- Preface/はじめに
- 第1章 Before&Afterイラストで分かる!国語授業づくり5つの視点とNG場面別授業改善のポイント25
- 授業改善の視点1 単元づくりの基礎・基本
- Case1 資質・能力が選択・重点化されていない
- Case2 言語活動が具体化されていない
- Case3 言語活動が「活動あって学びなし」になっている
- Case4 単元展開が課題解決の形になっていない
- Case5 並行読書が適切に位置付けられていない
- 授業改善の視点2 授業展開の基礎・基本
- Case6 本時の学習課題に必然性がない
- Case7 発問が曖昧である
- Case8 思考を深める問い返しの発問をしていない
- Case9 学習活動が子どもの思考過程に合っていない
- Case10 教師のやりたいことに子どもを付き合わせている
- 授業改善の視点3 交流活動の基礎・基本
- Case11 発言した子どもと教師の1対1対応になっている
- Case12 子どもにグループ活動を丸投げしている
- Case13 書いたものを順番に読み合うだけになっている
- Case14 グループ交流に参加していない子どもがいる
- Case15 一方的にアドバイスするだけになっている
- 授業改善の視点4 言語活動を意欲的にする支援の基礎・基本
- Case16 「どんなことでもいいですよ」と投げてしまう
- Case17 「真似をしてはダメ!」と言ってしまう
- Case18 子どもが教材を選べない
- Case19 子どもが題材,方法を選べない
- Case20 チャンスを一度しか与えない
- 授業改善の視点5 振り返り・評価の基礎・基本
- Case21 振り返りが本時のねらいとズレている
- Case22 課題意識のない振り返りになっている
- Case23 振り返りが形骸化している
- Case24 テストだけで評価している
- Case25 評価のための評価になっている
- 第2章 子どもが必ず熱中する!領域別・授業づくりアイデア20
- 話すこと・聞くことの授業アイデア
- 1 「すきなものクイズ」をしよう(1年:尋ね・応答する活動)
- 2 インタビュー名人をめざそう(3年:インタビュー)
- 3 クラスの話し合いをよりよいものにしよう(4年:話し合い)
- 4 和の文化をプレゼンしよう(5年:プレゼンテーション)
- 5 6年生におくる字をすいせんしよう(5年:スピーチ)
- 書くことの授業アイデア
- 6 わたしの はっけん(1年:観察記録文)
- 7 「ありがとう」をつたえよう(2年:お礼の手紙)
- 8 人物を考えて物語を作ろう(3年:物語の創作)
- 9 資料を生かして考えたことを書こう(5年:意見文)
- 10 短歌を詠もう(6年:短歌の創作)
- 読むこと(説明文)の授業アイデア
- 11 いきもののひみつクイズをつくろう(2年:ビーバーの大工事)
- 12 はたらくすごい犬コンテストをしよう(3年:もうどう犬の訓練)
- 13 わたしの「ゆめのロボット」を考えよう(4年:「ゆめのロボット」を作る)
- 14 伝記を読んで考えたことを伝え合おう(5年:手塚治虫)
- 15 6年1組美術館を開こう(6年:『鳥獣戯画』を読む)
- 読むこと(物語文)の授業アイデア
- 16 おきにいりのじんぶつになって おんどくげきをしよう(1年:おおきなかぶ)
- 17 「お話のとびら」で大すきをしょうかいしよう(2年:スーホの白い馬)
- 18 登場人物の魅力を伝え合おう(4年:ごんぎつね)
- 19 宮沢賢治作品の魅力を「読みログ」で交流しよう(5年:注文の多い料理店)
- 20 椋鳩十作品でポスターセッション!(5年:大造じいさんとがん)
- Afterword/おわりに
Preface
子どもたちを対象に行った各種調査によると,小学校全教科の中で,国語の授業の人気は最低レベルらしいのです。「国語は好きではない」「国語の授業はつまらない」と感じている子どもが少なからずいるということです。
私はもちろん,「国語の授業は決してつまらなくない」「国語の授業も楽しくできる」と思っていました。実際,私のクラスの子どもたちからは,「国語の授業が他の教科に比べてつまらない」という声を聞くことは(おそらく)ありませんでした。しかし,どのようにすれば国語の授業が楽しくなるのかについて,「漢字はただ覚えるのではなく,調べたり使ったりしながら学習するとよい」「低学年の物語教材は,動作化を取り入れると場面の様子が楽しく想像できる」など,具体で語ることはできても,何か理論的に,系統的に示すことはできずにいました。
そんな折,平成22年に,前文科省教科調査官の水戸部修治先生に出会い,「言語活動」を位置付けた単元づくりについて学んだとき,「私が求めていたものはこれだ」と思いました。そのとき学んだのは,言語活動を子どもの課題解決の過程に位置付けることで,子どもたちの「読みたい」「書きたい」「話したい」「聞きたい」という思いを生かした授業ができる,ということです。子どもたちの「〜したい」という思いに沿った学習であれば,「国語は楽しくない」と感じるはずはありません。子どもたちの興味関心に沿った課題解決の過程をたどった単元を展開すれば,「国語の授業は退屈だ」と思うはずはないのです。
幸い,宇都宮大学教育学部附属小学校に在籍し,国語専科として授業研究に従事することができた私は,様々な言語活動を考え,単元をつくり,実践を重ねてきました。言語活動を子どもの課題解決の過程に位置付けることで,子どもは楽しく主体的に学ぶことができる,という理屈は疑いようがないものであっても,実際に授業をすると,「活動ありき」で,ねらいの達成に及ばなかったり,教師の思いが先走り,子どもたちが今一つ必然性を感じないままに活動を行っていたりといった問題にもぶつかりました。その度に,子どもの思考過程やねらいの本質などについて繰り返し考えてきました。
また,教育実習生の指導をしたり,他校の公開研究会に参加したり,ときには指導者として他校の校内研修に呼んでいただいたりといったことから,たくさんの国語の授業を見る機会にも恵まれました。授業者ではない立場で子どもたちの学びの姿を見ていると,一人一人の子どもにとって,活動の必然があり,かつ,ねらいの達成につながる授業の条件について冷静に考察することができました。
本書は,それらの経験から得たいくつかのポイントをまとめたものです。「単元づくりの基礎・基本」「授業展開の基礎・基本」「交流活動の基礎・基本」「言語活動を意欲的にする支援の基礎・基本」「振り返り・評価の基礎・基本」の5観点で整理しました。第1章では,それぞれの観点について「陥りやすい失敗」と「その失敗を克服するための方策」をBefore & Afterの形式で提案しています。第2章では,実際の単元計画や指導案を,領域ごとに20例示しました。いずれの観点も授業も,「教師が正しいと考える方向に子どもを引っ張っていく授業」ではなく,「子どもの読みたい,書きたい,話したい,聞きたいという思いに沿っていて,それでいて,教師が付けさせたいと意図する力を付けるための授業」を目指したものです。
ベテランの先生方にとっては今更言うまでもない定石であったり,他にもっとよい方策があったりといったこともあろうかと思います。しかし,国語の授業づくりに悩む若い先生方や,楽しくて力が付く国語の授業づくりについて思案している先生方にとって,本書が何かしらの助けになればこれほど嬉しいことはありません。
2019年3月 /皆川 美弥子
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- 明治図書