- はじめに
- Chapter1 子どもたちのつまずきを理解する
- つまずきの要因について知る
- 1 [数えること]一対一対応による計数が困難
- 2 [数えること]数を系列順に数えることや「○飛び」による計数が困難
- 3 [数を集合として捉えること]数を構成的に見ることが困難
- 4 [計算すること]和が20までの暗算が困難
- 5 [計算すること]筆算形式による計算を正確に且つ流暢に行うことが困難
- 6 [文章題を解くこと]文章中の数量の関係に着目しながら問題を解決することが困難
- 7 [形を捉えること]構成要素に着目しながら図形を捉えることが困難
- Chapter2 ユニバーサルデザインの視点を取り入れた算数授業づくり
- 全員が「分かる」「できる」授業にするには
- 環境の工夫
- 1 学習の準備や望ましい行動について具体的に示し集中の持続を図る
- 2 ノートテイク量の調整を行うことで学習意欲の持続を図る
- 3 黒板を機能的に活用することで活動の焦点化を図る
- 情報伝達の工夫
- 4 具体的且つ端的な指示・発問によってリズムをつけてテンポをあげる
- 5 選択肢を設けることで立場をもたせる
- 6 条件を変えることのできる場面を提示することで「問い」を生じさせる
- 7 具体物の操作や役割演技をさせることで解決の見通しをもたせる
- 8 構造的な板書で活動の見通しをもたせる
- 9 分類整理する活動を通して「問い」を焦点化する
- 10 学習内容を関係付けることで着目する視点を明らかにする
- 11 個のつまずきを教師の誤答例として提示し,教材化を図る
- 活動内容の工夫
- 12 条件を不足させることで複数の問題を想起させ解決方法の比較を促す
- 13 活動のサイクル化を図ることで活動の見通しをもたせる
- 14 答えからその求め方を考える活動を促すことで理解を確かにする
- 15 具体的操作や体験的活動に取り組むことで確実な理解につなげる
- 16 操作を言語化する活動を通して確実な理解につなげる
- 17 敷き詰めや立体づくり等,体験的活動を通して図形の感覚を養う
- 18 ペア対話やグループ活動を取り入れることで「伝える・聞く」といった相互作用を生じさせる
- 19 グループで完成させる課題に取り組ませることで意欲化を図る
- 教材・教具の工夫
- 20 問題文の一文提示や並び替えにより,確実な場面把握を促す
- 21 実物大の提示や,実寸での作図を通して自分なりの考えを確かにする
- 22 異なる色のおはじきやブロックで数の見方や計算の仕方を確かにする
- 23 位取り板を用いることで数の構成理解を確かにする
- 24 不注意による計算の誤答を防ぐワークシートを活用する
- 25 ワークシートの工夫,問題量を調整することで意欲化を図る
- 26 ICTを活用することで注目の強化を図る
- 27 個別支援教材を活用することで活動の見通しをもたせる
- 評価の工夫
- 28 行動に注目し,評価を具体化する
- 29 個への肯定的評価を繰り返すことで意欲の向上を図る
- 30 全体への肯定的評価を繰り返すことで集団としての力を高める
- 31 態度の評価と内容の評価を具体的にすることで参加から理解へとつなげる
- 32 ノートに赤丸評価をすることで意欲化を図る
- 33 子どもの発言を板書に残すことで課題の焦点化を図る
- Chapter3 ユニバーサルデザインの視点を取り入れた実践事例
- 1 [1年生]かずのかくれんぼ
- おおきい かず
- 2 [1年生]おはなしをつくろう
- 3つのかずのけいさん
- 3 [2年生]150はどこにある?
- 3けたの数
- 4 [2年生]九九を使ってあめの数を求めよう
- かけ算
- 5 [3年生]何人に分けられるかな?
- あまりのあるわり算
- 6 [3年生]走ったのは何m?
- 間の数に注目して
- 7 [4年生]全部で何ポイント?
- 小数のしくみ
- 8 [4年生]立方体をつくろう
- 直方体と立方体
- 9 [5年生]積み木は全部で何こ?
- 直方体や立方体のかさの表し方を考えよう
- 10 [5年生]代金の求められる長さは?
- 小数のかけ算
- 11 [6年生]同じ味のドレッシングをつくろう
- 比
- 12 [6年生]どのプランを選ぶ?
- 比例と反比例
- 参考文献
はじめに
「なんでぼくだけおはじきを使わないといけないの?」
放課後,個別指導をしているときに1年生の男の子から投げかけられた一言です。振り返ると,このころの私は,「この道具を使えばきっと計算の仕方が理解できるはず」……等の思いに駆られ,様々な教材や教具を準備することしかできていませんでした。そこには,子どもの実態把握が含まれておらず,誤答に関しても,その「間違い方」に着目した支援を行うことができていませんでした。この男の子は,10の補数を想起することが困難で計算につまずいていることが分かりました。一方で,聴覚的な記憶や運動感覚を働かせる活動が得意なことも分かりました。そこで,「10のさくらんぼづくりゲーム」や「(3拍子で)10つくりの歌」に継続的に取り組みました。すると,被加数を見て「8と2で10……」等と言語化しながら計算課題に取り組むようになり,暗算の正確性が着実に向上していきました。この例からも,つまずいているポイントを的確につかみ,その困難さの軽減に焦点をあてた根拠のある支援方法の具体化が必要であることが分かります。
また,個別指導において個々のつまずきの要因を明らかにしていく中で,気付かれていない同様の困難さをもつ子どもがいることが分かりました。この発見は,一斉授業の中で活動の見通しが曖昧になり,不参加を起こしている状況の子どもたちと重なります。一斉授業では様々な立場の子どもがいます。そこで,高知県教育委員会が示す「ユニバーサルデザイン(以下UD)の視点を生かした授業づくり」を参考に授業改善に取り組むことにしました。本書では,「特別な教育的支援を要する子どもへの支援が,全ての子どもを対象とした授業づくりのヒントとなる」といった,授業UDの目的に立ち返り,「どの子も『分かる』『できる』授業」を問い直してみます。全ての子どもが「学ぶ愉しさ」を味わえるような指導のお役に立てれば幸いです。
2021年12月 /近藤 修史
子どもの困り感に対応していくには読んで損なしの一冊だろう。