読解力UP! 小学校全体で取り組む「読書活動」プラン

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読書活動の成功アイデアが満載!

学年の壁を越えた読み聞かせ、感想を手紙に書いて友達に伝える読書活動、学校のイベントを利用した読書活動など、読解力を伸ばすアイデアあふれる読書活動の事例が満載。各学年の年間活動計画もあり、読書活動を計画する際に必読です!


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ISBN:
978-4-18-301011-7
ジャンル:
国語
刊行:
3刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 180頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
T 学校全体で読書活動に取り組もう
一 年間の読書活動プランを立案しよう
二 各学級担任へ読書活動プランを提案しよう〜好き好き大好き!学級文庫大作戦〜
U 各学年で楽しい読書活動プランを実行しよう
1 低学年から読書活動に親しもう
一 低学年の年間読書活動計画を立案しよう
楽しんで読書する態度を育てる年間指導計画作りをしよう
二 読書活動を習慣化させよう
(1)絵本の読み聞かせで、本を好きになる心を育てよう
三 国語授業に読書活動を取り入れて読解力を育てよう
(1)一年生をレオ=レオニさんの絵本の世界に招待しよう/(2)お話のおもしろさを、手紙に書いて友達と伝え合おう/(3)絵本の絵を、言葉で説明してみよう
四 表現活動で読書活動をさらに深めよう
(1)自分のお気に入りの場面を選んで、絵にしてみよう〜絵に表す読書カードの活用〜/(2)目ざせ名たんてい「サンゴの海の生きものたち」
五 学校のイベントを利用して読書活動を広げよう
(1)イベントを生かした単元づくり
2 中学年から幅広い読書活動を行おう
一 中学年の年間読書活動計画を立案しよう
説明文や詩など幅広い読書活動を行う年間指導計画作りをしよう
二 読書活動を習慣化させよう
(1)一人ひとりに読書の楽しさを味わわせるために
三 国語授業に読書活動を取り入れて読解力を育てよう
(1)比べ読みから想像的な読みの力を身につけ、多様な読書活動へ/(2)同じ作者の作品の読みを広げたり深めたりして読書を楽しもう
四 表現活動で読書活動をさらに深めよう
(1)本の帯で世界の民話を読み深めよう/(2)叙述へのせまり方を教えることで、主体的になり、読みが深まっていった表現活動「ごんぎつね」
五 学校のイベントを利用して読書活動を広げよう
(1)比べ読みをして本のレビューを書き、フェスティバルでの「発表」へつなげよう
3 高学年から考えを広げる力をつける読書活動を行おう
一 高学年の年間読書活動計画を立案しよう
テーマのある読書活動を行う年間指導計画作りをしよう
二 読書活動を習慣化させよう
(1)読書で自分の壁を跳び越えよう。読み聞かせでクラスの壁を跳び越えよう/(2)いろいろな人を巻き込んで展開する読み聞かせによって、読書習慣をつける
三 国語授業に読書活動を取り入れて読解力を育てよう
(1)筆者を知ろう 私の星野道夫ファイル/(2)芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を、言葉や文に着目して豊かに想像しながら読もう
四 表現活動で読書活動をさらに深めよう
(1)味わった本のよさを絵や朗読劇で表現してみよう/(2)読書活動をオリジナルガイドブック作りにいかそう
五 学校のイベントを利用して読書活動を広げよう
(1)横浜市立岸谷小学校の取り組み
V 司書や保護者と協力して読書活動を推進しよう
一 司書教諭とともに読書活動計画を立案しよう
二 保護者と協力して読書活動を推進しよう〜保護者の立場から〜
【資料】
資料@ 神奈川県横浜市立市沢小学校 読書ボランティア
資料A 神奈川県横浜市立篠原小学校 学校図書館

はじめに

 読書は大事だ、という声がさかんに聞かれる。図書を購入するための予算措置もすすめられた、司書教諭の配置もすんだ、国語教科書の内容も読書重視の編成になった。読書活動を進めるための外側の環境は、ある程度整ってきたかもしれない。

 しかし、各学校における実践活動はもう一歩だ、というのが筆者の印象である。学校図書館を見てまわっても、国語の授業を参観しても、一部を除いて、学校での読書活動はまだまだ日常的なものになってはいないし、十分に定着しているようには思えない。

 もちろん、それには様々な事情がある。学校の中のことだけを考えてみても、悪条件は重なっている。すなわち、読書活動を中心に据えたカリキュラム作製の困難さ、図書館の本の選択とその活用のノウハウの貧弱さ、あるいは学校における業務の多忙化、などなど。加えて、緊急課題だとされる「学力向上」のかけ声に対応するためには読書どころではない、と考える向きもあろう。

 さらに眼を社会に向けると、本をめぐる文化状況が大きく変わってきている。現代文化の中で映像や音楽の占める位置が極端に肥大化し、活字文化は片隅に追いやられつつある。新聞を定期購読している家庭も減少している、児童書の売れ行きも芳しくない、町の本屋さんがバタバタとつぶれていく。学生たちも、情報収集するに当たって、書籍を購入するよりもコピーで済ます、あるいはインターネット検索だけで用を足すのは当然のことのようになっている。確かにこれからの時代は、書物だけでは、十全な情報収集は出来ない、また、小説や詩を楽しむにしても、映像や音楽の助けがあった方が、より豊かな読書体験ができるだろう。

