- はしがき 学校長 /大岩 久七
- 第T章 子どもが自分を生きる授業をめざして
- 第1節 教師の力量形成につながる授業研究
- 第2節 子どもが自分を生きる授業とは
- 1 自ら学ぶ
- 2 仲間を契機に学ぶ
- 3 授業のはたらき
- 第3節 子どもが自分を生きる授業をどのように展開するか
- 1 単元の提示―子どもは自分の育ちを追究の足場としている―
- 2 ひとり学習―子どもは自分の構想をたしかめることを求めている―
- 3 集団学習―子どもは関連を求めて仲間の話を聞いている―
- 第4節 「教える」ことの意識転換
- 第5節 子どもが自分を生きる教育経営
- 1 四本柱を中心とした教育経営
- 2 朝活動―働いてつくる学校生活―
- 3 くらしのたしかめ―くらしをつくり出す場―
- 4 自主活動―子ども文化をつくり出す場―
- 第U章 子どもの成長をとらえるための教師の自己更新の道筋
- 第1節 教師の縦糸,横糸の研究のネットワーク―研究の組織―
- 1 研究の基点―教師の個人研究―
- 2 教師集団による部会研究,全体研修
- 第2節 部会研究の意義―中間研究に見る教師の自己更新の姿―
- 1 新たな単元の設定の前提としての前単元での子どもの育ちの吟味―授業者の子どもの成長のとらえ方と部会のとらえ方の違い―
- 2 新たな単元の設定に伴う研究仮説の吟味―繰り返される素材研究と部会で吟味される単元としての可能性―
- 3 単元の提示の仕方の吟味と子どもの追究の予測―研究仮説の具体化―
- 4 提示の授業の検証―研究仮説に照らした子どもの実際の姿の考察―
- 5 歩み出した子どもの姿をとらえ,見直しの契機や発展の契機を描きながら集団学習をしくむ―追究予測と研究仮説の見直し―
- 6 子どもの成長の過程を描き直す解釈
- 第V章 中間研究の実際
- 子どもの願いに迫ろうとする授業者と部会研修〈T部会〉◇
- 第1節 単元決定に至るまで
- 1 前単元「ファミリー人形劇」から,子どもの育ちをとらえる―授業者の子どものとらえに対して,異論を唱える部員―
- 2 単元候補「よくとぶ おりがみひこうき」の提案
- 3 単元候補「100このドミノ」の提案
- 4 「ながなわとび」の提案
- 第2節 「ながなわとび」における部会研修の実際
- 1 単元での子どもの成長を描く
- 2 「仲間」という視点から提示の授業を考える
- 3 「ながなわとび」という視点から提示の授業を考える
- 4 提示に向けて子どもの追究を支えるための学習環境を考える
- 5 子どもと「仲間」「ながなわ」とのつながりをとらえるための手立て
- 6 提示における子どもの姿を考える
- 7 活動における子どもの姿を追う
- 8 子どものために必要な教師の支援を考え,試みる
- 9 鈴木さんの願いをとらえる
- 第3節 鈴木さんの自己形成を考える
- 1 部会を二つのグループに分けて,鈴木さんの願いをとらえ直す
- 2 授業者がたどり着いた鈴木さんの自己形成―研究紀要から―
- 第4節 まとめ
- 子どもにとっての「書くこと」の意味を考える〈U部会〉◇
- 第1節 書くことによって論理的な思考力が育つと考える
- 1 説明文を書く単元を考える授業者
- 2 身の回りの出来事に心を動かして作文を書く単元を考える授業者
- 第2節 子どもたちにとっての「書くこと」の意味を見直す
- 1 評価を気にして作文の題材を選ぶのではなく,書くことで題材についてじっくり考えさせようとする部会
- 2 題材をじっくりみつめることで,自分への気付きをうながしたい部会と子どもたちの意識のずれ
- 3 子どもたちにとって書くことの意味を考える 自分の価値観や存在感をたしかにすることだととらえ直す部会
- 第3節 「書くこと」の意味を子どもの事実から考える
- 子どもにとっての教材を考える〈V部会〉◇
- 第1節 新単元ができ上がるまで―子どもの育ちをとらえ,単元を練り上げる―
- 1 前単元「とける」における子どもの学びから浮き上がってきた問題点
- 2 ものづくりを中心とした新単元候補「てこ」の提案
- 3 単元の具体化@ 理科の内容を重視した「つり合い」
- 4 単元の具体化A ものづくりを加えた「モビール」
- 5 単元の具体化B 子どもの追究動機を考慮した「てこを使って」
- 6 単元検討会においての吟味と部会での練り直し作業
- 7 追究予測を考える
- 8 提示の授業づくり
- 第2節 授業と部会研修の実際
- 1 単元の提示における子どもをとらえる
- 2 子どもの歩み出しをとらえる
- 3 第2回集団学習における子どもをとらえる―子どもは何を望んでいるのか―
- 4 子どもの追究動機をとらえていこうとする部会―子どもは何を求め,どこに歩もうとするのか―
- 5 第3回集団学習後の子どもの動きをとらえる
- 第3節 中間研究を振り返って―わたしたちは子どもたちから何を学んだか―
- 1 部会研修を重ねる中で見えてきた子どもの追究の様相
- 2 単元当初に描いた追究予測の問題点を見直す
- 3 わたしたちの大切にする教材観
- 第W章 中間研究の研修から見えてきたこと
- ―成果と課題―
- 第1節 子どもの願いに迫ろうとするT部会の研修から
- 第2節 「書くこと」の意味を探ろうとするU部会の研修から
- 第3節 教材開発の在り方に迫ろうとするV部会の研修から
- あとがき 教頭 /武島 浩
はしがき
