- まえがき
- 1章 「出会い方」と「別れ方」のマインドセット
- 6年生のゴールを考える
- 前担任の「願い」を引き継ぐ
- 全員リセット、全員リスタート
- 初日に伝えたい話、伝えられる話
- 子どもたちにとっては「6年目」
- どんな1年間にしたいか語り聞かせる
- 「初心」を忘れてはならない
- 相対的に「不安」を小さくする
- 中学校での「出会い」を大切にさせる「別れ」
- 2章 「仕組みづくり」のマインドセット
- 仕組みの必要性を考える
- 子どもたちの立場になって考える
- 朝の会・帰りの会、日直で育てる
- 係活動のキーワードは「自分らしさ」
- 給食の仕組みは担任が主導権をもつ
- 掃除で育てたい心を仕組む
- 馴化には時間をかける
- フォロワーシップも育てる
- 子どもたちを信頼し任せる
- 3章 「授業づくり」のマインドセット
- 授業の価値を考える
- 指導書をなぞる授業から始める
- 授業で関わりを強めていく
- 「振り返り」の書かせ方で変わる
- 教室は、子どもたちが学ぶ「学習室」
- 授業の「苦手意識」の正体は関係性
- 授業における担任の役割
- 授業は「子ども×大人」
- 授業が生命線
- 4章 「行事の取り組み方」のマインドセット
- 「導入」を考える
- 「組織」を育てる
- 学級内の「凸凹」を優先する
- どの子も「化ける」と信じる
- 教師の出番は「停滞期」
- 行事はあくまで「通過点」
- 「乾いた言葉」は心に届かない
- 「楽しい」と「楽」の違いを教える
- 「行事」の価値は「可能性が広がる」こと
- 5章 「ほめ方」「叱り方」のマインドセット
- 「その子」にとって何が必要かを考える
- 集団のことを考えた個の指導にする
- 「整える」より「調える」意識をもつ
- 成長のタイミングを見極める
- 寄り添い続ける
- 「つもり」にならない
- 焦らず、弛まず、怠らず
- 「見守る」距離感を大切にする
- ほめるも叱るも「うまくやろう」としない
- 6章 「働き方」のマインドセット
- 「何をするか」より「何ができるか」を考える
- 「おかげさま」の気持ちを忘れない
- 「学級通信」は「学級通心」
- 「学校教育目標」は最大の味方
- 学年の共通理解は「紙ベース」
- 教室掲示を子どもたちに「任せる」
- ためらわずに「教室開示」する
- 「定時退勤」と「年次休暇」で休む
- 「自信」よりも「誇り」をもつ
- あとがき
まえがき
はじめまして。古舘良純(ふるだて・よしずみ)です。現在は岩手県の公立小学校に勤務しており、6年連続10回目の6年生担任をしています。本当に貴重な経験をさせていただいております。
私はもともと、中学校の保健体育の教師を志望して教員採用試験を受けていました。しかし、今こうして小学校現場で働いているのは、「小学校6年間における子どもの成長の大きさ」を実感した経験があったからです。
それは、大学を出たばかりの年、講師としてお世話になった小学校での経験でした。たった3人の1年生を入学式で迎えました。そして、たった6人の6年生を卒業式で送り出しました。あんなに小さな1年生が、6年間でこんな立派な姿となり、卒業していくのかと感動したことを覚えています。
中学校教諭を志望していた私は小学校現場で勤務することを決意し、千葉県教員採用試験を受験することにしました。当時、一番採用の可能性が高い自治体でした。
それから11年間、木更津市を拠点としながら担任経験を積みました。そして、令和元年採用のタイミングで採用試験を受け直し、岩手県に戻りました。
現在、6年連続で6年生担任をしている最中ですが、こんなにやりがいのある学年はないと感じています。もちろん、毎年同じ教科書、同じ行事という意味では新鮮さに欠ける部分はありますが、実態の違う子どもたちを目の前にすると、「どんな素敵な出会いがあり、どんなに惜しまれる卒業式になるだろうか」と胸が高鳴ります。
小学校の教育課程を全うして旅立つ子どもたち。最後の1年間を共に過ごし、見送ることができる6年生担任の特権を毎年幸せに感じています。
しかし、私自身は人事に関して「希望」を出したことが一度もありません。これまで任せていただいてきた十度の6年生担任は、管理職の先生が決定した人事でした。逆に言えば、6年生担任を希望する先生がいなかったのではないか……と考えることもできます。(もちろん、持ち上がりの「希望」を出した先生方はいたと思いますが)
実際、6年生は苦労の多い学年かもしれません。6年生を担任しながら病休に入るベテランの先生がいました。「高学年女子」とのトラブルで学校に来られなくなる若手の先生がいました。担任とぶつかり、不適応を起こして子どもが休みがちになる学級や、トラブルが耐えずに学級が崩れていく様子をただ眺めているしかない年もありました。
今回、「心の在り方=マインドセット」をテーマに本書を書かせていただきました。6年生担任をする中で苦労したり悩まれたりしている先生方と、6年生担任としての心の在り方を共に考えたかったからです。方法論ではないアプローチで教室を変え、子どもと教師が共に成長する学級を目指したかったからです。
そこで、私がこれまで経験してきた6年生とのエピソードを交え、事例をもとに考え方や在り方を書かせていただきました。もし、先生方の教室で同じようなエピソードがあったり、似たような経験をおもちだったりしたら、教えていただけるとうれしいです。
そうした理由で、本書はポップではない……少し重たい展開が多くなっているかもしれませんが、ご容赦いただけると幸いです。
こうして、いかにも「6年生はお任せ!」風に書いていますが、実は、何度6年生を担任してもその難しさを感じています。それは、先述したように「子どもたちの実態が違う」からです。悩み続けた日々がありましたし、「頭ではわかっている」が「心がついてこない」というケースも多くありました。
担任ばかりが「小学校生活最後の年だから」と意気込んでも、子どもたち全員が一気に育つわけもなく、なかば不完全燃焼で送り出す年もなくはありませんでした。
そう思い返すと、本書を通して一番マインドセットできたのは私自身かもしれません。そして、マインドは毎年磨かれ、太くなり、しなやかになっていくものだと感じました。つまり、「こうすればよい」「こうすればうまくいく」「これが正しいやり方」という絶対的な答えはなく、常に目の前の子どもたちを軸に、日々マインドの修正改善を繰り返していくしかないのだと考えました。
その繰り返しの中で、「6年生担任としての1年間は充実させることができる」と確信しています。子どもたちと心を通わせ、素敵な学級を築くことが可能です。本書を読み進めていただく中で、読者の方々とそうした確認ができればうれしいです。
本書の執筆にあたり、これまで卒業させてきた子どもたちをたくさん思い出しました。そして、現在担任している子どもたちへの指導にどう紐づいているか考えました。私のマインドは、目の前の子どもたちのおかげで成り立っていると再確認できました。いつまでも、子どもたちは私の誇りです。
古舘学級を卒業していった子どもたちへの感謝と敬意をもって、まえがきとします。
/古舘 良純
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