 しかし、だからといって、本を読むという活動の重要性が減じるわけではない。活字の世界に親しむには、本という形式の文化財に触れることがもっとも簡便で、同時に本質的な体験になるのである。せっかく活字を効果的に並べた本という存在があるのに、それを敬遠したままではもったいないではないか。本の世界だけが蓄積してきた広くて深い文化の世界は、これからの私たちが困難な社会を生き抜いていく上で大きな力になるのである。今、あらためて本=活字に着目しなければならないゆえんである。

         *

 本を読むことはきわめて個人的な体験である。それを強制することに対して、疑問の声があがることがある。筆者も同じように、それには疑問を持つ。あらためて言うまでもないが、強制によって読書活動が成立するはずがない。文章を読むことは、きわめて主体的な行為であり、外側からそれを要求したとしても、眼はただ活字の上を滑っていくだけでしかない。したがって、読書活動を推進するには、読書をする場と時間を提供することがもっとも大事だという考え方も生まれてくる。「朝の十分間読書」の運動は、こうした立場に近いところから発想されたものだろう。読書活動を進めるにあたって、まずは、場所と時間の確保が重要なのだ。

 だが、充実した読書活動を体験すると、人に伝えたくなる。あるいは、他人が読んでいる本から、その人の人となりがわかる。どうしてその本を読んでいるのか聞きたくなる。このように、個人の読書は、それだけで完結するわけではない。その本を媒介にして、まわりの人を巻き込んで、広がっていくのである。学校における読書活動の展開は、こうした点に着目する必要がある。一冊の本から友達へ、また友達から数冊の本へという往復運動の中で、読書活動の幅は広がり、質的にも深いものになっていく。仲間とともに本を読み合い語り合う学習活動をとおして、子どもたちは、本を読むことが、おもしろくて興味深い体験だということを実感していくだろう。

 あらためて確認するまでもないが、読書活動の教育において、小学校の役割はきわめて大きい。小学校で初めて本格的に文字を読むことを学習した子どもたちには、是非、本の世界の豊かさとその広さとを体験させたい。読書は、基礎学力の形成にあたっても、きわめて大きな力になる。豊かな本の世界と、確かな実生活の体験との両方が絡み合い支え合って、子ども自身の内側に学力が着実に育っていくのである。

 現在、「読解力」が話題になり、それを身につけることが重要だということが、共通の認識になりつつある。国語学習の中だけでなく、様々な教科の中でも「読解力」は必要だし、また各教科の中で意図的に「読解力」を育成することも可能だと言われている。おそらくそこで「読解力」を獲得した子どもたちは、積極的で主体的な読書活動に向かうことになるだろう。もし、そうでないとすれば、せっかく身につけた「読解力」も、狭い地平に閉じこめられてしまうだけだ。もちろん、豊かな読書活動も「読解力」を伸展させる。というより、読書活動は「読解力」を基底から支えている大きな地盤なのである。「読解力」と読書活動とは、車の両輪のように切り離すことができない言語活動なのだ。

         *

 本書には、こうした問題に果敢に切り込もうとした横浜の小学校の様々な読書活動に関わる取り組みを収めてある。横浜市は、戦後の教育活動において、常に新しい風を取り込みつつ独自の足取りで歩みを進めてきたことで知られている。読書活動についても、現在、率先して新しい地平を切り開こうとしている。

 編集に当たっては、読書活動に積極的に取り組んでいる各学校の校長先生や司書教諭の先生、あるいはそれぞれの学校で読書指導に力を入れている先生方や、学校の読書活動に協力されている保護者の方々などに、多大なご協力をいただいた。学校全体での読書計画の試みや、地域との連携の実践を収録できたのも、こうした方々のご尽力のたまものである。ここにあらためて感謝申し上げたい。

 いうまでもなく、学校教育における読書活動をめぐっては、これから新たに開拓していかなければならない部面が多い。本書に収めた取り組みについても、これを基盤にして、さらに深めていく必要があるだろう。

 いずれにしても、学校をあげて読書に取り組もうとしている横浜市の教育実践の一端を知っていただきたいという思いが、本書を編んだ最大の動機である。不十分な点については、ご叱正をいただきたい。

 本書が、ともに読書活動の進展に向かって手を携えて進んでいくための何らかのヒントになるならば、執筆者一同にとって、この上のない喜びである。


  二〇〇七年十月一日   横浜国立大学教育人間科学部教授 /府川 源一郎

著者紹介

府川 源一郎(ふかわ げんいちろう)著書を検索»

1948(昭和23)年、東京生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。川崎市の公立小学校で、普通学級、障害児学級(ことばの教室)を担任。横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校教諭を経て、現在、横浜国立大学教育人間学部教授。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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