「将来の夢や目標がもてない」,「何の興味もわかない」などといった子どもたちの声がいろいろな調査結果から聞かれます。また,最近の調査でも,子どもたちの半数以上が自分を好意的にとらえていなく,「自分に否定的」という自尊感情の低さがあることも明らかにされています。斯くの如く,子どもたちが今日,自分の生きていく道というものを見つけることが非常に困難な状況にあると言われます。しかしながら,自らの人生は自分で生きていくしかないのであり,子どもたちには自分の生きていく道を自分で見つける力を何としても身に付けてほしいと願っています。
このような子どもたちの実態を見るにつけ,学校は子どもたちが将来,社会人として立派に生きていくために必要な基礎的・基本的な力を身に付けさせるという根本的な使命を今一度,謙虚に見直すことが求められているように思われます。
授業について,本校では,これまで,「子どもたちが授業に対したとき,分かるようになりたい,できるようになりたいという向上心をもって,それぞれの経験の中で培ってきたその子らしいものの見方や考え方などをよりどころにしながら,新たな自分をつくり出していこうとする姿を見せる授業」を大切にしてきています。言い換えれば,「単に知識や技能を身に付けるだけではなく,子どもの内面に育っている見方,考え方,感じ方,判断の仕方,行動の仕方などをも思う存分発揮し,主体的・創造的に自らを高めようとする授業」を考え,そのような授業の在り方を実践を通して究明しようと取り組んできています。
その中で,核として位置付けている2点について簡単にふれてみたいと思います。
単元の展開においては,あくまでも,どこまでも「ひとり学習」を基盤にしています。
「ひとり学習」では,子ども一人一人の教材に対するこだわりや疑問を大切にしながら子ども自らが追究する課題を決定したり,学習内容を考えたりしています。
その過程において,自己決定の場が幾度となく生まれ,筋道を立てて考えたり,自らの納得を求め,粘り強く追究したりする態度を身に付けていきます。
このようなことから,本校では,「ひとり学習」の場が自主性や個性を伸ばし一人一人の子どもの生きる営みをその子らしい筋の通った,しかも柔軟なものにしていくと考えています。
また,「ひとり学習」を基盤とする中で,必要に応じて「集団学習」の場を設定します。この「集団学習」の場では,それまでの自らの追究をもとに子ども相互の深いかかわりを可能にし,互いのよさに学び合い,追究の構えや進め方などを見直す契機が生まれると考えています。そして,仲間とともに高まっていこうとする意識も醸成されていくと考えています。
昨年の3月,新学習指導要領が告示されましたが,そこでは,現行の「生きる力」をはぐくむという基本理念は今後も重要で継続することとされ,その基本理念の実現に向かって,教育現場において,そのための具体策を確立することが強く求められているのです。
中央教育審議会の教育課程部会においての議論の過程では,「生きる力」の構成要素として,「主体性・自立性」「自己と他者の関係」「個人と社会の関係」の三つの要素が挙げられています。そして,この三つを中心にしながら,実生活に生きてはたらくという視点を十分踏まえて「生きる力」の育成を図るための具体策を講じるよう強調されたとのことです。
すなわち,課題は,「生きる力」をめぐる考え方と教育現場における教育実践との接点をいかに確保していくかということになると思いますが,中央教育審議会が強調している「生きる力」の育成と本校がめざしている方向とは,必ずしも違ったものではなく,むしろ,軌を一にしていると考えられます。
子どもの成長を考えるとき,学校では,授業だけがすべてではないことは言うまでもありません。本校では,四つの柱で学校生活を展開していますが,授業以外では,「朝活動」「くらしのたしかめ」「自主活動」を編成し,教育目標「くらしをみつめ,自らの可能性をひらく子ども」の具現化をめざしています。
本著にあたり,学校生活の四本柱というべきものから特に,「授業」に焦点を当て,「子どもの自己形成と授業」という研究主題を設定し,その解明に取り組むべく,三部会を構成し,校内研修を重ねてまいりました。各部会では,子どもが学習する単元の検討をはじめとし,単元提示やその後の単元展開,教師のはたらきなどについて,徹底した子ども理解やそれをもとにした授業構想をはじめとする部会協議,そして,授業記録等を累積してきました。
それらをもとに,子どもの自己形成を促す授業について,その有り様や要件などを詳細にみつめ,見直しつつ歩んできた現在までの道程を,求められる校内研修の姿としてまとめてみました。
しかし,もとより,まとめ方や資料準備の上においても,多くの問題があろうかと思っていますが,厳しいご批判と温かいご指導を賜りますことを切にお願いするものでございます。
なお,本書を出版するにあたりまして,格別の御厚意を賜りました明治図書代表取締役社長藤原久雄氏,取締役編集部長樋口雅子氏に深甚の謝意を表すものであります。
平成21年3月31日 富山市立堀川小学校長 /大岩 久七
-
- 明治図書
- 学びにします2023/12/27古賀の井
- 最近では組織開発にフォーカスした校内研究が主流となりつつあるが、堀川では「子どもの成長をとらえる」ことに重点を置いている。やはりあくまで子どもが起点なのだ。組織開発型の校内研究と比べるためにも、堀川の校内研修がどのようなものか知る必要がある。だからこの本が必要だ。2020/4/20RSK