- はじめに
- 1章 新しい学習指導要領が目指すもの
- 1 新学習指導要領の特徴
- 2 見方・考え方と授業改善
- 3 カリキュラム・マネジメントと授業改善
- 4 主体的・対話的で深い学びの実現を目指す授業改善
- 5 新学習指導要領が目指すもの―単元などを見通した授業改善
- 2章 社会科における主体的・対話的で深い学びの実現
- 1 主体的・対話的で深い学びとは何か
- 2 主体的な学びに必要な「見通し」と「振り返り」
- 3 対話的な学びに求められる「自己内対話」
- 4 深い学びを実現する「社会的な見方・考え方」
- 3章 大蔵小学校が目指す「協同的探究学習」とは
- 1 思考力,判断力,表現力等を育成する「協同的探究学習」
- 2 大蔵小学校における「協同的探究学習」の考え方
- 4章 「社会的事象の見方・考え方」を働かせて探究する社会科の学習指導案
- 1 学びのプロセスを描く単元の目標設定
- 2 3つの資質・能力を具体化する単元の評価規準(案)
- 3 学習指導要領の位置付けの明確化
- 4 見方・考え方を働かせる教材分析の方法
- 5 見方・考え方を働かせる問いの設定
- 6 単元の指導計画と本時案の作成
- 5章 新しい社会科の単元&授業モデル
- 小学校社会科改訂の要点と指導計画作成のポイント
- 第3学年の改訂内容と指導計画作成のポイント
- 第3学年の年間指導計画と評価規準例
- 第3学年の単元&授業モデル
- Nさんの野菜づくりとまちだシルクメロンの栽培【わたしたちのくらしと農家の仕事】
- 変わってきた鶴川地区と町田市【市の様子の移り変わり】
- 第4学年の改訂内容と指導計画作成のポイント
- 第4学年の年間指導計画と評価規準例
- 第4学年の単元&授業モデル
- 地域の風水害への備え【自然災害から人々を守る活動】
- 玉川上水と大蔵せきの開発【郷土の発展に尽くす】
- お祭りを保存・継承する人々の願い【伝統文化を今に伝える東京都】
- 世界とつながる大田区【県内の特色ある地域のくらし】
- 第5学年の改訂内容と指導計画作成のポイント
- 第5学年の年間指導計画と評価規準例
- 第5学年の単元&授業モデル
- モンゴルの人に国土の位置と広がりを伝えよう【世界の中の我が国の国土】
- 北海道と沖縄の人々のくらしをモンゴルの人に伝えよう【地形や気候から見て特色のある地域(気候)】
- 大量の情報を活用して発展する観光産業【我が国の産業と情報との関わり】
- 国土の様々な自然災害から国民生活を守る国や県の対策や事業【自然災害を防ぐ】
- 第6学年の改訂内容と指導計画作成のポイント
- 第6学年の年間指導計画と評価規準例
- 第6学年の単元&授業モデル
- ユニバーサルデザインから憲法を理解する【日本国憲法とわたしたちの生活】
- 継承や広がりの視点から文化の特色や意味を理解する【今に受け継がれる室町の文化】
- 業績を比較・関連付けて人物の働きを理解する【3人の武将と天下統一】
はじめに
本書は一公立学校が,中央教育審議会答申や新しい学習指導要領を踏まえ,平成28・29年度に先行実施した社会科の実践事例をまとめたものです。学習指導要領告示の前に実践した事例もありますが,町田市立大蔵小学校の2年間の実践研究の軌跡そのものです。
平成29年3月に新しい学習指導要領が告示され,平成30年2月に学習指導要領の解説が出版されました。今回の改訂は,「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し,社会と連携・協働しながら,未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む」という理念の基に,新しい時代に必要となる資質・能力の育成と,学習評価の充実,新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し,主体的・対話的で深い学びの視点からの学習過程の改善という方向性が示されました。
新しい小学校学習指導要領の社会科に目を向けると,目標が大きく変化し,第3学年と第4学年の内容が分かれ,内容の記述の仕方もまったく異なる大きな改訂になっています。現行の学習指導要領になじみのある人の中には,違和感をもった人もいるかもしれません。しかしながら,学習指導要領解説の内容をよく読み取っていくと,何について,どのようなことに着目して,どのように考え,最終的にどのような理解ができればよいかという,「学びのプロセス」と「授業づくりのツボ」と言われてきたことが明確に示されていることが分かります。
若手の教員を中心に「社会科は難しくてよく分からない」「社会科の授業をどのように進めたらよいか分からない」という声をよく聞きます。それは,社会科を研究する学校が少なく,社会科の授業づくりに触れる機会が少なかったからでしょう。私は,今回の学習指導要領で示された「学びのプロセス」と「授業づくりのツボ(社会的事象の見方・考え方)」を押さえて授業を構想することで,社会科の苦手な教員でも,授業の質が飛躍的に向上する可能性が大いにあると考えます。それは,本校の社会科が専門でない教員も社会的事象の見方・考え方を基に教材分析し,問いの吟味を通して本書のような実践ができたからこそ思えることです。
今後移行期に入り,新しい学習指導要領の内容を受けた実践に挑戦する学校や先生が増えていくことが予想されます。本書は,そのような先生方に参考にしていただき,本書の実践を超える実践が増え,社会科の実践研究が広まっていくことを願っています。
本書の出版に当たり,明治図書出版の矢口郁雄氏,本校の研究にご指導いただいた,国士舘大学教授(前文部科学省視学官)澤井陽介先生,聖徳大学教授廣嶋憲一郎先生,東京大学教授藤村宣之先生,東京都教育委員会児玉大祐先生,秋田博昭先生,八王子市教育委員会北川大樹先生,前東京学芸大学附属小金井小学校小倉勝登先生,世田谷区立経堂小学校横田富信先生,町田市教育委員会指導課の皆様に,この場をお借りして深く感謝申し上げます。
2018年7月 /石井 正広
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