- はじめに
- 第1章 子どもが自力で読めるようになる「博士ノート」
- 1 教材文の一人学びに活用できる「博士ノート」
- 2 「博士ノート」10のコースとその使い方
- @「博士ノート」の使い方
- A単元の中の「博士ノート」の位置付け
- B「博士ノート」のメリット
- 3 「博士ノート」で育つ力
- 4 「博士ノート」の活用法
- @学級での活用法
- A学年での活用法
- B習熟度別での活用法
- 第2章 定番教材でできる「博士ノート」の実践事例
- 1 クイズコーナーを作ろう
- 1年 説明文「じどう車くらべ」「いろいろなふね」
- 2 対話劇でお話をしょうかいしよう
- 2年 物語文「お手紙」
- 3 食べ物の変身について調べ,しょうかいしよう
- 3年 説明文「ミラクルミルク」「すがたをかえる大豆」
- 4 作品の魅力を伝え合おう
- 4年 物語文「ごんぎつね」
- 5 筆者の説明の仕方や考えについて話し合おう
- 5年 説明文「動物の体と気候」
- 6 主題について話し合い,生き方について考えよう
- 6年 物語文「海の命」
- 第3章 実物資料「博士ノート」とワークシート
- 1 低学年(説明文)の実物資料
- @はかせノート(せつめいぶん)低学年用
- Aワークシート[どきどきコース]
- Bワークシート[どんどんコース]
- Cワークシート[ぐんぐんコース]
- Dワークシート[きらきらコース]
- Eワークシート[うきうきコース]
- 2 低学年(物語文)の実物資料
- @はかせノート(ものがたりぶん)低学年用
- Aワークシート[どきどきコース]
- Bワークシート[どんどんコース]
- Cワークシート[ぐんぐんコース]
- Dワークシート[のびのびコース]
- Eワークシート[わくわくコース]
- Fワークシート[うきうきコース]
- 3 中学年(説明文)の実物資料
- @博士ノート(説明文)中学年用
- Aワークシート[どきどきコース]
- Bワークシート[どんどんコース]
- Cワークシート[らんらん・ぐんぐんコース]
- Dワークシート[のびのびコース]
- Eワークシート[わくわくコース]
- Fワークシート[きらきらコース]
- Gワークシート[うきうきコース]
- 4 中学年(物語文)の実物資料
- @博士ノート(物語文)中学年用
- Aワークシート[どきどきコース]
- Bワークシート[どんどんコース]
- Cワークシート[らんらん・ぐんぐんコース]
- Dワークシート[のびのびコース]
- Eワークシート[わくわくコース]
- Fワークシート[きらきらコース]
- Gワークシート[うきうきコース]
- 5 高学年(説明文・物語文)の実物資料
- @博士ノート(説明文)高学年用
- A博士ノート(物語文)高学年用
- おわりに
はじめに
「国語科の授業をどうすればよいか分からない」「国語科の授業がうまくいかない,難しい」という声をよく聞く。私は若い先生からこうした相談を受けるたびに,内心で頼もしく思う。このような疑問を抱く教師は,無意識のうちに国語科の本質に気付いていると考えるからである。
彼らの悩みは国語科が「収束型」ではなく,「拡散型」の学びを本質としていることに由来している。国語科においては,ある一つの決まった答えや指導者が決めた知識・価値観に児童たちの考えが「収束」していくことを目指すだけでは不十分である。その先には,児童たち自らが自分のイメージを発展させ,一人一人が自分なりの枠組みで読み,感じ,想像し,共有した上で,さらなる読みへと興味を「拡散」させていく過程が必要である。これを「創造的な学び」といってもよい。
このことは,国語科の目標として明確に掲げられている。例えば,戦前,戦後の国語科教育の実践を踏まえつつ,21世紀の国語科教育のあり方について「国語科経営」の視点から研究を展開している相澤秀夫氏(宮城教育大学教授)は,国語科の設置のねらいについて次のように述べている。
国語の授業は,本来的に立ち止まって日本語と向き合う時間である。日本語について確かめ考える時間である。話し方や聞き方,書き方,読み方などの言語技能(言語技術)を身につける時間,それらを通して思考力や判断力,想像力,読解力等を身につけ広げ深める時間,言語文化を享受し継承しつつ言葉を楽しむ時間,そして母語である日本語を大切にしようとする態度を形成する時間として設置されている。
「日本語と向き合う時間」としての国語科の授業を「言葉を楽しむ時間」にしたい。その結果として,「創造的な学び」につながってほしい。そう考えている教師は決して少なくないのではないか。しかし,国語を「教えよう」としている限り,児童が「楽しむ」ように仕向けるのは容易ではない。こちらが「教えよう」とすればするほど児童たちは受動的になってしまうからだ。
この難題を解決するためには,学習の主導権を児童に渡す必要がある。私たち教師が伝えるべきは学習内容そのものというよりも,学びの方法である。それはすなわち,「どのように学べばよいのか」という問いに答えることでもある。個々の教材はこうした学び方を学んでもらうための個別具体の素材に過ぎないといってもよい。
本書はこうした学び方を指導するための方法論に特化している。その中心的なツールとなるのが,本書のタイトルにもなっている「博士ノート」である。その詳細は本文に譲るが,「博士ノート」は自力で文章を読み取っていく方法をいくつかのコースで提示することで,学び方を学ぶ段階を補助するように設計されている。私はこの「博士ノート」を使った取り組みを約20年間継続してきた。学校,学年,クラスを問わず共通していえることは,国語好きが増え,意欲的に学習する姿が見られることである。そして,文章の読み方が身につくため,最終的には「博士ノート」を離れても自力で読み通す力が身につき,読書力の向上にもつながっている。また,友達の読みとの交流や共有化の素地として「博士ノート」による自分の読みがあるので,自らの読みが相対化され深められていく。この過程で,自立した読み手としての力が育ち,国語科の授業が楽しい,好きだという児童が育っていく。
本書は,第1章において,「博士ノート」の有用性や活用法,育つ力などを説明している。第2章では,いろいろな学年での実践事例を通して私自身が「博士ノート」をどのように活用し,国語科学習を進めてきたのかを具体的に示している。そして第3章には,「博士ノート」やワークシートなどをそのまま使ってもらえるよう資料を掲載した。本書が国語科の授業作りに悩む先生方の一助になれば幸いである。
2019年9月 /長ア 育惠
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