- 巻頭言
- はじめに
- 第1章 「嫌い」「分からない」を生む物語の授業
- 1 教えるべき内容が不明瞭な物語教材
- 2 教師の知らない「児童は物語教材が嫌い」という現実
- 3 物語を読む学習の「分からなさ」
- 4 どんな力が付いたのかを明確に
- 第2章 学習指導要領と教科書が要求する知識・技能
- 1 学習指導要領(昭和22年版〜平成29年版)が要求する能力
- @昭和22年版学習指導要領/A昭和26年版学習指導要領
- B昭和33年版学習指導要領/C昭和43年版学習指導要領
- D昭和52年版学習指導要領/E平成元年版学習指導要領
- F平成10年版学習指導要領/G平成20年版学習指導要領
- H平成29年版学習指導要領
- 2 全社教科書(平成27〜31年版)の「学習の手引き」と「学習用語」
- @光村図書/A教育出版/B東京書籍/C学校図書/D三省堂
- 第3章 先行実践・研究における知識・技能の系統化の試み
- 1 輿水実「国語学力の学年基準」
- 2 藤井圀彦「批評学習における『用語』の学年配当(試案)」
- 3 「横浜・国語教育を創造する会」の系統表
- 4 浜本純逸「学習用語の系統」
- 5 『横浜版学習指導要領 国語科編』が示す知識・技能
- 6 片山守道(東京学芸大附属小)「『読むこと』基本学習用語系統表(試案)」
- 7 大西忠治「科学的『読み』の授業研究会」
- 8 西郷竹彦「文芸学理論」
- 9 鶴田清司「作品分析法」
- 10 白石範孝編著「読みの力を育てる用語」
- 第4章 学習用語による知識・技能の意識化と自覚化
- 1 学習用語の選定
- 2 知識・技能の「層」による性質の違い
- 3 6年間で教える学習用語(熊谷試案)
- 4 授業の中でどのように用語を提示していくのか〜授業実践〜
- @児童が学習用語をほとんど教わっていない場合の実践
- 〜光村図書ほか5年物語教材〜
- A学習用語を継続的に教わっている場合の実践
- 〜光村図書6年物語教材〜
- 第5章 学習用語を獲得させる意義
- 1 読みの広がりと深まり
- 2 学習の円滑化
- 3 「書くこと」への作用
- 4 新しい世界の感受と認識の獲得・深化
- おわりに
巻頭言
本書でも触れられているが,物語の学習は,教師が思うほど,子どもたちに好かれているわけではない。その要因はいろいろ考えられるだろうが,一つには,何を指導したのかが,指導した側にもされた側にもはっきりしないということがあるだろう。そこには,授業技術の問題も深く関わっているが,もう一つ重要な問題として,そもそも何を学ばせるのか,学んだのか,という学習内容の問題がある。
本書では,そうした問題を少しでも解消するために,身に付けるべき知識・技能を「学習用語」として明確にし,授業実践を提案している。
もちろん,これまでも多くの実践者や研究者がチャレンジした課題ではある。しかし,本書はそうした様々な先行実践・先行研究を踏まえつつ,また学習指導要領や小学校国語教科書の分析も踏まえつつ,小学校の教室で「学習用語」を明確にした授業実践を日々行い,学習者の側に立って試行錯誤し,検証してきた成果である。
本書の課題設定に関わって,熊谷さんと筆者との関係について多少触れておく。熊谷さんとの出会いは25年前に遡る。筆者が横浜国立大学に着任した年である。翌年に熊谷さんは横浜市の小学校教員に採用された。その後,12年の歳月を経て,横浜市教育委員会一般派遣研究員として1年間,さらにその後,社会人大学院生として4年間,筆者の研究室で研究を重ねた。その一般派遣研究員の頃に抱いていた「物語教材でも確かな知識と技能を」という問題意識を一貫して持ち続け,実践と検証を繰り返したその成果が本書となった。その間には,横浜市が市内全小学校に配置する児童支援専任という立場で,様々な厳しい課題・児童の実態と向き合うという経験もしている。そのことは,より実の場に即した「学習用語」の選定にも生きているはずである。
もちろん,本書はこれから厳しい検証や批判にさらされていく。だが,そのことが熊谷さんのみでなく,多くの実践者や研究者に資するものとなることを願っている。
横浜国立大学大学院教育学研究科 教授 /木 まさき
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- 明治図書
- わかりやすい2023/10/3030代・小学校教員