- はじめに
- 第1章 どの子も輝く教室をつくるマインドセット
- 1 まずは自分から
- 2 変えられるのは自分だけ
- 3 ビジョンを描く
- 4 子どもの得意なこと・好きなことを見つける
- 5 一人ひとりの基準を尊重する
- 6 子どもたちの力を信じ切る
- 第2章 個性を生かす環境・システムのつくり方
- 1 サークルをつくる
- 2 「対話」の前に「会話」の機会を増やす
- 3 リスペクトで子どもをつなげる
- 4 得意なことを人のために使う場をつくる
- 5 安心感を生み出す
- 6 簡単に答えを教えない
- 7 チャレンジ自体を楽しめる環境をつくる
- 8 事実→理想→行動のサイクルを大切にする
- 第3章 子どもが自ら動き出す学びのしかけのつくり方
- 1 現在地を把握して未来像を描かせる
- 2 子どもの自己選択場面を設定する
- 3 事実の振り返りを大切にする
- 4 ワークショップスタイルを取り入れる
- 5 シェアする文化をつくる
- 6 個から始まり個に終わる
- 7 「3つの間」を常に意識させる
- 第4章 パフォーマンスを高める教師自身の学び方
- 1 強みは何かを考える
- 2 得意分野で子どもたちと楽しむ
- 3 好きな分野から学びを借りてくる
- 4 伴走者をもつ
- 5 限られた条件の中で全力を尽くす
- 6 全ては自分の責任だと覚悟する
- 7 「一枚岩」の幻想を破る
- 第5章 教師の個性が光る職員室のつくり方
- 1 いろんな視点を借りてくる
- 2 それぞれの強みと弱みを知る
- 3 自分の学びをオープンにする
- 4 マルチアングルで最適解を探す
- 5 その人にしかできないことにフォーカスする
- 6 学び続ける
- 第6章 ともに子どもを育てる保護者・地域の力の生かし方
- 1 子どもたちを支えるパートナーになる
- 2 多種多様なマンパワーを知る
- 3 地域の資源を洗い出す
- 4 関係者とベクトルを合わせる
- 第7章 教師として走り続けるための心と身体のつくり方
- 1 生活スタイルをチェックする
- 2 動き回れる身体を大切にする
- 3 自身を振り返りながら歩む
- 4 完璧な教師になろうとしない
- 5 存在するなら進化しろ
- おわりに
はじめに
「人生という名のボールは転がり続ける」
そんな気持ちで毎日を過ごして今日に至っています。
私にとって「ボール」とは楽しむツールであると同時に、世界中の人たちとつながる大切なものです。物心ついたときからボールは私の日常の中にあり、サッカーやバレーボールを中心に様々な球技に親しんで育ちました。
昭和42年(1967年)に雪の会津で生まれ、東京都世田谷区、神奈川県秦野市で育った私の小学生時代のヒーローといえばプロ野球の長嶋茂雄さんや王貞治さんでした。暇さえあればプラスチックバットとカラーボールで野球を友だちと楽しむ毎日を過ごしていたのですが、そんな野球全盛の時代に私は「サッカー」に出会います。
苦しいこともたくさんありましたが、必死になってボールをつなぐ競技の世界に身を置いて、おかげさまで長らくプレーを続けることができたのは、ともに戦う仲間、選手それぞれの家族やOBの諸先輩方など、ご支援いただいた全ての皆様のおかげです。
試合を観戦すると出場している選手ばかりに注目が集まりますが、試合には出られない選手を含め多くのチームスタッフの存在があります。応援してくれる人たちがいて、そこには「ボールを中心にした一人ひとりの物語」があることを忘れてはいけません。
それでは、学校という空間はどうでしょうか。
実は、学校という空間でも「一人ひとりの物語」が毎日のように紡がれています。
そんな大切なことに気づくまで、随分と長旅になってしまったなと実感しています。
私が新採用として小学校教諭になったのは1992年のことです。勤務先が決まり、初めて子どもたちと会う前のドキドキとワクワクを今でも覚えています。
「毎日、子どもたちが楽しそうに笑顔で過ごせるような教室」を思い描いていたのですが、そうそう簡単にはいきませんでした。
当時は、いわゆる中堅の先生たちが職員室の大多数を占め、「わかる授業」を展開し、子どもたちが生き生きと過ごす学級経営をするモデルとなるような先生を見つけるのは容易なことでした。
「あのー、授業を見せてもらっていいですか」とお願いしたり、逆に「授業を見てもらえませんか」とお願いしたりしながら、あるいは教育系の書籍や雑誌、研修セミナーも含め、様々な先生たちのメソッドをまねては繰り返す毎日でしたが、何だかうまくいかない。
「どうしてうまくいかないのか」
思い悩んでいたところ、ヒントは意外なところに転がっていました。
それが、本書にも登場するスポーツの現場での話です。
得意分野でもあり、好きな分野でもあるスポーツを通して学んだことを学校現場で生かすことができることに気づいてから、日々の教室を振り返り、日々進化していくことを実感できるようになりました。
さらに、私は2012年の夏、オランダでイエナプランを学ぶ機会に恵まれました。イエナプランは、まさに「一人ひとりの物語」を大切にする教育です。ここで、私の実践は「スポーツマネジメント」と「イエナプラン」での学びがつながり、一本の筋が通っていくことになりました。現在私は、日本初のイエナプランスクール・学校法人茂来学園大日向小学校の校長を務めています。しかし、私は公立学校時代から、イエナプランの実践を少しずつ教室の中に応用する取り組みを続けてきました。「一人ひとりの物語」を大切にすることを軸に考えれば、私立学校でなくたって、できることはたくさんあるのです。
みなさんにもある「一人ひとりの物語」とはどんなものでしょうか。
生まれも育ちも、住んでいる場所も年齢や経験も違う皆さんが学校へ集い、子どもたちとともに毎日を歩んでいます。はたして個性の違いを認識し、それぞれのもつ得意なことや好きなことを思う存分に発揮できているでしょうか。
本書では、私の具体的な実践にも触れていますが、単なるメソッドとして模倣してもうまくいかないこともあると思います。
それでも、私自身の物語を共有することで皆さんがそれぞれの歩みを振り返りながら、ご自身の実践を考えるキッカケにしていただければ嬉しいという思いで書いています。
簡単にまとめてしまえば、本書が提供するのは次の3つです。
@自分自身が大切にしていることは何かを再考する。
A自分自身の得意なことや好きなことを仕事に生かす方法を考える。
B「一人ひとりの物語」を大切にして生きることについて考える。
2020年2月 /桑原 昌之
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- 明治図書
- これからの時代に大切なことを学ばせていただきました。2022/2/2620代・小学校教員
- とても参考になりました。2020/5/520代・小学校教員
- スポーツと繋げての表現が多々あり、イメージしやすいことが多かった。2020/3/20フク
- 子供の可能性を伸ばすための向き合い方や考え方、教師としてのあり方が学べました。新学期の始まるこの時期に読んでいてよかったと思える本です。2020/3/1830代・小学校教諭