論
- 一 母語・日本語の危機感
- 二 国際社会に伍していく日本人
- 三 国語愛と教師の資質・条件・新教師論
- 二十一世紀を拓く国語教育の価値ある情報
- 一 はじめに─全小国研図書刊行による研究活動
- 二 基礎・基本・統合発信力ワーク開発の実際
- 三 個に応じた習熟度別指導のワーク教材開発
- 四 「読むことの習熟度別指導」技能能力コースの授業 第三学年
- 五 一人一人の子どもの可能性を最大限に発揮する
- 全国小学校国語教育研究会・国語教育研究の総括と展望
- 一 草創期
- 二 困難克服向上期
- 三 充実期
- 四 研究の歴史
- 五 新世紀の国語教育を拓く全小国研の展望
- あとがき
まえがき
全国小学校国語教育研究会(略称・全小国研)は、昭和四十八年に発足してから、研究大会は回を重ねて、平成十八年度に第三十五回沖縄大会を迎えます。
会則にもありますとおり、本会の目的は、「全国の小学校国語教育関係者の力を結集し、わが国の小学校国語教育の推進と発展に寄与すること」です。この目的を達成するための事業の第一が、研究大会の開催です。今回の研究大会により、北海道から沖縄まで文字どおりの全国的な研究団体になることができました。
国語教育には、それぞれの地域における歴史と伝統があり、実践研究の積み重ねがあります。研究大会は、その地域の各教育委員会、各小学校、多くの国語教育に関係の皆様の長年にわたる準備とご苦労があって開催されます。そして、それぞれの地域で追究されてきた国語教育、国語科授業の在り方とそれを支える実践理論を全国に発信していただきます。その多くは、国語教育研究の成果として単行本やシリーズの書籍としてまとめられ出版されてきました。
ここに至るまでには、現在、名誉顧問の朝倉秀雄先生、瀬川榮志先生をはじめ、小学校国語教育の全国的な研究組織の必要と発展を願う、全国各地の国語教育研究者、指導者、実践者の多くの皆様が長年にわたってご尽力いただいたお陰であると改めて感謝を申し上げます。
この度は、瀬川先生に監修をいただいて、全小国研として国語教育の実践研究に指針となる理論書を目指して本書を発行することになりました。先生には、毎回の研究大会で基調講演をお願いしていますが、研究大会に至る研究の過程でもご指導をいただいてきました。全小国研が、研究組織として整い、研究大会も、毎年、盛会に行われるようになりました。
全小国研は、瀬川先生のご指導のもとに、二十一世紀の国語教育を拓く教育理念と研究構想について、五つの柱を設定しています。「一 新世紀の教育を育む哲学・思想・文化の創造」「二 二十一世紀を拓く国語教育の理念の追究と理論の確立」「三 変化する社会に対応する言語観の確立」「四 『生きて働く国語力』を定着する国語教育の体系化」「五 国語教育の原理・原則に基づく授業研究法の開発」です。それらをもとに全小国研として国語教育のための実践理論書をまとめることは大きな課題であり、願いでもありました。
折しも、平成十六年二月、文化審議会の答申「これからの時代に求められる国語力について」が公表されました。この答申は、今後の国語教育の在り方について、学校教育にとどまらない多くの貴重な提言を内容としています。
その一つは、国語教育の在り方についての基本的な認識として「国語教育は社会全体の課題」であるということです。「家庭や地域社会における言語環境が、子どもたちの国語教育に大きな影響を及ぼしていることに配慮し、学校教育、家庭教育、社会教育などを通じて、国語教育を社会全体の課題としてとらえていく必要がある」としています。
もう一つは、学校における国語教育の基本的な考え方として「国語教育を中核に据えた学校教育」です。「学校教育においては、国語科はもとより、各教科その他の教育活動全体の中で適切かつ効果的な国語の教育が行われる必要がある。すなわち、国語の教育を学校教育の中核に据えて、全教育課程を編成することが重要である」としています。
本書は、これらの提言を受け止めるとともに、全小国研の教育理念と研究構想を具体化して各章を構成しました。執筆いただきました全小国研関係の皆様には、これからの国語教育の在り方を示す新たな課題について限られたスペースで述べていただきました。全国の国語教育実践者の皆様の、研究や実践に参考にしていただきますように願っています。
全国小学校国語教育研究会会長 /鈴木 一コ
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